劇場公開日 2025年1月17日

「日常を束の間忘れるために」室町無頼 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0日常を束の間忘れるために

2025年2月2日
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鑑賞方法:映画館

舞台は室町末期、応仁の乱の数年前の京。飢饉にもかかわらず庶民には重税が課せられ、野垂れ死した骸がそこら中に山になっている。それに対し、民からは絞れるだけ絞ればいいと考えている将軍と取り巻きの大名たち。悲惨な民たちを救おうと幕府の転覆を密かに図る蓮田兵衛は、かつての盟友で現在は幕府の警護役を務める骨皮道賢に捕えられた若者、才蔵の身元を引き受け、弟子として鍛える。我慢の限界に達した民衆たちはついに一揆のために立ち上がり、洛中を目指して蜂起する……。

才蔵の修行の場面はベスト・キッド(The Karate Kid)的でもあり、一揆での斬り合いの場面はまさに西部劇(音楽も含めて)であり、ライバル同士の対決は黒澤の椿三十郎的でもある。要するに、エンタメ作品のエッセンスがギュッと詰まった作品だと言える。

もちろん、観客の多くはそこに、必然的に、現在の格差社会において重税に喘ぐ自分たち庶民たちの姿の投影して見ることになるだろうが、むしろそんなことを束の間、忘れるために観るのがいいだろう。

Tofu