革命する大地のレビュー・感想・評価
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映画が記録できる現代史
僕は1980年代に、山岳トレッキングでペルーを歩いた事がありますが、その前夜にあの国がこんなに激動していたなんて事は全く知らず、無知で呑気な外国人旅行者に過ぎませんでした。本作は、ごく少数の白人が先住民を支配する植民地的状況を覆したベラスコの1960~70年代の革命を追ったドキュメンタリーです。
コロンブスのアメリカ大陸「発見」以降、ピサロによりインカ帝国は滅ぼされ、スペインに奴隷化され続けたものの、ペルーは19世紀に独立を果たします。しかし、一握りの白人による圧倒的経済支配は残ったままでした。それを一気に刷新したのが、1968年、ベラスコ将軍による軍事クーデターでした。と聞くと、軍部による言論の封殺・独裁・利権の独占が連なる事を想像しそうですが、彼は、米国資本の石油産業を接収し、重要産業を国有化と社会主義的改革を一気に推し進めます。特に衝撃を与えたのが農地改革で、一部富裕白人が支配する農地を農奴的小作農の人々に解放したのでした。と、今度は「貧しき人々の味方」に映ります。ところが一方で彼は「新聞の国有化」による言論の統制という独裁的一面も有していたのです。その矛盾が露呈する内に経済政策の行き詰まりもあって彼は軍内部のクーデターによって失脚し、ペルーは再び巨大資本が支配する国へと逆戻りします。
この様に多面性を有するベラスコと彼の革命を、讃える人も居れば非難する人も居ます。2時間のドキュメンタリーで紹介して貰っただけではとても消化しきれませんでした。これも改めて勉強だな。宿題ばかりが溜まって行きます。
追補:本作では過去のペルーの社会状況を説明するのに当時を表したペルー映画がふんだんに用いられています。15作以上はあった作品の中で僕が観た事のあるのは1作だけでしたが、ドラマ映画でも時代性を表出するメディアになり得る事に改めて気づかされました。
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