かくしごとのレビュー・感想・評価
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不可思議なタッチで再構築されていく関係性
杏という女優には、非常に真っ直ぐな目線と、間違ったことにNOを突きつけるイメージが付随する。本作の監督はその部分を巧妙に活かしながら、主人公を危うい倫理観と母性の隙間へといざなっているかのようだ。日常世界に根を下ろしつつ、ラビットホールに陥っていく不可思議な展開がそこにある。彼女がつく嘘(かくしごと)にはちょっとにわかには信じがたいこと、そんなのバレるだろう、と思えるその場しのぎの嘘がいくつも見受けられるので、序盤は観ている側にとっても不安定な感じが付きまとうし、故郷帰りの新生活にもなかなか心の落ち着く場所が見出せない。しかしそんな空気が徐々に変わる。川を渡す一本綱の上を歩いているような感覚を覚える中、彼女のみならず、認知症の進む父親、血の繋がりのない訳あり少年との間で、嘘が真実を超えるというか、擬似家族的な風が吹き始めるところに見応えがある。特にラストシーンはハッとさせられる仕上がりだ。
認知症の父親と虐待を受けていた少年
この結末でいいのだ
どちらかというと認知症の父親の介護の方がメインになってしまっている...
「そろそろ本当のお母さんを教えてくれ」が口癖だった私
6月に映画館で鑑賞。現在12月。今年度公開作品は約50本以上の鑑賞になりそうだが、
個人的には、今年1位か2位の映画となるだろうと思われるので、書いておく。
疑似母子関係の物語。少年側の視点でたまらなくなった。
私は実母に「そろそろ本当のお母さんを教えてくれ」と常日頃、口癖のように言っていた。
酷い息子だと我ながら思うが、経済的に苦しい生活を子供の頃にしていたし、
父は飲んだくれで酒癖が悪く、身体的暴力こそなかったが、家に金を入れず、
経済的虐待と呼ぶべきものはあり、毎日のように金融業者から返済の電話はかかっていた。
それと、酒癖の悪さからくる父の暴言、
反社的な生業をしているんだかどうだかよくわからない父の存在自体が、
精神的虐待のようでもあった。
母はというと、酷い事された記憶も無いが、
この苦しい状況を打破する行動は、はたから見て何もできていなかった。
我慢して耐えるしか選択肢は無さそうで、受け身な姿勢の母も憎くて仕方なかった。
子供の頃から思っていた。美人の容姿で、凛とした気概の、
「本当の母親」が突然自分の前に現れ、
私があなたの本当の母親なの、と打ち明けに来る日を。
でも自分は、その為に家出したこともなく、
映画の主人公のように、キャンプ中に川から落ちて行方不明になることも無く、
何も行動に移すことは無かったので、そんな本当の母親は当然現れなかった。
だから、杏が拾ってきた子に
「あなたは私の子供なの」「あなたは悪い人たちにさらわれてたの」
という台詞のくだりで、ぶわっと泣いてしまった。40半ばのおっさんが。
打ち明けられた子ですら泣いていなかったのに。
そこからはもう、夢見心地の気分。幸せな気分。
息子役の子の屈託のない笑顔、はしゃぎっぷり。投影した自分を見ているかの如く。
きれいで凛とした佇まいの母親の匂いや、抱かれ包まれた時の温もり。
想像していた通りの理想の母親。幸せを感じれば感じるほど、
その幸せは、ずっと続かないんじゃないかという不安がよぎる。
そしてその不安は現実に変わる。
早くサブスク化してほしい。何回でも観たい。安藤政信が登場するまで、繰り返し何回も。
おじいちゃん役の奥田英二さん、とんでもなく良かった。
若い頃は不倫相手の男役みたいな、石田純一みたいなキザな役ばかりの印象だったが、
こんな素敵な認知症のおじいちゃんになれるとは。
良かった演者
◎奥田瑛二
○杏
○中須翔真
○酒向芳
沢山の隠し事が増えてく内容で中盤までは良かったですが、最後の隠し事...
物語としては底が浅いというのか…。
本作で描かれている「かくしごと」といえば…。
久枝の飲酒運転のこと、
洋一が親から受けていた児童虐待のこと、
千紗子が、海で亡くなったわが子の代わりにするため、洋一の出自を隠そうとしたこと…など、など。
世にありがちな「かくしごと」がいっぱい出ては来るのですけれども。
そのどれが、本作のレイシオ・デシデンタイ(訴えかけとしていちばん重要なもの)なのか、評論子には判然とせず、それ故に、映画作品としての訴求力にかけたように思われて、なりません。
本作の中で、やや大ぶりの「かくしごと」は、久江の事故を内密にしたことくらいでしょうか。
(しかし、飲酒運転根絶の啓発映画にしては、プロットを物語の最初に持ってきすぎ。)
おそらくは、本作としては、千紗子が海の事故で亡くした自分の子供の代わりに、友人が飲酒運転ではねた子供が、折よく記憶喪失らしいこと(また、不本意ながら面倒を看ている実父の孝蔵が認知症になっていること)を上手に利用して、自分の子供として丸め込んでしまおうということなのだとは思いますけれども。
しかし、それは、言ってしまえばあまりに「安直に過ぎ」て、評論子には、何とも評のしようがありません。
ミニシアターでの上映なので「質は保証済み」のアテで鑑賞した一本でしたけれども。
あに図らずや、評論子には、少しく残念な一本になってしまいました。
良作としての評価も難しかったと思います。評論子的には。
(追記)
オリジナル脚本ということではなく、原作がある作品なので、あまり大胆なデフォルメもできないのでしょうけれども。
それでも、どうせ「かくしごと」にするなら、最後の最後には、孝蔵が認知症を患ってしまっていることを上手に利用して切り抜ける―それが本作の最大の「かくしごと」になるのかと期待して展開を見守りました。
計画どおりにコトが運べば、千紗子にとっては邪魔者の洋一のまま父(?)をうまいこと片付けて、それでいて「実行犯」の父親・孝蔵は、認知症の故、心神喪失で刑務所送りは免れる―。
しかし、結果としては、さにもあらず。
頼みの孝蔵は、魔切りを構えて勇猛果敢に突進するも、DV男に一蹴されて、「試合終了」。
実行犯だから仕方がないとして、刑事責任能力に何の問題もない千紗子と洋一が罪を被るのであれば、そこには何の「かくしごと」もないことになってしまいます(洋一は、触法少年として少年法の規定に基づいて少年院送致?)。
もう少し、脚本を工夫するなどして、「親子でないもの」が「かくしごと」を媒介として「親子になってゆく」ということを描けなかったのでしょうか。
本当に、惜しまれます。
不思議な家族の関係から、本当の家族とは?は問いかける良い作品だった...
不思議な家族の関係から、本当の家族とは?は問いかける良い作品だった。展開的にあまり現実的じゃ無い設定から入ったため、気持ちは少しさめつつ、オチもなんだか分かってはいたが、終わり方が非常に良くて、3.5となりました。
杏さんはじめ、メイン3人の俳優さんが良くてエモかったです!
毒親からの救出
「外出る好き」
都合の良すぎる展開が少し興醒めする事が多かった。 奥田瑛二の芝居は...
都合の良すぎる展開が少し興醒めする事が多かった。
奥田瑛二の芝居はとても良かった。ボケちゃう事忘れられちゃう事への考え方はさとされてるようでセリフ周りは良かったが本当に都合の良い展開だけが非常に残念。技術的には可もなく不可もなく。みんなで魚釣りシーンの衣装(ブルー系)と背景(緑の木々.白い空)の色味は綺麗だった。あと海の中の杏のcutも距離感が良かった。
前半もやもや、後半ドキドキ、ラストは涙
小説読んでからの
後半が良かっただけに…
ラスト1分。 某職員としては、何かあった時には公的機関に相談すべき...
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