「ぼくのお母さん」かくしごと ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
ぼくのお母さん
予告から想像していた内容ではなかったです。
というのも、千紗子(杏)と久江(佐津川愛美)の倫理観が常識はずれというか
意表をつかれたんですよね。
なので、冒頭の話の持って行き方については、ちょっと入り込めないというか
リアリティは追求しちゃいけなさそうだ、と思って観ました。
千紗子は拓未(中須翔真)と出会うことで、おそらくは自身の過去のトラウマ、
つまり、若くして子どもができて結婚し、海で子どもを亡くしてしまうという
この消せない記憶を塗りかえる、あるいは記憶領域から極小化していくために
拓未を子どもとして育てようと、一緒に生きていこうと考えたんじゃないかなと思いました。
千紗子がその思いを強くしていったのは、認知症の父親孝蔵(奥田瑛二)の存在であり、
孝蔵の自分への想いを思いがけず知ることから、家族への思慕は深くなっていったものと思われます。
後半の重要な場面である、拓未(本当は洋一)の父親安雄が会いに来るところでの
杏、拓未、孝蔵の想いが一緒になって、安雄殺害(事故にも近しいとは思います)に至ったのだろうと
捉えました。
私はてっきり、ここで映画が終わるのかと思いきや、
裁判シーンがラストで展開され、
そこでの拓未(洋一)のセリフ「ぼくのお母さんはあの人です」と千紗子を指さしたときの表情、
それから千紗子の表情が、この作品の伝えたかったこと全てだと理解しました。
だから、最重要なわけですね。この裁判シーンが。
実にヘビーな作品ではありますが、
鑑賞後感は悪くない、観て良かったと心から思えた作品です。
※個人的な意見として、佐津川愛美の演技はちょっと鼻につきました・・・
集客はよろしくなさそうですが、こういう映画が多くの方み観られるようになってほしいです。