Cloud クラウドのレビュー・感想・評価
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転売屋は罪?
後半に失速した感じ
分かり易い不条理劇
『蛇の道』『Chime』と、今年に入って相次いで公開された黒沢清作品に本当にガッカリさせられ続けて来た僕にとっては久々に黒沢らしさが感じられる不条理ホラーでした。
あこぎな手を使って買い集めた品を高価で転売する、いわゆるテンバイヤーの男の下に恨みを募らせる人々・SNSで煽られた人々が集まりぶっ殺しの暴力が炸裂し始めます。その混乱と暴力こそ黒沢映画の持ち味でしょう。
でもね、本作で描かれるのは「分かり易い不条理」「解説できる理不尽」であると感じられました。『憐みの3章』の「訳の分からぬ不条理」「解説などできない理不尽」を観て混乱の陶酔を感じた後だと本作は物足りなく感じてしまいました。映画の観客は本当に我儘だなと思います。はい。
急ハンドルぅ!!
展開の急ハンドルっぷりにビックリ!
だけどジャンプスケアに頼らずあれだけ怖いシーンを作るのは流石の演出力
工場勤務のかたわら、転売ヤーとしての活動もする吉井
投機的な転売で入ってきた600万を手に彼は仕事を辞めてしまう
転売活動に特化した自宅兼倉庫を借り、北関東の湖の畔で恋人と暮らし始める
しかし、その生活はどす黒い暗雲に包まれていくのだった・・・
いささか乱暴なまとめ方ではあるが、登場人物はみんな壊れている。欠けている
仮の人生、仮の目標、仮の成功に支配されて行き当たりばったりの行動に皆が終始する
そんな中で唯一、主人公の感情が爆発するシーンは「彼の中でこれだけは本物だったのか」と伝わってくる名場面だった
終盤(個人的には松重豊さんの出たシーンから)の急ハンドルっぷりには驚かされたが、総じて強く記憶に残った一本だ
デジタル的な「クラウド」でもあり、自分でもハッキリとさせられない感情を含む形の無いものに振り回される人々、そして現実にも充満する濁った空気
思い返すほどに解釈の幅を広げる秀逸なタイトルだと感じた
沸き上がった憎悪の雲海、菅田将暉は呑みこまれるのか
1 しがない転売屋が多数から恨まれ窮地に陥いり、一線を越えようとする姿を描く。
2 封切り前に番宣のCMが頻繁に流れていて、興味を温めていたところ不入りで早めの打切りかと思え、平日夜の回に行くと自分を含め二人だけだった。
3 映画は、菅田将暉のあこぎな買い叩きのシーンから始まる。工場で働きながらネット販売で利ざやを稼ぐ日々。仕入れのネタ探しや売行きを確認するのにアパートでパソコンとにらめっこ。なんとも貧乏臭く社会の底辺で喘ぐ。ところが冒頭で仕入れたものが六百万円の儲けとなった。ここまでが前段。菅田の近辺で不穏な動きや謎の人物の接近があり、サスペンスの様相をなす。
4 小金を得た彼は、工場をやめ郊外に引っ越す。地元の若者を作業員に雇い転売を専業とするが、ブランド物のコピー品など手口がやばくなっていく。損を被り菅田将暉に恨みを持つ者が増え、ヤバイ連中が集まり復讐の為に襲撃に向かってくる。襲撃に至るまでは中弛みでサスペンスすらなく面白くない。
5 襲撃後は逃走劇からの銃撃戦となるが意外な人物が表れ菅田の窮地を救う。そして一線を越えていく。襲撃については、やる方もやられる方も既に正気を失っている。特にライフルを使う二人は狂気に支配されていた。菅田も襲われながら売行きと商品のことを心配する始末。さらに菅田を助けた人物は、ど素人みたいな顔をしながら淡々と反撃し、裏社会の顔役的な存在であることが分かる。人物の出し方としては唐突過ぎると思う。その一方、銃撃戦は、狂気が蔓延する場面において、得体の知れない人物や底辺同士による抗争を描いたナンセンス劇として評価はしたい。とは言え、全体的にはバランスの悪い作品となった。
全うに生きられない者たちのどんちゃん騒ぎ
主人公は真面目に働く転売ヤーというあらすじだったけれど、特に真面目とも思わなかった。転売屋として儲けることのできる手段を、当たり前に模索し実行している。
もちろん倫理観が欠如しているし、屑でもあるんだろうけど、一番強く感じたのは想像力が欠如した人物像なんだなということだった。ただ相手の立場になって想像するということができない。彼には悪いことをしているという意識もなく、当たり前に相手を慮ることもない。だから相手のこともすぐ忘れる。目的があるわけでもなく、金儲けというより予算残高の数字による一瞬の恍惚や興奮の奴隷になっている。そんな主人公でも人間らしく恐怖し、葛藤し、道徳観が揺り動かされ、慟哭する様は喜劇じみたものすらあった。
この物語にはまっとうな人間がいない。一線を越えた者たち。なにがしかの感情が著しく欠けてしまった者たちしか出てこない。彼らを正しい路線に直そうとするものも出てこない。歪んだ倫理や道徳を抱えたまま、後ろめいた結末へ向かっていく。
面白い。また、演出の力なのか、素人の鉄砲玉でもそれが発砲される度にドキッとした。音や画の力? アクションとはまた違った興奮や恐怖、没入感だった。
ただ、所々辻褄合わせ感のでるシーンがあったり、ネットの悪意がこういう形で表面化していくかはどうなんだろう……と思わされたところもあった。彼と関係のあった者たちはネットの力を使って報復にでるのか? 上手い具合に関係のありなしで比率が別れる。たまたま雇ったはずの男が……という仕掛け。簡単に銃も出てくる。リアルなだけにそうしたところが気になってしまう。ネットの悪意はもっと別のやり方で発現するような気がした。
さあゲームの始まりです
2024年映画館鑑賞95作品目
10月13日(日)イオンシネマ新利府
ハッピーナイト1300円
監督と脚本は『スウィートホーム』『地獄の警備員』『蛇の道(1998)』『ドッペルゲンガー(2003)』『贖罪』
『散歩する侵略者』『スパイの妻 劇場版』
『旅のおわり世界のはじまり』『蛇の道(2024)』『chime』の黒沢清
粗筋
転売ヤー吉井良介を恨む男たち6人は(三宅赤堀矢部井上滝本村岡)吉井を誘拐し殺そうとしていた
そこに現れた救世主は吉井からクビを宣告されたバイトの佐野だった
警察でもないヤクザでもない猟師でもない素人のドンパチを只々描きたかっただけの娯楽作品
アメリカならともかく日本ではリアルじゃない
安倍元総理暗殺でさえ拳銃ではなかった
手製の爆弾とかネットを参考に工学部出身じゃなくても容易に制作できるかもしれないが拳銃はなかなか手に入る代物ではない
佐野の人物像が全く見えてこない
そこまでして吉井を守る理由がわからない
『蛇の道』のように吉井が拷問され殺される展開を予想していたが今回は違った
しかしそれら細かいことは黒沢清にとってどうでもいいことなのだ
殺し合いの馬鹿馬鹿しさではなぜか『昭和歌謡大全集』を彷彿させた
襲撃メンバーの方が一方的に殺されたわけだけど
転売そのものは悪くはないが商売にも仁義というものがある
受け取るカネも重要だが顧客満足度の方が大切
たしかに彼らは人生の落伍者だが恨みを買うような商売はなるべく避けよう
まぁ面白かったのは事実
映画鑑賞は粗探しが目的じゃない
監督の意図になるべく寄り添って楽しむのが1番
あと役柄として今回も心配された荒川良々だが彼も芸歴長い50歳
白髪も目立ち始めた
北野武作品に続き良かったよ
こんなやつにも妻子がいるのかよと思う人もいるだろう
でもわりと世の中いるんだなあ
配役
「ラーテル」のハンドルネームで稼いでいる転売ヤーだが本業に専念するため勤めていた工場を辞めた吉井良介に菅田将暉
吉井の恋人の藤田秋子に古川琴音
吉井に雇われたバイトの佐野ふとしに奥平大兼
転売に失敗し吉井を恨むネットカフェ難民の三宅達也に岡山天音
吉井に自社商品の医療機器を安く買い叩かれ恨んでいる倒産寸前の町工場の社長の殿山宗一に赤堀雅秋
吉井襲撃メンバーとして三宅を誘うこの手のことは既に経験者で熟知している矢部に吉岡睦雄
吉井襲撃に参加するネット民の井上に三河悠冴
宗一の妻の殿山千鶴に山田真歩
警察官の北条に矢柴俊博
模型店店主の室田に森下能幸
室井襲撃メンバーに射殺される猟友会の猟師に千葉哲也
吉井を救出しようと敵のアジトに乗り込む佐野に拳銃数丁弾丸数発を売る謎の男に松重豊
吉井が勤務していた工場の社長の滝本一郎に荒川良々
吉井を転売業に誘った胡散臭い先輩の村岡耕太に窪田正孝
転売を失敗した三宅をネットカフェでボコボコにする男に足立智充
不動産屋に吉田亮
吉井の自宅に石を投げ入れガラス窓を割る佐野の後輩に萩原護
吉井が勤めていた工場の同僚に田中爽一郎
群馬の配達業者に斉藤友暁
東京の宅配業者に佐々木陽平
黒沢清が三本出た当り年。その順位。
こんなキヨシ映画を待っていた…
菅田将暉主演での黒沢清新作、なので時々発生する人気有名俳優主演で予算多めのキヨシ映画のパターンなのかなと勝手に想像してたんだけど、とんでもない怪作、というか観たかったキヨシ映画であり、傑作だった。ヤバい。冒頭から日常の続きのように画面が始まって、そのまま不穏なキヨシワールドにどっぷり浸かって、ニヤニヤし、ハラハラしっぱなしの2時間超だった。
とにかく菅田将暉がここまでキヨシワールドにハマるとは思っても無かった。しかも口髭を蓄えた佇まいはちょっと黒沢清みたいにも見えてきたし。そして菅田将暉だけでなく、キャストのほとんどが善人なのか悪人なのか曖昧な、タイトル通りに雲のように不定形な存在感を醸し出していて素晴らしく、怖かった。それが前半では菅田将暉の部屋を訪ねてくる荒川良々のシーンを筆頭に普通に存在する狂気としてサスペンスを盛り上げるし、後半はどこにでもいるような人が銃器を持って繰り広げる、ちょっと見たことがないけど、日本が舞台ならこれがリアルだよな〜というガンアクションに活かされていた。しかもリアルな人間像だけではなくて、助手の佐野くんという漫画的なキャラクターも出てきて、虚構としての飛躍の楽しさもバッチリだった。
廃工場、ビニール幕などいつものキヨシ映画印もふんだんに登場するし、スクリーンプロセスなどは今回演出的にも必然性があったりして、ちょっと集大成的な作品にも思えるほど隅々まで黒沢清的。なのにちゃんとアクションエンターテイメントとしても面白くて、役者も全員良い。で、前半も後半も怖くて笑えて楽しいという映画。最高だった!
面白さのベクトルを伝えるのが難しいが
面白い。でもアカデミー日本代表って映画ではない(笑)。それは選ぶ側がトンチンカンだと思うし、黒沢清も迷惑だろうと思う。これはアカデミーに選ばれて嬉しいというような作品ではなく、根本がVシネであり、いい意味でVシネであり、映画はアクションである、ということを現代でやる理屈をつけるための進化である。
菅田将暉は転売ヤー。PCの向こうにいるのは得体の知れない客だけではない。この導入は『回路』的でもあるが、ここで重要なのはゾンビのような有象無象の人間たちに追われるということである。むしろ空っぽな昆虫のような人間がエサにゆらゆら集まってサバイバルゲームを展開していくのを楽しむ映画で、その意味では『散歩する侵略者』に近いのか。とにかく集まった顔も知らぬ殺人者たちがおっちょこちょいで面白い。ある種『悪魔のいけにえ』的ファミリー感に西部劇が加わる面白さ。この連中の絶滅にいたる過程はもっと見ていたかった。
ということで、相変わらず痛ぶられる主人公を嬉々として描く黒沢清であった。
ちょっと・・・
怖かった〜、けど、なんかもう一回見たい気もする。ハマってしまった。
菅田さん、奥平くん、岡山さんの3人がキャスティングされてる時点で私得でしかなくて。予告見て怖そうと思いつつもかなり楽しみにしてた。
いやー、ひたすらに怖がってみてた。スリラー系はもともと得意じゃなくて、怖いとこは目を細めたり片耳塞いだりしつつ見てた。だから見終わってすぐはなんか疲労感もありとにかく怖かったっていう印象しかなかったんだけど、、時差がすこしあって、やっぱり面白かったかもってハマってる自分がいて。公式のSNSの投稿を遡って見てたり、パンフレット見たくなって翌週に何の迷いもなく買いに行ったり。まんまとハマってた。(パンフレットすごくおしゃれな作りなのでおすすめ)
前半の方が“ひとの怖さ”がありゾクゾクが強くて、後半の方が純粋なアクション。
みんな普通に壊れてる感じがちょっと面白くもあり、怖い理由でもある。
佐野くん良かったな。後半は彼に釘付けだった。いったい何者やったんや君は、みたいな。その答え合わせがないのもいい。ハマった理由はかなり佐野にある気がする。
あと、やっぱりお気に入りは三宅。あの退場シーンすごいこだわり演出って知ったうえでもう一回見たいな。
黒澤清監督の境地とみるかそれとも
星4をつけたのは本作は人を選ぶ点が非常に多くあると感じながらも、この作品ならではの光る部分について推したいと考えたためです。
ややニュアンス的な表現にはなってしまいますが、
「映画の"らしさ"を荒唐無稽に描き出すことによって"映画"を取り出す」
のような体感が残りました。
近年、稀有といって良いほどのコテコテの演出、台本、あらまし、20年昔で止まっているデジタルリテラシー。
そんな印象をこれでもかと受けるのが本作です。
この一方で浮上する視点が、「この映画そのものが映画本体」という見え方です。
この映画は観客に、ディズニーランドであるとも枯山水であるとも言わせることを許さない、針のような絶妙な存在に挑戦しているようにも感じられます。
個人的にはMナイトシャマランやデヴィッドリンチ監督作品などを好む方に本作をお勧めできるのではないかと感じました。
サバゲー
佐野くん…いったいなに?
菅田将暉が演じる平凡な青年・和也が、憎悪に満ちた集団狂気に巻き込まれていくサスペンススリラーです。劇中、和也は転売ヤーとして働いていますが、個人的にその仕事に対して「自分にはできないけど、なかなかおもしろい仕事だな」と思いながら観ていました。
物語の中で、奥平大兼が演じる佐野という謎めいた青年が登場します。彼の存在は、最後まで曖昧で、和也を助けるのか、それとも別の目的があるのかがはっきりしません。このキャラクターは、作品全体にさらなる不安感と緊張感をもたらし、観客の気持ちを掻き乱します。佐野は、和也の混乱をさらに深める要因となり、結局のところ「彼は一体何者なのか?」という問いが残ったまま物語は幕を閉じます。
『クラウド』は、終始謎が多く、特に佐野くんの正体に関しては最後まで解明されません。まさに「佐野くんは何だったんだろう?」という問いを抱えたままの映画です。
映画自体の評価は★3ですが、俳優陣の演技力に+0.5です。
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