「もしかして「ベイビーわるきゅーれ」をやりたかったのか?」Cloud クラウド tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
もしかして「ベイビーわるきゅーれ」をやりたかったのか?
転売ヤーが報復を受けるという話だが、どうしても「自業自得」に思えてしまい、主人公には、共感することも、同情することもできなかった。
自宅の前にネズミの死骸が捨てられていたり、バイクの通り道にワイヤーが張られていたり、バスの後ろの席に不審な男が座っていたりと、前半は、不穏な空気が高まっていく様子を、それなりに楽しむことができる。
一方で、自分の正体がネット上で暴かれそうになっていることを知りながら、何の対策も取らないまま漫然と暮らしていたり、謎の集団に追われている状況下で、仕入れた商品を運び出そうとしたりと、主人公の能天気さにはイライラさせられる。
ネット社会の闇というリアルな社会情勢を描いておきながら、クライマックスが死屍累々の銃撃戦になるという、非現実的な展開にも違和感を抱かざるを得ない。
しかも、ろくな防御姿勢も取らずに無闇やたらと銃を撃ちまくるだけの、ド素人による間の抜けたドンパチが延々と続くだけで、そのお粗末さには唖然としてしまった。
転売で被害を受けた訳でもなさそうなのに、元の職場の上司が、どうして主人公を殺そうとしているのかが謎だし、闇の組織に通じているらしい助手の若者が、どうして主人公を助けるのかもよく分からない。
上司は、妻子を殺したので、警察に捕まる際に主人公を巻き添えにしたかったのかもしれないが、それだと、転売ヤーに恨みを持つネット仲間との繋がりが説明できない。
助手は、ラストで、将来的な「金づる」として主人公を助けたように見えるのだが、単なる転売ヤーがそれほど稼げるものなのかという疑問も残る。
せっかく個性的な俳優を揃えたのに、それぞれの持ち味を活かせていないのも、残念としか言いようがない。
何よりも、悪質な転売ヤーが、ほとんど痛い目にあうこともなく、のうのうと生き残ってしまうという結末には、釈然としないものを感じてしまった。