かくしごとのレビュー・感想・評価
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不可思議なタッチで再構築されていく関係性
杏という女優には、非常に真っ直ぐな目線と、間違ったことにNOを突きつけるイメージが付随する。本作の監督はその部分を巧妙に活かしながら、主人公を危うい倫理観と母性の隙間へといざなっているかのようだ。日常世界に根を下ろしつつ、ラビットホールに陥っていく不可思議な展開がそこにある。彼女がつく嘘(かくしごと)にはちょっとにわかには信じがたいこと、そんなのバレるだろう、と思えるその場しのぎの嘘がいくつも見受けられるので、序盤は観ている側にとっても不安定な感じが付きまとうし、故郷帰りの新生活にもなかなか心の落ち着く場所が見出せない。しかしそんな空気が徐々に変わる。川を渡す一本綱の上を歩いているような感覚を覚える中、彼女のみならず、認知症の進む父親、血の繋がりのない訳あり少年との間で、嘘が真実を超えるというか、擬似家族的な風が吹き始めるところに見応えがある。特にラストシーンはハッとさせられる仕上がりだ。
物語としては底が浅いというのか…。
本作で描かれている「かくしごと」といえば…。
久枝の飲酒運転のこと、
洋一が親から受けていた児童虐待のこと、
千紗子が、海で亡くなったわが子の代わりにするため、洋一の出自を隠そうとしたこと…など、など。
世にありがちな「かくしごと」がいっぱい出ては来るのですけれども。
そのどれが、本作のレイシオ・デシデンタイ(訴えかけとしていちばん重要なもの)なのか、評論子には判然とせず、それ故に、映画作品としての訴求力にかけたように思われて、なりません。
本作の中で、やや大ぶりの「かくしごと」は、久江の事故を内密にしたことくらいでしょうか。
(しかし、飲酒運転根絶の啓発映画にしては、プロットを物語の最初に持ってきすぎ。)
おそらくは、本作としては、千紗子が海の事故で亡くした自分の子供の代わりに、友人が飲酒運転ではねた子供が、折よく記憶喪失らしいこと(また、不本意ながら面倒を看ている実父の孝蔵が認知症になっていること)を上手に利用して、自分の子供として丸め込んでしまおうということなのだとは思いますけれども。
しかし、それは、言ってしまえばあまりに「安直に過ぎ」て、評論子には、何とも評のしようがありません。
ミニシアターでの上映なので「質は保証済み」のアテで鑑賞した一本でしたけれども。
あに図らずや、評論子には、少しく残念な一本になってしまいました。
良作としての評価も難しかったと思います。評論子的には。
(追記)
オリジナル脚本ということではなく、原作がある作品なので、あまり大胆なデフォルメもできないのでしょうけれども。
それでも、どうせ「かくしごと」にするなら、最後の最後には、孝蔵が認知症を患ってしまっていることを上手に利用して切り抜ける―それが本作の最大の「かくしごと」になるのかと期待して展開を見守りました。
計画どおりにコトが運べば、千紗子にとっては邪魔者の洋一のまま父(?)をうまいこと片付けて、それでいて「実行犯」の父親・孝蔵は、認知症の故、心神喪失で刑務所送りは免れる―。
しかし、結果としては、さにもあらず。
頼みの孝蔵は、魔切りを構えて勇猛果敢に突進するも、DV男に一蹴されて、「試合終了」。
実行犯だから仕方がないとして、刑事責任能力に何の問題もない千紗子と洋一が罪を被るのであれば、そこには何の「かくしごと」もないことになってしまいます(洋一は、触法少年として少年法の規定に基づいて少年院送致?)。
もう少し、脚本を工夫するなどして、「親子でないもの」が「かくしごと」を媒介として「親子になってゆく」ということを描けなかったのでしょうか。
本当に、惜しまれます。
不思議な家族の関係から、本当の家族とは?は問いかける良い作品だった...
不思議な家族の関係から、本当の家族とは?は問いかける良い作品だった。展開的にあまり現実的じゃ無い設定から入ったため、気持ちは少しさめつつ、オチもなんだか分かってはいたが、終わり方が非常に良くて、3.5となりました。
杏さんはじめ、メイン3人の俳優さんが良くてエモかったです!
毒親からの救出
登場人物みんなちょっとずつ嘘をついているやつ。
主人公の友人が事故っても飲酒運転し続けたり、拓未に対して「罪を背負い続けることになる」とか他人事のように言ったり、こいつの脳みそどうなってんの?と思ったけど、そこ以外は面白かったです。
途中で終わるのかなと思ったポイントがいくつかあったけど、しっかり事件の結末まで描いてくれていてよかった。
こういう状況になったら、もうしょうがないよなーと。
認知症の父親がリアル。
「外出る好き」
今年140本目。
嫌な事は全部忘れるんですよ。
認知症万歳。
外出れば気持ちも変わる。
亀田先生の言葉本当にいい。
力を抜け。もっと。
好きな漫画のセリフで「力抜いとけよ、疲れちまうからな」。
奥田瑛二さんが撮影の何か月も前から認知症を演じる準備。食事制限だったり姿勢を合わせる。命懸けて演じるから見る者の心を打つ。
都合の良すぎる展開が少し興醒めする事が多かった。 奥田瑛二の芝居は...
都合の良すぎる展開が少し興醒めする事が多かった。
奥田瑛二の芝居はとても良かった。ボケちゃう事忘れられちゃう事への考え方はさとされてるようでセリフ周りは良かったが本当に都合の良い展開だけが非常に残念。技術的には可もなく不可もなく。みんなで魚釣りシーンの衣装(ブルー系)と背景(緑の木々.白い空)の色味は綺麗だった。あと海の中の杏のcutも距離感が良かった。
前半もやもや、後半ドキドキ、ラストは涙
前半はそれダメ、それダメ、それダメともやもやしながら鑑賞。行方不明の子供の所在を知ってるのに知らせなかったら、必死に捜索してる人達の労力や心情はどうなるのか…。もし仮に子供が虐待を受けている可能性があるのなら、警察に虐待の可能性を訴えたうえで知らせればいいのではと…。
後半は、認知症の父と偽の息子との生活がいい感じでまわり始めるも、この生活がいつ破綻するのかとドキドキしながら鑑賞。
ラストの裁判のシーンはえっ?えっ?えっー!?とまさかの展開に涙。
小説読んでからの
小説が良かったので、映画も鑑賞。杏さんの一般人離れしたスタイルを除けば、とてもいい映画、奥田瑛二さんが素晴らしい。頑固親父感から、不安で情けないおじぃちゃん感まで凄いリアルでした。認知症に、虐待と切な過ぎる題材ですが、絶望的な状況に差す光的な映画でした。
後半が良かっただけに…
人格って、個人が形作るものばかりではなくて、まわりとの関係性が浮かび上がらせるものなんだな、と思う。
自分が何者で、相手が誰で、どんな関係で、過去に何があって、何を覚えてて何を忘れて…。
ちさ子は認知症の父が「(都合の?)悪いことは忘れて」となじる。でも、拓未には「悪いことは思い出さなくていい」と言う。
かくしごとを土台にした家族が、悲喜こもごもありながら日々を過ごしている間、拓未のことがどう露呈するのだろうと心配しながら見ていた。急展開に驚きながらも、すごく説得力のあるラストだったと思う。
それだけに、細かい設定に無理がある気がして、とても残念…。
奥田瑛二と酒向芳の演技が素晴らしかったです。
ラスト1分。 某職員としては、何かあった時には公的機関に相談すべき...
ラスト1分。
某職員としては、何かあった時には公的機関に相談すべきと言いたい。自分達だけで抱え込むより、絶対に望みはあるから。
全体的にはカメラが定点で動きが少ない印象は受けたが、1カット目から良作の予感が滲み出たエモーショナルな画。関根監督は過去作の『生きてるだけで、愛。』といい、今作の主題歌に羊文学を選ぶところといい、エモに振り切ったら秀でそう。
久米田康治?じゃない!
2024年映画館鑑賞53作品目
6月22日(土)イオンシネマ新利府
ハッピーナイト1300円
21時30分の回
原作未読
原作のタイトルは『嘘』
監督と脚本は『生きてるだけで、愛。』の関根光才
是枝系社会派ヒューマンミステリー
杏にとっては『オケ老人』以来久々の主演映画
粗筋
東京の大学に在学中に妊娠し出産した息子をのちに海難事故で失った過去を持つ絵本作家の里谷千紗子
離れて暮らす父が認知症を発症した
7年ぶりに帰郷し再会した千紗子だったが父は娘を忘れていた
すぐにでも介護施設に預けて東京に戻りたい千紗子だったが空きのベッドがなかなか見つからず難航した
古くからの地元の友人の久江と居酒屋で飲んだ帰り道に偶然遭遇した虐待児犬養洋一を実家に引き取り実の息子のように育て始めた千紗子
久江から誘拐になると注意を受けるも虐待を繰り返す親元に帰すことになることなるため警察に引き渡すわけにはいかなかった
犬養洋一は記憶喪失の様子で自分の名前さえ覚えていなかった?
そこで千紗子は洋一に自作の絵本に登場する「拓未」と名付け自分の息子として自分の姓の里谷をつけた
認知症の祖父と他人の息子との共同生活が始まった
杏の代表作と言っても過言ではない
ブラーヴァ!
今更ながら背が高いことが若干気になるがガンダムやイデオンやエヴァンゲリオン同様徐々にそれも慣れてくる
さすが安藤サクラの父親
はじめは奥田瑛二とわからなかった
貫禄の名演技に賞賛の拍手を送りたい
中須翔真演じる里谷拓未の笑顔がかわいい
子役の熱演も高く評価したい
生真面目な千紗子に対して少々アレな友人の久江がちょうど良い緩衝役になっている感じ
彼女の存在もまたこの作品では重要でいるといないとでは大違い
ヤフコメ民やX民はなにかとけしからんと感じるキャラだろうが自分は子供の頃から模範的な人間ではないのでわりと受け入れることができる
流石に居酒屋でビール2杯(おそらくジョッキ2杯)を飲んで車を運転することに対しては「えー」とドン引きしたけど
おそらく2次会費用より安く済むから代行運転で帰りなさい
何かと相談役として登場する子供の頃から千紗子の父と親しい地元の医者役の酒向芳も良い
釣り好きで千沙子らを地元の川釣りに誘う
徐々に父と和解していく千紗子の姿も良い
重いテーマのオンパレードだがさほど重くもなく自分にはちょうど良かった
映画のタイトルは書く仕事と隠し事をかけているのだが久米田康治の漫画とは直接関係はないようだ
じつのところ隠していたのは千紗子だけでなく「拓未」もだったってのがこの作品のオチ
なぜあのタイミングで犬養洋一はカミングアウトしたのか
なぜもっと早くに公表しなかったのか
そして日本の検察は日本一のエリート集団といっても過言ではなく絶対に勝てると判断した案件だけを法廷に持ち込むわけでそれにもかかわらずあんなに無能なわけがない
その点では疑問点不満点はあるもののそこはやはり映画だから娯楽だから大目にみたい
星5の評価は揺るぎない
あそこで終わるのも素晴らしい
ちなみに犬養は奥田瑛二の妻の旧姓
偶然だろうか
安藤サクラは犬養毅の曾孫にあたるのはあまりにも有名な話だと思うが知らない人はいるのかな
ちなみに里谷拓未の下の本名は追手内洋一と同じ
これは偶然だろう
配役
不仲で疎遠になっていた父が認知症を発症し裸同然で地元を出歩いたため久々に帰省してきた絵本作家の里谷千紗子に杏
酒気帯び運転の久江の車で千紗子が夜間の帰り道に偶然保護され「里谷拓未」と名付けられ息子のように一緒に暮らし始めた虐待児の犬養洋一に中須翔真
厳格な元教師で妻に先立たれ山の上のポツンと一軒家に一人引っ越し魔を切るため日々仏像を彫り最近では認知症を患っている千紗子の父の里谷孝蔵に奥田瑛二
地元の役所で働く福祉課職員で千紗子の親友の野々村久江に佐津川愛美
シングルマザーの久江の息子の野々村学に番家天嵩
地元の医師で孝蔵の幼馴染の亀田義和に酒向芳
幼い娘を連れてマキと再婚した洋一の義父で日々虐待を繰り返した犬養安雄に安藤政信
再婚した安雄の暴力に支配されている洋一の実母の犬養マキに木竜麻生
千紗子を弁護する敏腕弁護士に和田聰宏
洗脳だと思い込み千紗子に刑を求める無能な検察官に丸山智己
千紗子の付き添いで拓未が診てもらった個人病院の受付の看護師に河井青葉
千紗子と久江が飲みに行った居酒屋の女将に池谷のぶえ
おもしろい映画じゃなくて、満足できる映画て感じかな
サブスクリプションでテレビやPCの画面で見るとたぶん途中でやめてしまうと思う。それほど地味な映画で、しかも、2時間を超える長い映画である。
でも映画館でみると、ひきこまれてしまうのは、やはり、出演者が名優ぞろいだからだろうと思う。
冒頭の発端と、残り10分の結末以外は、ほんとうに地味な日常がえんえんと続くだけだけど、どんな結末になるのか?と観る者をずるずる引きずり込み、まったく退屈させないのは、杏、中須翔真、奥田瑛二、酒向翔の演技力のたまものだろう。
二人の行く末は、非常に大きな困難が待ち受けているとは思う。でも、ふたりの絆、信頼、愛は、やすやすとそれを乗り越えてゆけるだろうと思わせる結末は、観客に救いを与えるのである。
二人、それぞれの嘘(かくしごと)は、傷ついたものどうしの、憐憫であり、打算であるけど、それはやがて、信頼と愛に昇華してゆくのである。
僕のお母さんは…
いやー最後の最後でガツンとやられちゃいました
なので点数アップです
予告を見ていたので少しは想像がついていたのだけど
杏の演じる母親は結構やべーやつ
いつかはバレるのはわかっていたはず
原作は「嘘」という題名なんでしたね
認知症は本人が一番辛いのかも
この作品も虐待、認知症、シングルマザー、過疎化と社会課題満載でした
ラストシーンが気になる人は是非観た方がいいです
辛くても忘れちゃイケない事もありますよ
日常を少しずつ忘れていく者と突発的な記憶喪失で忘れた(フリ)事を思い出してくる者、忘れたい失敗を取り戻したい者、それぞれが過去から逃れて未来をツクロウとする物語。
予告編である程度の内容は把握してたが、想像以上に重く太い作品だった。
誰もが上手く行ってる様でいて、安易にこのままでイイはずが無い、と作中の皆んなが思ってたはず。
上手い具合には、うまく行かない、でもそこにお互いの想いが顕れてくる事で、救われる氣がした。
良くも悪くもわかりやすい。
原作未読。飲酒運転で人を跳ねた地方公務員友人を庇うと言う口実で、亡くした息子の代理を手に入れたら、その子も虐待されてて満更でもない感じだったが、案の定色々大変だった話。
犯罪と介護で切羽詰まった杏の表情はかなりいいとこ行ってたと思うが、見ててなんか重く感じるのは顔立ちのせいか、、または本人が真面目なせいだと思う。いいかげんさや、ゆるさ、みたいな抜け感が無い。そんなふわっとした感じがこの先出てくると良いと思う。
子供の描きかたも話の進みをよくするためか少し優等生すぎたかも。
木竜麻生が虐待母、よいキャスティングだと思う。
あと初めて見たけど父の友人医者の酒匂芳がさりげなくムードがあり良かった気がする。
全体的に演技も話も明解で、テンポもよく、絵も美しくわかりやすかった事が逆に物足りなさを感じでしまった部分かも知れない。
行方不明の子供はレビューでも指摘あったが写真あちこち出回ると思うよ。
それぞれの分かれ道 Each Crossroad
人と人が一緒に住む、
特に家族というのは、
かかわりが深い分だけ、
影響も大きい。
職場や、趣味の集まりもしかり。
通常は良い影響が大半だろうけれど、
もちろん逆もある。
話の軸になるのは、
一人の小学生の男の子だけれど、
いくつかの家族の問題が、
縦糸と横糸のように絡まりながら、
今の世の中を浮かび上がらせる。
皆、弱く、同時に強かに、
生きようとしている。
正しいって、間違っているって、何だろう
不幸って、幸福って何だろう
と映画を見ながらグルグルと考えてしまった。
それぞれの登場人物に
あったかもしれない「if」が、
良い方向へ行ったかもしれない道が、
あったかもしれないと思ってしまった。
「お前はいいよな」
というセリフにドキッとした。
その言葉の裏に、
もう、引き返せない悲しみを見たからだ。
Living together with others, especially as a family, involves deep connections and consequently, significant influences.
The same goes for workplaces and hobby groups.
Usually, these influences are mostly positive, but there are, of course, negative ones too.
The story centers around one elementary school boy, but it weaves together various family issues, intertwining them like warp and weft threads, bringing today's society into focus.
Everyone is weak, and at the same time, cunningly trying to live.
What does it mean to be right or wrong? What is happiness or unhappiness? These thoughts kept swirling in my mind while watching the movie.
Each character might have had an "if" moment, a path that might have led to a better outcome.
The line, "You're lucky," caught me off guard. It revealed a deep, irreversible sorrow hidden beneath those words.
欠けたお母さんと歪んだ子供
色々な思いが巡った映画でした。
主演の杏さんが上手で、流石のお母さん役でした。
奥田氏も身につまされる演技でした。
友人の佐津川さんも、弱さを見せた良い演技だったと思います。
人間が忘れる事で起こる色々な事象を、見せてくれました。
自分の年を考えると、認知症は恐怖ですね。
ストーリーとしては、破綻に向けての日常を描いたもので、杏さんはとても難しい役でした。
「もしかしたら何とかできるのか」と思わせてくれたのは、杏さんの技量でしょう。
「そんなわけない」と言うのは簡単ですが、主人公に思いを寄せてもいいのではないかと思います。
ラストシーンはスッキリしてよかったです。
傑作。
先ずは、奥田瑛二さんと杏さんの演技力に、脱帽。
物語は重いです。重厚。
伊那ロケということで観ましたが、期待を裏切って、良い出来です。
ごめんなさい、期待してなくて。でも、良い意味で裏切られました!
杏さん、演技うまかったのね^^;(ごめんなさい。)
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