劇場公開日 2024年6月7日

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「幹は良いが、枝葉の部分が杜撰過ぎ」かくしごと 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5幹は良いが、枝葉の部分が杜撰過ぎ

2024年6月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今週公開の本作と“異国日記”、いずれも実子でない子供を育てるお話。親類の子と犯罪という背景はかなり異なるが、実子でない子との関係性というテーマが重なる作品がたまたま同日公開。

どちらも楽しみにしていたので、“異国日記”を公開初日、こちらを2日目に鑑賞した。

【物語】
絵本作家の千紗子(杏)は、7年間断絶状態にあった父孝蔵(奥田瑛二)が認知症による徘徊で周囲の人に迷惑を掛けたという連絡を受け、仕方なく山奥の実家に帰省する。介護支援認定を取り付け、介護施設に入れるまでの一時的同居と考えていた。

ある日、介護認定でも世話になっている旧友久江(佐津川愛美)と飲みに出掛ける。その帰り、久江の運転する車が少年(中須翔真)と接触する。久江は飲酒運転であったため、救急車を呼ぶことを躊躇い、千砂子の家に連れて帰り手当てする。その際、体中あざだらけであることに気付く。あざは虐待によってついたと思われた。翌朝少年は無事に意識を取り戻すが、記憶を失っていた。

ニュースでは東京から来た家族の子供が事故現場付近で行方不明になっていることが報じられていた。しかし、両親の言動が甚だ不自然であり、少年の虐待を確信した千紗子は自分が少年を守ることを決意。少年に自分が母親だとうそをつき、実家で一緒に暮らし始める。

【感想】
物語の導入部分から、リアリティー不足で物語に没入できなかった。
物語の幹となる「法を犯しても虐待される少年を守りたい」という衝動は、最初は不可解でも劇中で明かされる千紗子の過去からあり得ると思えた。 しかし、車で撥ねた少年を家に連れ帰る幼稚な行動はいくら何でもあり得ないだろう。いくら動揺したとしても。 誰もいない山道なのでそのまま逃げ去ることは頭をかすめるだろうが、連れて帰ってあとどうするつもりだったのか? 救急車を呼びたくない説明はあっても、連れて帰ってどうするつもりだったか納得できる説明は無し。

欲しかったのは虐待の痕を持つ少年との出会いであって、交通事故に拘る必要は無いのだから事故現場のリアリティーを高めるアイデアが浮かばなかったのなら、別の想定を考えればもっとマシな設定はいくらでも有るだろうと思ってしまう。

さらに千紗子が少年を匿う決意をしたなら、行方不明現場から遠く離れた場所に引っ越すという思考が普通だろう。 小さな集落でもあり、行方不明の少年と結び付けられるリスクが高過ぎる。要介護の父親がいるために村から離れることができないということにしたいのなら、「遠くに離れたい、でも父親を見捨てるわけにもいかない」という葛藤だったり、「早く父親を施設に預けて、遠くに離れよう」という千紗子心情描写が有って然るべき。

他にも少年の学校はどうした?(全く触れられず)、 ニュースで報道された少年の事故が“ロープ”を使ったバンジージャンプ(ゴムじゃなきゃおかしいだろう)、・・・
リアリティーを考えていないというよりは、これでも考えたつもりという杜撰さが目に余る描写の数々。

役者が奮闘して話の幹の部分だけイイ話にしても、枝葉の部分がここまでいい加減だとお話に入って行けません。

役者は頑張っていたので、幹の部分は悪くなかったのでなおさら惜しい。結末も“異国日記”より分かり易い感動が用意されているので、枝葉の部分を真面目につくれば良い作品になっていたと思う。

宣伝では千紗子と虐待された少年の関係性のみ紹介されているが、実はもう1つ認知症の父親と家族の関係が重要なテーマになっている。父親を演じる奥田瑛二の認知症ぶりが凄かった。最近は娘安藤サクラの名優ぶりが顕著だけど、お父さんも負けずに頑張りました(笑)

嫌いでも切れない血の繋がりと、血の繋がりが無くとも生まれる愛情と強い絆。リアリティー欠如の欠陥に目をつぶれれば・・・

泣き虫オヤジ
Mさんのコメント
2024年6月18日

俳優さんたち、よかったですね。

M
uzさんのコメント
2024年6月12日

飲酒運転も事故もなく、普通に見つけて保護でよかった気がします。
息子を亡くしてる件も含めて、通報しない“言い訳”をしつこく重ねられてるようで。
かと言って、納得できるほどではないのでなおさら、でした。

uz