劇場公開日 2024年6月7日

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「記憶と認知の物語」かくしごと ヨークさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0記憶と認知の物語

2024年6月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

忘れられなくて苦しめられる記憶と、忘れていなかったから救われた記憶の物語。

忘れた振りをしたり、忘れたと思い込んでいたけどしっかり刻み込まれていたり、曖昧なようでふとした瞬間に鮮明に思い出すこともある、記憶。

そんな様々な記憶の積み重ねによって相手をどう認知するかも変わる。イメージや印象がガラリと変わるのも記憶の集積によるもの。

記憶と認知という人の持つ根源的能力によって3人の人間関係が波のように変容していく姿を描いたドラマ。

ひとつの出来事をとってみても、その見方や光の当て方によって見え方が異なり、残される記憶も異なってくる。たったひとつの角度からだけでは見えないものもある。そんなことをやわらかく教えてくれる作品。

タイトルからして物語の仕掛けには早々に気付くけれど、それ自体は核ではなく、それがどう作用するのかがこの映画の肝でありそれは最後まで観ないと分からない。

認知症や児童虐待というテーマを下敷きにはしているけれど、記憶と認知によって人の見方は聖者にも悪魔にもなるという危うさと救いを描いた物語。

観終わったあと、しっかりと噛み締めたくなる作品でした。

ヨーク