「批評家絶賛や黒沢清印で“名作”。転売の如く」Cloud クラウド 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
批評家絶賛や黒沢清印で“名作”。転売の如く
『散歩する侵略者』『スパイの妻』などは好きだが、その他の作品はあまり性に合わず、セルフリメイク版『蛇の道』がつまらなくて、不信感募る黒沢清監督。
本作は米アカデミー国際長編映画日本代表に選出。キネ旬でも第4位。
これだけ見れば高い評価を受けたようではあるが…、きな臭さが。
一般客やレビューは今一つ…。
やっぱりね。いつもながらの玄人好み。
一般客は置いてきぼり、自身や批評家筋や熱狂的ファンにしか良さが分からない不可解黒沢ワールド。
工場勤めの青年が裏稼業の転売で独立し、さらなる成功と一攫千金を目論むが…。
転売業を通じてSNSの落とし穴を描く現代社会ならでの社会派サスペンスだったらもっと興味惹かれただろうに…。
黒沢清が描くのは、ありきたりな転売業やSNSの恐怖ではなく、人の業。
主人公から拡がる憎悪や集団狂気。
不穏。不可解な恐怖。成功夢見た新たなスタートがあっという間に崩壊していく…。
主人公・吉井が人の反感を買う様は度々あった。
工場社長から仕事ぶりが評価され、昇進の話が持ち掛けられるも、あっさり断り退職。
転売業の先輩からもパートナーとして儲け話を持ち掛けられるも、断る。
開幕シーン。とある業者から罵られようとも、商品を安く買い取る。(そしてそれを高額で転売)
郊外の湖畔に自宅兼仕事場を購入して恋人と共に引っ越し。稼ぎに没頭し、いつしか飽和状態。
東京から来たってだけで地元の若者から嫌がらせを受け、警察や宅配から不審。
アシスタントとして地元の青年を一人雇い、よく働くが、パソコンを勝手にいじったってだけで一方的に解雇。
人の感情など全く意に介さず。自分や金儲けの事しか考えていない。人から恨まれるのも自業自得…。
そんな主人公に天罰…いやいや、周りの連中こそもっとヤバかった。
おそらく先輩が発起人。SNSを通じて吉井へ恨みを持つ者たちを集める。
騙された業者は分かるが、何の面識や接点もナシ、日々の鬱憤をただ晴らしたい愚かな連中も。
最も恐怖なのは、工場社長。温和そうな人かと思ったら、妻子を殺したサイコパス。荒川良々が“悪々”に。
人の憎悪や暗部の恐ろしさを無情に描いてはいるのだが…、まさかこれを“リアル”と言うまい。
出てくる人皆、クズやゲスばかり。誰一人として感情移入など出来ない。
終盤はそんな連中の殺し合い。
何か、ただ意味も無く、バカ連中のドンパチ撃ち合い。
転売業とか人の業とかではなく、ただドンパチアクションやりたかっただけ…?
菅田将暉他キャストは熱演や怪演を見せるが、それも空回り。滑稽に見えてくる。
古川琴音が華添えかと思いきや、実は強か…!
儲け役は“スーパーアシスタント”の奥平大兼かもしれない。銃の扱いに長け、何処かの組織と繋がり、一体君は誰なのさ?
セルフリメイク『蛇の道』よりかはマシ。全然見れる。
だけど、何と言うか…。何を描きたかったんだか…。
転売業やSNSの恐ろしさ…? 人の恐ろしさ…? 地獄の入口…?
ハァ? はっきり言って中身ナシ。
これで名演出…? オリジナリティーある脚本…? 斬新な視点…?
これがキネ旬4位…? 米アカデミー日本代表…?
基準って何なのよ?
『侍タイムスリッパー』に笑い泣きし、『あんのこと』に衝撃を受けた自分は幼稚なの…?
こんな中身ナシの凡作を賞賛しないといけないの…?
批評家絶賛や黒沢清印で売れば高く評価される。劇中の転売の如く。
お偉そうな批評家どもも過大評価されてる黒沢清も大概にせぇよ!