劇場公開日 2024年12月13日

「映画愛にも溢れた世界を我々は一緒に旅する」不思議の国のシドニ 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5映画愛にも溢れた世界を我々は一緒に旅する

2024年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

知的

萌える

 邦題の通り、何とも不思議な映画であり、過去の映画と日本に対するオマージュに溢れた作品。本作で日本を旅するのはシドニという役名のフランスを代表する国際派女優のイザベル・ユペールです。見知らぬ国、日本の大阪から京都、奈良、そして直島を旅するその様子はまるで少女のようであり、まさに不思議の国の“アリス”のよう。

 作家であるシドニを日本で迎え各地を案内する、伊原剛志演じる編集者の名前が“溝口健三”というのも映画ファンの心をくすぐります。「雨月物語」(1953)などの溝口健二監督へのオマージュは明らかであり、大阪の街を一望するカメラがゆっくりとパンしていく冒頭から、直島の海を捉えたショットなど要所に溝口作品を想起させ、京都、奈良の寺社仏閣でのシーンや、老舗旅館の階段や廊下、部屋の畳には、「東京物語」(1953)などの小津安二郎作品にまで思いを馳せさせます。

 重くなりがちなテーマでありながら、シドニのチャーミングさと健三の無骨さがユーモアとなり、映画愛にも溢れた世界を我々は一緒に旅することになります。

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和田隆