Cloud クラウドのレビュー・感想・評価
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こんなに面白い黒沢清映画が!
本年度暫定1位。純度100%の黒沢清ワールドでありながら、エンターテイメントとしても最高の出来。完全に映画に吸い込まれた。
◎終始不穏、不気味なのが黒沢清作品だと思うが、今回も間違いなくそう。常に黒沢清ワールドに浸っていられる多幸感(?)に、心が満たされていた。
◎主要な役者達はほぼ初めての黒沢作品だったらしいが、各々が素晴らしいポテンシャルを引き出されている。特に、窪田正孝と奥平大兼。2人とも素晴らしい。
◎後半の銃撃シーンの楽しさは、劇場で観てこそ。主に音響による理由で。
深夜帯で見たので、劇場にはほぼ観客ひとり。でもあらゆる人にみてほしい。
そして、黒沢清映画の虜になってほしい。
ラーテルは言い過ぎ。たぬきにしとき。
ひとつ言えるのは奥平大兼がめちゃくちゃ良い。佐野君が何者かなんてもはや気にならなくなるほどに。ストーリーは設定から何から中身がスカスカで、その全てをなんとかキャスティングで乗り切った感じです。
そもそも転売屋って今時やるならもっと上手くやるでしょうよ。某テーマパークの熊さんの新商品売った方がよっぽど利益出そうやん。だいたいあの社長も自分でオークションサイトにでも出せばいいのに、初っぱなからなんで??ってなった。わざわざ湖畔のポツンと一軒家みたいなとこ行くのも謎過ぎるし、後半の銃撃戦とかほんまもうただスクリーンを無で観てるだけやった。なんであんなことになったんやっけ?笑
最後の車を走らせながら多分名台詞を吐いたであろうシーンもなんか外の景色がCGで安っぽ過ぎて全然印象残らんかったな。強いて言うなら序盤のバスのシーンが一番怖かった。
空虚なゲーム
菅田将暉演じる転売ヤーが、ビジネス拡大に伴って不特定からの恨みを買い、思わぬ惨劇へ。人間関係や状況の説明を最小限に抑え、湿度と熱量も極力抑えた黒沢清ならではの娯楽作品。
登場人物がみな、出てきたときからセリフや表情が空虚で薄っぺらな感じ。ネット上の転売ビジネスや闇バイトの空虚さと重ね合わせた作者のねらいなのだろう。後半の延々続くガンファイトも、空虚なゲームをただ眺めている気分。
出演者は豪華だが、作品世界にあまりフィットしている感じはしなかった。中では、奥平大兼の飄々とした感じが、裏で何を考えているか分からない薄気味悪さもあって、良かった。殺し合いは全部彼が仕組んだようにも思われる。あと、荒川良々のライフル姿が格好良くて意外。
黒沢清としては、かつてのVシネマのように軽く撮った作品なのだろう。観る側も軽い気持ちで十分かも。
もうちょっとかな
ディテールを一切排除した演出が思わぬ緊迫感を生むサスペンスの成功パターン!!
AIが創る世界
「フィルム・ノワール」
面白い
もう、目の前にあるかもしれない現実
説明不足による強引に見える展開、不条理な登場人物の行動には、かなり戸惑いました。
黒沢清監督が菅田将暉を主演に迎え、憎悪の連鎖から生まれた集団狂気に狙われる男の恐怖を描いたサスペンススリラー。
黒沢清監督の映画には不穏な気配が漂って、観客の周囲の空気とどこか共振するのが恐ろしいところ。しかしそれは、社会問題を狙い撃ちした“社会派”だからではなく、黒沢監督が洞察する人間たちからにじみ出る、怪しげな臭気のせいかもしれません。「Cloud」も“転売ヤー”に“闇サイト殺人”と現代社会の暗部を題材にしているものの、描くのはむしろ、その奥底にある人間の本性ではないでしょうか。
●ストーリー
町工場で働きながら転売屋として日銭を稼ぐ吉井良介(菅田将暉)は、転売について教わった高専の先輩・村岡(窪田正孝)からの儲け話には乗らず、コツコツと転売を続けていました。
ある日、吉井は勤務先の工場の社長・滝本(荒川良々)から管理職への昇進を打診されますが、断って辞職を決意。郊外の湖畔に事務所兼自宅を借りて、恋人・秋子(古川琴音)との新生活をスタートさせます。
地元の若者・佐野(奥平大兼)を雇って転売業は軌道に乗り始めるが、そんな矢先、吉井の周囲で不審な出来事が相次ぐように。
吉井が自覚のないままばらまいた憎悪の種。例えば苦労して開発した医療機器を吉井に買いたたかれる町工場の経営者殿山宗一(赤堀雅秋)のように、バッグやフィギュアを大量に買い取り、インターネットを使って高値で売りつける転売屋としての行為は、自身の知らないところで周囲の人間の反感を買っていたのです。それはネット社会の闇を吸って成長し、どす黒い“集団狂気”へとエスカレートしていきます。誹謗中傷、フェイクニュース…悪意のスパイラルによって拡がった憎悪は、実体をもった不特定多数の集団へと姿を変え、暴走をはじめます。やがて彼らがはじめた“狩りゲーム”の標的となった吉井の「日常」は、急速に破壊されていくことになっていきます…。
●解説
吉井は困窮した町工場の製品を非情に買いたたく冷血漢です。物腰は丁寧だが熱がなく、真意がつかめません。
吉井の真の目的は何なのか。映画の前半は、楽して金をもうけようとする吉井の危うさ、怪しさをジワジワと示してゆくと思って見ていると、半ばを過ぎたあたりで急展開、バイオレンスとアクションに転調するのです。吉井は何者かに拉致監禁され、殺意にさらされます。
吉井のしたことは、襲撃者たちを怒らせて当然でしょうが、本人はそれほどの罪悪感は持っていません。その証拠に、吉井は人を小ばかにしたような言葉を、文字通り、さらっと言ってしまうのです。
「クラウド」というタイトルに関して英語表記は「雲」のdoudですが、監督の黒沢清は不特定多数の意味も込めて「群衆」のcrowdをイメージしていたといいます。
男たちの憎悪はそんな「雲」のように膨らんできているのに、吉井にはそれが見えないのです。とはいえ、うっすらとは感じているはずです。暗がりで怖い顔をしている吉片に、観客は「気をつけろ」と言いたくなるでしょう。見えないけど、怖い。いや、見えないから、怖い。 黒沢流ホラーの神髄が吉井のまわりにほの見えてくるのです。
ネット社会の匿名性は、見えない恐怖を描くのに格好の題材ですが、映画の中盤以降、ホラーからアクション映画に転調させていく起動力となるのです。
金を稼いだ吉井は郊外に家を借り、恋人と住み始めます。やがて、ガラスが割られるなど、不審な出来事が。ネットを介して集まった集団の攻撃を受け、吉井ははっきりと恐怖を感じるようになります。
見えない恐怖を描くのがホラー映画なら、それを可視化したのがアクション映画。戦争映画、ギャング映画、西部劇といったジャンル映画の主人公は、恐怖の対象である敵と闘うために、銃を手にします。
吉井も仕事のために雇った若者に助けられながら、敵に立ち向かっていきます。
この唐突な方向転換に、不自然さを感じさせないのが黒沢映画です。一つには、吉井はじめ登場する全員が「コイツ、何考えてるんだ?」と戸惑う人物ばかりだから。不条理なことを当然のように口にし、行動に移すのです。近しい人物同士でも関係は希薄、そして皆自分勝手。漠然とした憎悪の芽が膨らみ、無軌道な暴力となって噴出するのです。情感を注意深く排除する黒沢演出に俳優たちが繊細に応え、誰もが不気味に見えてきます。
但し本作が他のスリラー映画と違って、「やぼったい印象がなくスマート」に感じられるのは、あれだけ怖い演出なのに、不用意に血が出ないというスプラッターな表現を極力抑え込んでいることにあります。本作では銃でたくさん人が撃たれますが、破壊された死体は全く撮られていないのです。
●感想
“ネットの闇”という主題は、掲示板の悪意ある書き込みなど、さまざまな形で表現されてきましたが、これほどえたいの知れないスリルが渦巻く映画は記憶にありません。ただ生活上の困窮を抜け出すために主人公が行った小さな悪事が、予想だにしない殺意を招いてしまうこと自体は現実に起こりえる話だし、菅田が演じた若者像も実にリアルで現代的。主人公が購入する湖畔の家や廃工場などのロケーション、脇を固める古川、荒川、窪田正孝らの謎めいた挙動やセリフも鮮烈で、映画の不気味な濃度をいっそう高めていると思います。
人に恨まれるようなことを言う吉井の心理は、映画では詳しく説明されません。特に後半はさらにそぎ落とし、アクションに徹したそうなのです。最近の映画に散見されるアクションのごたごた、もたもたした感じがほとんどない。簡潔で、全く隙がないのです。その結果、暗闇の中で動けない怖さみたいなものが際立つ演出となりました。
但し説明不足による強引に見える展開、不条理な登場人物の行動には、かなり戸惑いました。
まず疑問な点は、殺害しようとする動機です。例えばネットの取引上のトラブルで、頭にきて出品者を殺害しようとするでしょうか。はたまた目をかけてきた部下が突然退職したくらいで殺意を抱くものなのでしょうか。はたまた後輩に事業への投資を持ちかけて断られたくらいで、恨みに思うものでしょうか。もうこれらは先に殺意を抱くことが決めていて、余計な説明抜きにいきなり吉井を殺ろそうするので、見ている方は面喰らうことになるのです。
また吉井が雇った佐野も得体の知れない人物なのです。ただのニートのくせに、何か凄い裏社会とつながっていて、佐野が電話するだけで拳銃の手配から、死体の処理まで裏社会の人物とおぼしき相手が全部用意してくれるのです。このニートくんはいったい何者なんだと脅かせてくれる設定した。
さらに恋人の秋子も不条理さを爆発させます。いきなり退屈という理由だけで、別れを切り出し吉井の元を去るのはいいとして、吉井が監禁されて殺されそうになった時再び現れたものの助けようとらず、傍観するのみなのです。秋子が襲撃一味のボス格なのかとすら思ってしまいました。そしてラストでの秋子の思いがけない行動。吉井が唯一信じられるのが実体のない愛であることが、終局の重要な伏線となっていたとはいえ、さすがにこれはあり得ない変容ではないかと思いました。
いくら怖い描写のためには、台詞をそぎ落とし、説明しないことを徹底されても、登場人物の心理描写まで省略されては、なぜ突然そんな言動になるのかちっとも理解できなくなります。
その辺で評価の大きく分かれる作品だと思います。
残念
ちょっと残念すぎる中盤以降
いや、序盤もリアリティに欠けるな、とは思ってはいたのですが、それでもテーマ設定や菅田将暉・古川琴音の怪しい関係は楽しめてたんですよ。
しかし、中盤から終盤にかけては非現実かつスケールの小さい話に落ち着いてしまって、作品への期待は失われてしまいました。
それでも黒沢監督だけに集中力が切れることなく、(かつ古川琴音さんの妖艶な魅力で)最後まで夢中に鑑賞させていただきました。
ただ、疑問が二つ。
菅田将暉がもっと儲かってるように見えないと、この話自体が成り立たないこと。そして、奥平大兼のバックボーンって後輩ボコってたあそこだけ?
転売屋の横流しにはお気をつけて…
『クリーピー』や『リアル』、最近では『散歩する侵略者』等、独特の世界観で楽しませてくれている黒沢清監督が、菅田将暉を主演に迎えて描いたサスペンス・スリラー。今や生活の一部となったネット・ビジネスを背景に、それを悪用し、不正な転売によって一攫千金を企む一人の男・吉井。吉井によって騙された者達が、憎悪と怒りを渦巻いて、吉井を吊るし上げようとする恐怖を描いている。
黒沢作品らしく、相変わらず何処で仕入れたのかライフルや拳銃でのドンパチ合戦。次々と銃弾の餌食となっていき、最後も救われないイヤミスの内容。ネット・ビジネスによる転売に着目したのは面白いし、前半の吉井の仕事振りによる掴みも流石だと思った。決してグロさは感じないが、後半は、日本には馴染まない派手な撃ち合いを繰り広げる。しかし、ここまでカモられた男に執着する、被害者たちによる集団心理といのも、動機としてはやや弱さを感じた。
クリーニング工場で働く吉井は、先輩から転売屋の極意を教えられ、犯罪ギリギリのグレーゾーンでの転売を日々繰り返していた。ある日、医療機器の転売で大儲けをした吉井は、クリーニング工場を退社し、恋人の秋子と共に、人里離れた湖畔の家に移り住んだ。そこで、地元の青年・佐野を雇って、転売業を広く手掛けて成功を収め、新生活をスタートさせた。
そんな矢先に、吉井の周りで、夜中にガラスが割られたり、自分の仕事が警察にも知られていたり、不穏な出来事が起き始める、そしてネットでは、吉井の父性転売のによって地獄を見た者達による吉井への誹謗中傷が炎上し、その果てに、『吉井狩り』という猟奇的な集団心理を煽動していった。ターゲットとなった吉井の新生活は、根底から崩れ落ちていく…。
主役の吉井を演じた菅田将暉は、次第に追い詰められて、引き金を引くまでに堕ちていく役柄を、存在感ある演技で魅了している。また吉井の先輩役の窪田正孝の狂気に満ちた表情も、不気味さと怖さを湛えていた。その他にも、恋人役の古川琴音、吉井を狙う役の荒川良々、岡山天音等も、泥臭い演技で個性ある役を演じていた。そして、本作のキーパーソンとなる、佐野を演じた奥平大兼は、表情を崩さない淡々とした演技が却って不気味さを煽る。何を考えてるのか、最後までその存在も目的も謎につつまれままエンドロールを迎えてしまったのが消化不良だった。
すでに世界はそうなっている
まさかの展開にツッコミどころも多いけど…
てっきり、慈悲の無い嫌われ者の転売ヤーが謎の集団に追い詰めれれていく…そんなサスペンスストーリーかと勝手に思っていましたが、銃撃戦に突入していったのには驚いた。
凄く期待してたり何かのテーマを求めて見に行ってたら悪い意味で衝撃を受けたかもしれないです。
あまり深く考えないで観てたせいか、これはこれで面白かった。
物語ではなく〝行為‘’でシーンをつないでいって映画を成立させている...
高濃度の黒沢清ワールド
全202件中、81~100件目を表示