Cloud クラウドのレビュー・感想・評価
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罪に無自覚な罪
ここは地獄の入り口か⁉️
「やっと気がついたかね!吉井くん。」
人間の欲望の“みっともなさ“と“悪意“を誇張して、
描いている。
2024年に黒沢清監督の映画が2本立て続けに公開された。
「蛇の道」と本作品。
どちらも復讐を描いてはいるが、
「蛇の道」は法的にも罰される罪。
「Cloudクラウド」は本人は無自覚な罪で裁かれるも、
結果は見ての通り。
また“人狩り人“はネットの闇バイトのように集まっている。
難解だとよく言われる黒沢清作品。
この「C loudクラウド」は、易しい言葉と噛み砕いた表現で
とても取っ付き易い。
主人公は品物を安く仕入れて高く売る・・・
転売屋の吉井(菅田将暉)
彼はその生き方が他人を傷つけているとの自覚はまるでない。
転売屋で食べていくなんて至難の業。
人より早く情報を手に入れて、即断で買い付ける。
売れるとは限らないし、損もする。
しかし吉井はそんな転売屋に向いてるかもしれない。
情に流されない、クールである。
しかし恨みを買っていた。
悪意を《雲》のように膨らませた吉井に関わった人々は
“人狩り“の群衆となり吉井を襲ってくる。
40万の定価の医療機器をたった3000円で30個買い取った。
結果20万で30個を完売して600万を手に入れる。
その金で湖畔の一軒家を借りる。
(売り手の社長は吉井に激しい憎悪を抱く)
引っ越しは
恋人の秋子(古谷琴音)も一緒だ。
(明子は買い物依存症らしい)
湖畔の洒落た一軒家に引っ越したら吉井は、
アルバイトの青年・村井(奥平大兼)を雇う。
村井は吉井を尊敬して、吉井の舎弟のように思う。
村井の存在がこの映画で、鍵になる。
この映画が公開されたとき、あらすじを読んで、、
全く興味が湧かなかった。
正気のない菅田将暉の顔がプリントされたジャケット。
転売屋?が謂れのない暴力に巻き込まれるストーリー。
皆目、想像が出来なかった。
、しかし見てみる、これが面白い。
登場する人物は一癖も二癖もある輩ばかり。
恋人の秋子(古川琴音)ですら、何か得体が知れない。
後半のバイオレンスは、銃の扱いに不慣れなド素人たちで、
銃の安全装置を外さずに撃つ・・・とか、
第一、いきなり銃を撃ってもまず当たらないんじゃないの?
とか、
その素人ぽさが良い味だしている。
無国籍のウエスタン風・・・ポンコツの。
そしてラストの吉井の言葉が、前述した
「ここが地獄の入り口か?」
悲惨なのに、吹き抜けてて、
笑える。
酷い展開
菅田将暉さんに魅かれて鑑賞したものの、人物設定と展開に疑問だらけ、リアリティの無い不可思議な行動のオンパレードに絶句しました。
先ずは主人公の菅田さん演じる転売人の描き方ですが命を狙われるほど酷い商いをしているわけでもないでしょう。
人気商品を買い占めて高額で転売する手口は中国人によくある話、売れ残り品を安く買い叩いて転売は、買い取る方にもリスクはあるからお互いに納得ずくのビジネスでしょう、それをまるで菅田さんが悪者かのように描くのはもってのほか。
偽ブランドなど如何わしい出品はありふれた話、旨い話に裏がありそうなことは察するべきだし騙される方も馬鹿でしょう、それを逆恨みして転売屋を殺そうなんて動機付けは極端過ぎるしそんな事件報道も聞いたことがありませんからリアリティが全く感じられません。
そこで主人公の命を狙う中心人物を顧客でなく、かっての仲間や職場の上司など個人的な妬み恨み絡みに仕立てたのでしょう。人間不信がテーマのようだが恋人まで胡散臭く設定する必要があったのか、特に分からないのは主人公に雇われた田舎の青年、どこかの秘密組織の一員のような描き方、よく言えば謎だらけですが人物像が全く描かれていないので行動の真意、理由が掴めませんでした。
日本は銃社会でもないしヤクザでもない素人が拳銃を簡単に手にする方が異常です、黒沢監督はネット時代だから転売屋と言う稼業に着目したのだろうが、社会派サスペンスに仕立てたいなら闇バイト問題を掘り下げた方が怖かったでしょう。
こわい、面白い
面白かった。
思っていたよりもわかりやすいストーリーだったし。
序盤から中盤にかけて、何気ないようだけど何かが引っかかるカットがいくつか見られ、その積み重ねが不安感を増大させていく。少しずつ、確実に。
前半、若干テンポが遅く感じたけれど、主人公が地方に拠点(湖の畔という設定がまたいいね)を移してから話がぐっと面白くなってきた。
荒川良々、窪田正孝、岡山天音……クセのつよい役者が集結。
この面子でフツーの映画なわけはない。
最初は「この役(工場の経営者)では荒川良々の存在がもったいないなぁ」と思ったりしたけれど、なるほどやっぱりそうきたか。
サイコパス揃いの中でいちばんこわいのは、やっぱり佐野くんだなぁ。
こういう映画は黒沢清監督でしか撮れないんじゃないかと思います。
人間の闇の部分を描かせたらピカイチだ。
一歩間違えると滑稽になりかねないストーリーを、緊張と均衡を保ちながら丹念に作りあげている監督の手腕に感服しました。
そして菅田将暉。本当にいい役者だなぁ。
しかしこの映画、ありえないお話ではないですね。
また人間という生きものがいっそうこわくなってしまいました。
どこかがおかしくないですか?
吉井は、工場で働きながらインターネット上で商品を高額転売する、いわゆる転売ヤー。
徐々に転売にハマっていく吉井は工場の仕事を辞め、山奥の湖畔に新たな家を買ってそこで恋人の秋子との生活を始める。
しかし、そんな吉井の周りには怪しい動きが生まれ始めた……
気づいたらどこの映画館も終映になっていたので、最終日に急いで鑑賞。
黒沢清が今回目をつけたのは転売。
なんか感想が難しいね。
これでもかというくらい印象的なシーンの連続なのに……
分からない、掴めない、パッとしない。
まさに雲のような、そんな映画。
大満足なような物足りないような。
全く共感できない、なんなら感情のない話なのに、吉井が見舞われる悲劇の顛末を目撃したくなるのは、自分も吉井という憎悪の対象に対して雲のように湧き上がった1人だからなのかもしれない。
転売ヤーっていうのがまた絶妙。
多分多くの人が転売ヤーの直接的な被害者ではないと思う。
それでも転売ヤーと聞くとその多くの人が不快感を示し、憎悪をあらわにするはずだ。
吉井狩りに集まった面々を見てみると、
・実際に転売されて恨みのある殿山
・単純に吉井が嫌いな先輩村岡
・ゲーム感覚で来た知り合いの殺人犯滝本
・人生に絶望した井上
・暇つぶし感覚の矢部
・社会に恨みのある三宅
といったかんじで関係も目的もバラバラ。
“クラウド”は「cloud」でも「crowd」でもあり、不特定多数の者も含む広義的なタイトル。
我々だって、いつ誰が狙う側や狙われる側になるかも分からない、そんなすぐ隣にあるような恐怖が転売を通して描かれていたように思う。
今、世間で問題となっている闇バイトもそれに近いかもしれない。
どんな犯罪も決して他人事とは言えないのだから。
主人公の吉井良介という人間が気になって仕方ない。
はじめはただの無慈悲な男。
しかし家に帰って彼女と話せば彼女思いの普通の青年。
しかし、転売が彼の全てになるにつれてそんな一面も崩壊していく。
バカ、鈍感、というかもう狂っている。
自宅に上がってきた滝本らに銃を向けられいくら問い詰められても自分の罪を認めない。というか自覚していない。
「僕が滝本さんになんかしました?滝本さんにはむしろ感謝してるんですよ!」
更に状況は激化し、集団が発砲しながら鬼ごっこが始まる。
秋子と再会するも秋子の心配や逃げるよう言うこともなく、まず商品の心配。
なんなら監禁から解放されて一通り殺し終わった後も、一番に商品の心配。
村岡に謝れと言われても一向に謝らない。
村岡にも言われていたが、全て自分の思う通りにいくと思っているのだろう。
なんせ「ラーテル」なんて自分で名乗っちゃうくらいだから。
闇バイトで捕まった少年たちに通じるところを少し感じた。
彼らは人を殺しておいて、何年で刑務所を出れるかと聞いているらしい。
家族もメディア取材に答えていたりと…なんかおかしくないか?
今回も安定の黒沢節全開で安心した。
カーテンとあのよく分からない透明なビニールの幕みたいなのが出てくるだけでワクワクする。
暗い場所から誰かがこちらを見ていたり、だんだん画面が暗くなったり、不穏な影や光が映るだけで興奮する。
そこに今回は本格的なガンアクションと来ればもう間違いない。
登場人物たちの感情を失った喋り方は黒沢映画になればみんなそうなってしまうから面白い。
お気に入りは「コイツ コロース」。
予告から気になってたけど、あれ岡山天音が言ってたんだ!
吉岡さんも『Chime』の感じそのままでとても良い。
鑑賞前にジャンプスケアがあると聞いて物凄くビビっていたけど一箇所だけで、あとは雰囲気でこちらを攻めてくる焦らしプレイ。
そういうところが好きなのよ〜黒沢くん♡
ベイビーわるきゅーれから2日連続で上質な邦画アクションを映画館で観れて大満足。
佐野くんが現場処理を電話で頼んでたけど、あれ絶対田坂宮内のふたりだよねwww
ちょっとクロスオーバー見てみたいかも。
Alexandrosのインスパイアソングもカッケー!!!
キャストいいのにストーリー微妙
題名通りです。
キャストは菅田将暉や窪田正孝など豪華俳優陣を揃えているのですが、内容が薄っぺらかった。
アシスタントの佐野は吉井にどんな恩があるのか(雇ってもらっただけで人の命を奪ってまで守るか?)とか、
闇の世界とどんな繋がりがあるのか、とかそこら辺の話をもっと掘り下げてほしかった。
全体的に登場人物の感情やゆらめきが分からないので、ストーリーに重みがなかった。
転売ヤーもっと嫌いになりました。
私の周りに忍び寄るネット社会
映画『Cloud』非正規あるいは、正社員の世界とは違う階層で生きる人々の物語。格差社会の生み出したものなのだろうか、超氷河期世代からの弊害が生んだ労働者とその後の雇用形態のいびつさが浮かび上がる。この映画は、今の時代の異形な部分を感じさせる
格差社会の負け組の生き方
こんな言い方良くないんだけど。
主人公は、非正規職と思われるクリーニング工場に努め三年。
副業にせどり転売。
ネットでは、さかんに副業として宣伝してます。
メルカリやネットオークション。
店を持たずに売れる環境があります。
朝はやく電気店の広告商品目指し店に並ぶ。
郊外の大きな古着屋をまわり、たくさんの商品から少しでも転売で稼げそうな商品を買い漁る。
こんな稼げる商品をゲットしました、そんな動画がYoutubeに溢れてます。
または、100円仕入れでメルカリ転売で高収入。
そんな謳い文句で、ノウハウを教えるからまず入会金。
そんな怪しい商売まであるぐらい。
副業、副収入ブーム。
本業で、思ったように稼げないからでしょうか。
あるいは、低収入の非正規職。
映画はそんな底辺労働者が主人公。
全共闘世代の監督なのかな。
1955年生まれ現在69歳の黒澤清監督。
学生運動華やかなりし頃は、まだ中学生かな。
となると学生運動の終焉。
そんな時期に青春時代を過ごされた方かな。
あの時代の空気は、高度成長期。
人々が、豊かになってきて、さらにこの豊かさが続くと思われた時代。
そんな時代は、転売屋なんていなかった。
いやいたのかもしれないけど、今みたいに普通の主婦がなんてとてもとても。
やはり、ネットの出現でしょうか。
家にいながら副収入。
Youtubeに顔出しで、主婦が登場して宣伝。
危ない、危ない実名顔出しほど危ないものはない。
実名ではないにしろ、すぐ特定されてしまう。
ネット社会の問題点を上手く料理している。
転売で儲けた主人公は、会社をやめ群馬県の寂しい村で家屋を買い転売を続ける。
かつて買い叩いた恨みを買い、窮地に追い込まれる。
物語的には、ご都合主義的なところを感じつつも、素材提供に過ぎないと感じる。
闇バイト、ネットカフェ難民、非正規職、そして転売屋。
今どきのネット事情を網羅している。
さながら、群馬県の山中で銃を発泡するあたりは、連合赤軍事件と重ねてしまう。
群馬県の山中の荒涼とした風景が、映画のトーンと微妙に合う。
おおよそ景気の良かった時代には考えられなかった転売屋。
そしてそれを取り巻く社会とインターネット。
あらゆる今という素材を提供している。
あとは、鑑賞者の判断にということなんだろうな。
少なくとも、私には、人の裏をかくに近い商売は、いかがなものかなという感想が残った。
ここは地獄の入り口かぁ⁉️
人の弱みにつけ込み、人を騙し、楽をして金儲けする輩への天誅&天罰ムービー⁉️菅田将暉扮する転売屋の生態を描く前半と、被害者たちに拉致られ、殺されそうになる後半‼️ただイマイチ被害者たちの心情が響いてこない‼️冒頭で40万円の電子機器を3千円で買い叩かれた男も、それだったら売るなよと思うし、荒川良々もなんで奥さんと子供を惨殺したのか⁉️窪田正孝は同じ転売屋のくせになぜ主人公憎んでいるのか⁉️古川琴音はただ金が欲しいだけ⁉️まるでベイビーわるきゅーれなアシスタントの男のバックは⁉️多分それぞれの背景は複雑で、主人公を恨んでるんでしょうけど、劇中で何の説明もないので、ラストの銃撃戦もサバイバルゲームの域を出ていない‼️ひょっとしたら黒沢清監督は、そんな事情なんかお構いなしに犯罪や殺人が行われる現代の不条理な世の中を描きたかったのか⁉️それはそれで恐ろしい映画ですけど‼️ラスト、被害者たちを皆殺しにし、アシスタントの男ともに後戻りできない世界へ足を踏み入れた主人公のセリフ「ここは地獄の入り口かぁ」と闇に浮かぶ菅田将暉の白い眼が戦慄‼️
ろくでなしな世界
皆さんおっしゃるように何のカタルシスもない作品で見終わってげんなりします。
モラルも倫理も捨て去った人間ばかりです。
でもモラルって、人間社会がなるべくみんな幸せに回るために必要なもので、
その中で幸せなんか自分には巡ってこないと見切りをつけた者は、
守る気なんかさらさらなくなるのでしょう。
そんな人間が増えつつある現状をそのままさらけ出しているような作品です。
強い動機があるのは手塩をかけて開発した機械をかすめ取られた倒産工場主くらいで、
あとはすべて後先考えもせず暴力をふるうようになった奴らばかりです。
唯一動機が分からないのは、菅田将暉が雇ったアルバイトの青年の奥平大兼で、
彼がなぜ助けに来るのかさっぱりわかりません。
推測するに、地方のやくざの御曹司で東京の組に修行に行って帰ってきていた、
というような存在かと思いますが、彼にも身勝手な理屈を語らせたら、
もっと情けない世界が徹底してよかったのではと思います。
彼が作品の肝だったのに、と思いました。
奥平君の演技はなかなかの存在感でした。
しかし井の頭五郎さんは拳銃まで扱うんですね。
あの後、駅前で腹が減ったことに気づいて、店を探したとか。
メジャーになれない理由がよく分かる
転売屋が色々なところで嫌われ、恨みを買って・・・という前半の設定は面白いが、それだけ。
後半、脈絡なく延々とドンパチが始まり、派手に血が流れてバタバタ人が死んで、それでドラマが成立すると考えてるなら、あまりにも稚拙。
この監督がメジャーになれない理由がよく分かる作品でした。
Vシネ
黒沢清監督最新作。転売ヤーの菅田将暉が自業自得とは言えとんでもない目に遭うサスペンス・ホラー。日常に潜み口を開ける非日常。前半と後半でガラリと雰囲気が変わり後半はVシネ時代の黒沢清を観ているかの様な寂寥感と虚無感。まさかあの人がカメオ出演するとは!
不安と恐怖がすさまじい
・主人公の吉井が冒頭から3000円で買って20万で転売っていう、あくどい転売をしているところから猛烈にひきこまれた。そして終始、不安と恐怖が続くすさまじい映画だった。ただ冒頭の会社にはどういうコネで買いに行ったのかが気になった。ほぼネットで買って売ってを繰り返しているようだったし。
・吉井の最初のアパートの暮らしが転売ができて静かに安心している様子が妙にリアルに感じられた。当人も真っ当じゃない、こんなこと未来がないけど、これしかないという虚しさが凄かった。
・キャラクター全員が心に闇を抱えている感じが隠しきれてない雰囲気が凄く良かった。誰とも友達になりたくないと思った。
・クリーニング店から帰宅途中に道路上にはられたピアノ線?は滝本の仕業だったのだろうか。
・吉井の転売の卑劣だけど在庫があるだけまだ真面目なような気がした。無在庫転売よりもっていう意味で。とはいえ、フィギュアの様子とか見ると許しがたい。
・望まない管理職への打診?から退職して転売一本っていう吉井の希望を見出した世界が救いのない感じがとても良かった。運送会社も警察とつながってる感じとか、リズムよく閉塞感が増していって凄いなぁと思った。
・卑劣な吉井、転売屋をぶっ殺そうっていう事で集まった烏合の衆のリアリティが凄かった。全然、統率が取れてないけど何となくやっちゃおう感というか。
・移住先で雇った佐野君があんなに活躍をして驚いた。
・最後、どうなるんだろうと思ったら助かった先も曇天の未来っていう予感に満ちたシーンが強く印象に残って、ラストまでずっと不安と恐怖が続いていて凄かった。
面白さはあったのですが‥
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
正直に言うと今作の映画『Cloud クラウド』は、個人的には食い足りなさがありました。
食い足らなさの1番の理由は、果たして映画の題材になっているネットのオークションサイトについて黒沢清 監督はちゃんと調べて脚本演出しているのかな?と疑問に思われた点です。
主人公・吉井良介(菅田将暉さん)は、オークションサイトの出品者で、潰れた会社から商品を買い叩いて仕入れたり、偽物をろくに確認せずに出品したりして儲けています。
しかしながら、現実のオークションサイトを利用した人のほとんどが知っているように、出品者は(サイトによっては購入者も)マイナンバーカードなどの身分証の登録が必要で、出品者や購入者にはレビューが付き、悪質な出品者はレビュー等で淘汰され、法令違反の出品者はバンされるのが通常だと思われます。
つまりそもそもこの映画で描かれたような悪質出品者が存在し続けられるかは、サイトのシステム的に疑問が出て来ます。
であるので、それが発展して今作で描かれたような、偽商品の購入者や安く買い叩かれた人達が出品者に恨みを持って襲い掛かるのは、いささかリアリティがないように感じました。
つまり、黒沢清 監督のイメージが先行して、現在の社会から遊離して映画が描かれているように私には感じられたのです。
そうなると映画の評価としては厳しくならざるを得ません。
(もちろん一般の観客がどのような評価をするのかは自由で開かれている必要はありますが)
『蛇の道』でも思われましたが、黒沢清 監督のイメージ先行で具体的な細部の現実リアリティから遊離した作品を、映画評論家の人達が持ち上げ続けるのも罪が深く、映画の世界に閉じこもり現実社会リアリティを知らないままで他作品含めて映画の評価をしているのではないかとの、(他作品の採点合わせて)専門家への疑念も湧き上がります。
今作がアメリカアカデミー賞の国際長編映画賞 日本代表作品になっているのも罪深いことだなとは僭越思われました。
菅田将暉さんを初め、秋子を演じた古川琴音さん、佐野を演じた奥平大兼さんなど、俳優の皆さんは素晴らしかったと思われます。
黒沢清 監督作品の特有の映画の雰囲気の良さは相変わらずあったので、俳優陣の皆さんの素晴らしい演技と合わせて、僭越ながら今回の点数となりました。
黒い糸で固く結ばれ、地獄のドライブが始まる
*
誰かの言いなりにならず
社会の組織に組み込まれず
転売で自分の力だけで稼いで
彼女と生活していきたい
ただそれだけだったのに
吉井は地獄へと導かれてしまった
もう帰ってこられない
自分の生活や利益のために
人の人生や喜びを転売で奪い続ける
*
佐野というアルバイトの少年
「困ったときはいつでも呼んでください」
「ずっとあなたのアシスタントです」
親身になってくれているようだが
実際のところ黒い組織の会長のせがれ
(だと思いながら観ていました)
*
人々から色々なものを奪ってきた吉井に
「殺し合いゲーム」という報酬がやってきた
吉井が嫌いな奴らが、吉井の命を狙う
「みなさん本気ですか?」
と、佐野がけしかけて仕組んだんだろう
*
吉井に銃を持たせ、窮地の状況に追い込む
そして、佐野自らが危険な状態に身を晒す
“佐野が助けに来てくれた”
そう思っている吉井は佐野を狙う奴を
黒いソレで撃ったのだ
「吉井さんすごいですよ…命拾いしました」
黒い組織の当たり前の日常や
人を殺すことで救える命があることを
実践を踏まえて佐野は吉井に
植え付けているかのようだった
吉井の何かがぷつんと切れた
あっという間に射撃が当然の行為になった
*
「吉井さんは稼ぐことだけ考えてください」
「その他のことは全部こっちがやるので」
さあ、地獄のドライブのはじまりだ
転売で得たカネが漆黒に染まる
そんな日常が涎を垂らして彼を待っている
この世界から抜け出したいと告げたら最期
吉井の命はあっけなく終わるのだろう
*
楽して稼ぐ方法なんてあり得ない
あり得たとしてもずっとは続かない
うまい話とあると聞かされて
地獄に連れて行かれてしまうことは
誰だって可能性としてあり得る
自分だけが良い思いをしようとして
人から搾取したり傷つけたりしたら
その分だけきっちり還されるように
この世は出来ている
真っ当に生きていれば保たれる
人を大切にすれば保たれる
自分の人生も、自分の幸せも
*
すぐ近くで地獄のドアの入り口が
影を落としているんだな…と
深く考えれば考えるほど
ゾッとさせられるような作品でした
人がバンバン死んでいきますし
主人公も闇堕ちするので
観た後はかなり凹みます
ご留意ください
*
雑な脚本
菅田将暉主演、転売屋を主人公にした特異な設定でかなり期待して観ました。
前半部は、悪くはなかったが、観終わって、
「映画の脚本ってこんなに雑でいいの?」と感じてしまった。
あらゆる動機が説明不足
吉井を襲う人たちのそれももちろんだが、佐野の後輩の行為や
そもそも湖畔に引っ越す吉井の動機がピンとこない。
自身に恨みを持つ人たちに襲ってもらいやすい環境を選んでいるようにみえる。
他にも佐野にパソコンを見るな、と言いながらシャットダウンやロックもかけずに出かけてしまうのも雑
バスの背後の人影や、道路に張られたワイヤーなどは拷問時などに明らかにしておくべきでは?
佐野を解雇したのに、彼に手配してもらった車をそのまま使い続けるのはとても不自然。
小さな違和感満載です。
最後の撃ち合いは、銃撃戦とも呼びたくないような単なる「ドンパチごっこ」
佐野の背後組織の存在も唐突過ぎで、解雇された佐野が吉井を救う理由も見えてこない。
俳優さん個々の演技は悪くなく、前半部まではある程度楽しめたので、この点数です。
射幸心
菅田将暉が売れっ子俳優なのが納得できる。まさに様々な役を演じられるカメレオン俳優だ。今回彼が演じるのは煩わしい人間関係を嫌いミニマムな人間関係しか持たない、というより損得勘定でしか人づきあいができない転売ヤーの吉井。
彼は工場に勤めながら転売で生計を立てていたが、上司の滝本から管理職昇進の話を薦められ煩わしい人間関係を嫌い工場をやめてしまう。
滝本に対する話し方も口ぶりは丁寧だが、心がこもっておらずうわべだけを取り繕ったその場しのぎなものであり、それは誰に対しても終始そんな感じで彼のその生きざまがよく表れている。相手はさぞかし自分が舐められていると感じることだろう。まさにそんなコスパ重視で煩わしいことを嫌う今どきの若者像を菅田は見事に演じている。
そんな吉井にも恋人の秋がいるが、この二人は似たもの同士だ。秋もやはり損得勘定で吉井と付き合っている。
ネット動画でファスト映画というただ映画のあらすじを紹介する動画や、早送りで映画を見るのが若者の間で流行ってるという。彼らはとにかくコスパを重視する。映画を見るのに2時間もかけれないのだという。こういう今どきの若者の考え方もわかるような気がする。
日本は終身雇用が崩壊して非正規が増え若者の貧困率が増加。どんなに働いても生活は安定せず結婚もあきらめざるを得ない。生活していくには自分の時間を切り売りするしかない。彼らにとっては時間はきわめて貴重だ。そんな社会の中で吉井のようにコスパ重視の人付き合いしかできなくなるのも理解できる。
この社会で生きていくためには人の気持ちなど考えてる余裕などないのだ。転売屋がひしめく業界の中で彼は他者を搾取してどうにかのし上がろうとする。
ババ抜きのような商売と彼は言う。安く仕入れて高く売り逃げる。時にはコピー商品でも売り逃げれば勝ち。まさにゼロサムゲーム、しかしゲームの敗者からは恨まれるようになる。
次第に彼の日常には不穏な影がちらつく。アパートの階段のネズミの屍骸、彼を狙ったであろう道に張られたワイヤー、バスの席の後ろにたたずむ影。
そしてついにはネットを介して集まった人間たちが彼を血祭りにあげるべく集結する。それは逆恨みであったり、やっかみであったり、そして破滅した自分の道ずれにしようとする者たちである。
彼らはみなこの社会の負け犬たちだ。人生がままならないことへの鬱積を吉井という標的に向けることで昇華しようとしている。しかし、吉井もまた彼らと同じく負け犬だった。
この終盤長々と繰り広げられる戦いは不毛な戦いである。この戦いで得られるものは何もない。魂の救済も得られない。ただ殺し合い生き残った者だけが勝利するこれこそまさにゼロサムゲームだ。金は一銭ももうからない。命を代償にして得られるのは自分の命のみ。
この戦いの最中で、そして戦いを制して生き残った吉井が常に気にしていたのは商品の無事であり、その売れ行きだけだった。命が助かったことに対して何の感謝の気持ちもわいてこない。ただ、儲かったかどうかにしか関心がない。
吉井をはじめとする彼ら負け犬はただ最下層の人間同士でいがみ合い殺し合う。かつて植民地統治において支配層が行ってきた分割統治の構図がここに見られる。被支配層を互いに争わせれば彼らが結集して支配層に牙をむけることはない。支配層は安定した支配を続けられる。
このシステムは今の貧富の格差が固定化した現代においても機能している。それにうすうす気づいている彼らだが、それを自分たちの手で変えるのは不可能だ。政治の力を使わない限り。
彼ら転売ヤーのやっていることは所詮は富裕層の食べ残したパイを奪いあってるに過ぎないし、けしてそれで富裕層にはのし上がることはできない。そんな社会に生きていることを自覚している彼らが射幸心をあおられるのも致し方ないことなのかもしれない。
そもそも彼らを負け犬ということ自体酷な話ではある。今の貧富の差が固定化された時代では到底個人の力ではどうしようもないこともある。正規社員になれる者がいれば、そのぶんなれない人間もいる。正規非正規で同じスタートで年をとればとるほど収入格差は広がる。こういう社会システムに生きる若者に対して今の社会は自己責任だという。これこそまさに分割統治だ。政治の不備を追及しようとする考えを自己責任という言葉で圧殺するのだ。正規社員になれなかったのは自分の努力が足りないからだ、自分が十分な教育を受けれなかったのは家が貧しかったからだ、それを世間のせいにするのは筋違いだ。などと、そういった思考に陥れば、社会の理不尽さを訴えるようなことはしなくなる。投票に行ってもどうせ何も変わらない、無駄なんだと。それこそが支配層の作り上げた罠なのだが。
本作はそんな現代社会を痛烈に風刺したスリラーの佳作。相変わらずの黒沢作品らしく日常に潜む不穏な空気や恐怖が見事に映し出されていた。
ちなみに監督はガンアクションは少々苦手のようで、終盤の多くを占めていた銃撃戦は物足りないものだった。せっかく佐野という興味深いキャラクターを創造しておきながら彼の活躍がいまいちだったのは残念。彼がプロの殺し屋ならもう少し華麗な銃裁きが見たかった。それ以外はほぼ満足な作品。
さまざまな恐怖
すぐそばに在る日常から始まり
恐怖が広がる
銃を持って変わってしまう心理も恐怖
でも非現実的なのか そう遠くないリアルなのかのところが映画ならでは
ラストはもうちょっと現実的な日常になってもよかったかもと思ってみたり
窪田正孝、岡山天音をもっと見たかった
タイトルなし(ネタバレ)
吉井良介(菅田将暉)の生業は「転売屋」。
今日も電子機器工場の倒産を聞きつけて、健康電子機器30台をタダ同然の金額で仕入れた。
工場主からは「人非人」などの罵詈雑言を浴びせられるが、「安く仕入れた品に儲けを付加して売る」だけなのだ。
売れなければ、廃棄費用はこちら持ち。
厳しい仕事なのだ。
幸い仕入れた機器は1台20万で売れた。
さて、アルバイト先のクリーニング工場では、青年部主任なるわけのわからない役職を押し付けられそうになった。
そんなのは御免被る、3年勤めた、辞め時なのだ・・・
クリーニング工場以外にも、先輩転売ヤー村岡(窪田正孝) からは新事業立ち上げ名目で金をせびられる。
こいつともオサラバしたい。
ちょっと金遣いは荒いが魅力的な恋人・秋子(古川琴音)とともに、山あいの湖畔に格安賃貸があったので引っ越すことにした・・・
といったところからはじまる物語で、前半から不穏な雰囲気が漂っている。
この前半は、ロマン・ポランスキー監督作品を彷彿させる剣呑な雰囲気で、ゾクゾクさせられる。
ま、人というのはどこで恨みを買うかはわからない。
転売ヤーとしての悪評が巷に拡散、ハンドルネームだった吉井の正体も暴かれ、名も知らぬ人たちが集まり、復讐を仕掛ける。
匿名の悪意は「雲」のように湧き上がって来る。
それがタイトルの由来。
集まった人々は吉井の住処を襲い、廃工場に拉致監禁して・・・
と、ここからはジョン・カーペンター監督『要塞警察』か。
バンバンと撃ち合い・・・
なんだけれど、長くてダレたぁ。
見知らぬひとたちが集まってのマン・ハンティング物語ならば、それはそれで、クラウドの先、SNSの先の見えない悪意に襲われるという現代的怪談になったのだが、残念ながら、集団の中に因縁ある人物が出てきて、つまらなくなった。
復讐するなら、とっととやらないと、ヤられてしまう。
やっぱり、そうなるよなぁ。
で、ここで終われば、普通の映画なのだが(ま、普通かどうか意見は分かれるかもしれないが)、吉井の助っ人。アシスタントくん(奥平大兼)によって、クラウドの彼方に吉井は連れ去られてしまう・・・
う、ビヨンド!
ルチオ・フルチ監督か、ラヴクラフトか。
ということで、ラストで評価アップね。
転売はダメ!
•転売ヤーが恨みを買って襲われるという設定は面白いと思った。
•やばい奴ばっかり!!めっちゃ怖かった、、
•銃声の重厚感半端なくてリアルな感じがより怖く感じた、、実際の音知らんけど、、
Boy Fearless
転売ヤーを懲らしめる話かと思いきや、大小の恨み嫉みが積み重なってやがて最悪の事態に…といったテイストの作品で大ベテランが描くずっしりとした重みがクセになり面白かったです。
前半は転売ヤーの事情を垣間見るシーンが多く、早い段階で狩りゲームに進むと思っていたからか物足りなさがそこにはありました。
誰かを常に疑っている感じで進んでいくので不穏な雰囲気はありましたし、それに反して転売の模様が雑かつコミカルに描かれているのでそこは面白さに繋がっていました。
フィギュアを全部買い占めた後に店主が売り切れました〜って店の前に出した時は笑いました。
実際に拷問を行うシーンがあるわけではないのにセリフだけでヤベェ事するじゃんと思わず笑ってしまいました。
ゆっくり痛ぶって殺すならまだしも、中世の火炙りのようにじっくり足元から焼こうとするし、めんどくせぇから顔面から焼いていこうぜというジャンキーさも復讐サイドは見せてくれるしでキャッキャしていました。
銃撃アクションは割と単調なので、ここ最近の銃撃アクション作品が充実しているのもあって絵面に新鮮味は感じられなかったです。
銃を初めて撃った時の衝撃だったりが表現されているのは珍しくそりゃアワアワするよなってなりました。
底知れなさを醸し出していた佐野くんがしっかりと無双していくんですが強すぎるがためにこの人いれば楽勝じゃんってなってしまい、割と強そうな敵方も一掃されていくのでもっとそこら辺観たかったなぁと思いました。
車窓からの景色がどんよりしながら明後日の方向へ進んでいく終わり方は余韻があって良いと思いました。
吉井全く反省の色が無くて純粋悪だ〜ってなりました。
荒川さんの不気味さ全開で近づいてくる感じだったり、奥平くんの表情変えずに圧倒していく様子だったりと黒澤監督の世界にどっぷり浸かった演者がとんでもない演技合戦を繰り広げていたので大満足です。
松重さんあれだけの出番のために…贅沢だぁ。
前半と後半で見事に作風が変わりますし、チートキャラが出てきてしまって緊張感こそ薄れてしまうのは残念でしたが、邦画らしからぬつくりには舌を巻きました。
転売ヤーは無くなれば無くなるほどいいですからね。
鑑賞日 10/3
鑑賞時間 18:30〜20:40
座席 D-12
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