「大泉洋は意外にも時代劇がよく合う」室町無頼 じきょうさんの映画レビュー(感想・評価)
大泉洋は意外にも時代劇がよく合う
IMAX先行上映に出動したぜ!
この映画の良いところは、背景や小物、人物に至るまで徹底的に作り込み、映るか映らないかの人や物に手を抜いていないところだと思う。この辺は未見だが「SOHGUN」で散々言われているところに通じるのかな?
賀茂川に死体を大量に遺棄する凄惨な場面も、地獄のような庶民の生活が実感できる。したがって子供には見せられないなあ。「アマデウス」で、コレラで死んだ人々を葬儀が終わるとひとつの穴に痛いだけ投棄てるシーンがあって一瞬とはいえショックだったが、この映画では至る所に餓死した人が転がっている。まさに「羅生門」の世界だ。
主人公兵衛(大泉洋)は武芸者として名を成しているせいもあり金も着るものにも不自由はしていないが、ひとりやふたりを助けたところでどうにもならないのは自明。
最近、地獄のような庶民生活をレミゼでも見たばかりだが、レ・ミゼラブルの庶民は服を着ているだけマシか?
いずれの世も庶民と特権階級との差は甚だしく、庶民は虫けら以下の扱いだ。レ・ミゼラブルの方は警官という正義がいるが、室町時代は💪✨と💰こそが命。人命はその辺の畜生と同じ軽さで、金にならないなら死んですら価値がない。
大名は金をむしり取ることしか考えず、贅沢な暮らしをしている。クーデターが起きるのも当然だ。
さて、映画はこのように時代を描写することにかなりのエネルギーを割いているがキャストも素晴らしい。大泉洋が時代を駆け抜ける剣客。堤真一が袂を分かった元盟友。ベスト・キッドの師匠みたいな汚ったないジジイが柄本明。美しい娼婦が松本若菜。いずれもセリフがよく響き、実に好演。残念なのは長尾謙杜。原作では主人公の才蔵役なのだが、とにかく喚いているだけで滑舌が絶望的。しかし、殺陣はスタントマンなのかなあ素晴らしくキレがいい。そこはいいところ。
この映画の後、応仁の乱が起き時代は戦国時代になだれ込む。そりゃそうだなあ。まさに、奢れるものは久しからず。
楽しい映画でした。