「フランス人の目を通した日本の名所と国民性が新鮮で、会話も詩情豊か」不思議の国のシドニ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
フランス人の目を通した日本の名所と国民性が新鮮で、会話も詩情豊か
スカーレット・ヨハンソンがビル・マーレイと共演した「ロスト・イン・トランスレーション」(2004)、ジュリエット・ビノシュ主演作「Vision」(2018)、アリシア・ヴィキャンデル主演作「アースクエイクバード」(2019)など、欧米のスター女優が来日してロケ撮影した映画が時折作られるが、本作「不思議の国のシドニ」はそうした過去作に比べて最も観光気分を味わえる。イザベル・ユペールが演じる作家シドニは出版社に招かれて訪日し、編集者・溝口(伊原剛志)に案内されて京都、奈良、香川県の直島などの旧跡や景勝地を訪れ、そうした景観の一部となるかのようにしばしたたずむ。
フランス人女性監督のエリーズ・ジラールは、デビュー作「ベルヴィル・トーキョー」の日本公開に合わせて2013年に初来日した際の体験や印象を本作の出発点とした。日本人の態度や仕草など誇張して描かれた部分も含め、外国人の目というフィルターを通して映像として提示されることで、見慣れていると思い込んでいた風景が新鮮に映ったり、日本人のこういうところは確かに独特かも、と気づかされたりした。
監督の第2作「静かなふたり」がPrime Videoにあったので参考のため鑑賞したが、語り過ぎず含みを持たせた会話が詩情豊かで、本作に通じると感じた。
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