バティモン5 望まれざる者のレビュー・感想・評価
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日本人には刺激的なフランスの姿。
ミシェル・ウエルベックの描く近未来みたいに、そのうちムスリムの大統領誕生、、、の前にまずはムスリム系女性市長誕生への道筋を描くのかと思いきや、もっと足元で起こっているリアルタイムの怒り炸裂エピソードだった。
冒頭からこれってドキュメンタリー映像?と思わせる。
クリスマスイブという欧米限定の聖夜を「商業的に祝う夜、ってことで大いに祝っていいじゃない?」という日本人にも相通じる目線で楽しもうとしているムスリムの移民たちを襲うまさかの仕打ち。
それなりの犠牲と、諦めと理性に満ちた若きヒロイン。
なので最悪の事態は回避されて、後味は悪くなかったです。
あと音響、良かった。
マクロン大統領の人気のなさが透けて見える。オリンピック、平穏に開催されるのだろうか。
蛇足ですが、自分だったら「5分で出ていけ」と言われたら何を持ち出そうか、、、とついつい必死で考えてしまった。
期待度○鑑賞後の満足度◎ 壮大且つ卑小な「市民生活の改善」という美名の下に行われる人間駆除劇。映画としての力強さに感心した。
誰がブラズの愚行を笑えるのか
自分の国じゃない所で暮らすのは大変だけど、自分の国以外の人を受け入...
現代日本の問題としても捉えるべき作品
中東などからEU圏を目指した難民を、ポーランドとベラルーシが押し付け合うという凄まじい蛮行を描いた「人間の境界」も凄い映画でしたが、フランスに正式に移民として渡って来た人たちですら、フランス国内で不当な扱いを受けていることを赤裸々に描いた本作も、実に驚くべきお話でした。
題名の「バティモン5」というのは、労働者階級の移民の人達が数多く暮らすパリ郊外の一角の通称のことらしいですが、ここに暮らす移民2世のアビーと、臨時市長になったピエールの対立を軸にしたお話でした。同じ移民でも、副市長として完全に体制側に立つ人もいるし、要職に就いていなくても体制側に順応する人もいる。一方アビーのように市長選に立候補して正面から状況を改善しようとする人もいるし、さらにはアビーの友達以上恋人未満のブラズのような過激派までいて、それぞれのキャラクターに明確な役割があてがわれていて、その点フランス国内の移民問題の構図が分かりやすく描かれていました。
勿論臨時市長となったピエールの側にも、街の治安を維持し、荒廃した地域を再生するという役割を果たすという目標があり、一概に悪者という訳ではない描き方がされていたところがミソ。その点「人間の境界」ほどの直截的な非人道性はないものの、マンション火災の発生を奇貨として数時間以内に住民を強制退去させると言った手法は、明らかにやり過ぎ。その結果ブラズのような過激な行動に訴える者も出て来ることになり、ピエールの目標はむしろ達成されないことに。
結論として、行政サイド、移民サイドそれぞれの利害関係者のバランスをどのように成立させるのかを、観客に考えさせるというのが本作の意図だったのでしょう。
最近我が国でも、安倍政権以降の移民受け入れ政策への転換により、直近10年で在日外国人の数は200万人程度から300万人以上と1.5倍程度に急増しています。そしてバティモン5的に移民の人達が多く暮らすエリアというのが形成されており、元からの住民との間で軋轢が発生していることがたびたび報じられています。これを如何に調整するのかは、国であり自治体でありの責任ですが、我々1人1人にも街の平安や個人個人の自由を維持する責任の一旦があると思われます。そうした意味で、本作は現代日本の問題を描いた作品だったとも言え、実に意義深いお話だったと感じました。
そんな訳で、本作の評価は★4とします。
これが現実。ただただ怖い。
花の都パリの行政を告発する厳しい作品
2019年の「レ・ミゼラブル」に続くラジ・リ監督作。
自分的には演出過多でドラマチック過ぎた印象。ドキュメンタリーな前作のナチュラルな感動には遠く及ばなかった。
パリ郊外、移民が多く暮らす一画・バティモン5。再開発に向け老朽化した団地から移民たちを一掃しようとする市長、行政と住民たちの衝突。
同じ日に「関心領域」を観たが、ナチスドイツの親衛隊あるいは強制収容所で働く者たちと今作の行政に違いは無かった。ただただ任務に忠実で善悪のものさしは無かった。
移民に対する行政の理不尽な横暴を告発するが如き今作。果たしてパリ市民はどうとらえているのだろう?
市長を支持する人も少なくないはず。
まあ、外国人を恐れるチキンな自分には何も語る資格はない。自分のようなクソが移民を拒絶する日本を作った。外国人を安価な労働力としてしか受け入れない日本を作った。
君にいいわけしたねー
『レ・ミゼラブル』と同じように、
安易に分断の善悪を分けない、
考える選択肢を与えるシナリオ。
ブラズの気持ちはわかる、
だが、
自分ならどういうスタンスを取るだろう。
立場が意見を作る。
自由な立場からは自由な意見、
市長は市を経営する立場でもある、
なので、
市長としての考え、
意見に基づいて政策を実行する。
ブラズのセリフ
「ひとを侮辱し続けるとどうなるか、思い知らせてやる」
ブラズの手を最後まで離さないラジ・リ、
ブラズが受けた心の傷を、
カサブタにするのも、
そのまま血を流し続けるのも、
無かったことにするのも、
観客の関心領域だ。
メディアのニュースでは犯罪者として報道されるのだろう。
以下、
『レ・ミゼラブル』鑑賞当時の感想。
→
『ぼくらの7日間戦争』風に観るか、
『デトロイト』や『シティ・オブ・ゴッド』風に観るか、
その岐路にある@フランス、@世界中、
というように観客に選択肢を与えるように優しく描いてある。
ゴム弾を子どもに命中させて、
オロオロするオトナたち。
子どもたちにとっては、
めんどくさいホウキは折る、
うるさいチリトリは壊す、
オトナなんてその辺に転がってるホウキやチリトリと変わらない。
なぜなら、ゴミ以下の扱いを受けている、
または、いたから。
そんな子どもたちもオトナになると、
髪を切って、もう若くないさと言い訳をしたのは、昭和のはなし。
時計じかけのオレンジのディムは警察官、
ワンダラーズのテラーは海兵隊、
ガキ帝国のポパイは機動隊、
三島と一緒に900番教室にいた奴らも、
多くはサラリーマン。
物理的受け皿と、
精神的寛容さがあった。
ノスタルジーで語るのではなく、
捨てちゃいけなかった事を、
サルベージしよう。
クニ全体がもう若くないさと、
言い訳をしても、
対岸の火事はすでに足元まできている。
君も観るだろうか、
いちご白書を、
君も唄うだろうか、
レ・ミゼラブルを。
解決策が見えてこない
華やかなイメージのパリの中で、移民の人達が住むバティモン5と呼ばれる一画
そこを取り壊そうとする行政と住民達の争いがテーマの作品
まだ普通に住んでいる人達がいるのに火事をきっかけに取り壊しに踏み切る市長
良い人に見えた市長も権力を持つと変わるものなのでしょうか
確かに住み続ける事は危険かもしれないけど、それなら新しく住む場所を提供するのが当然
いきなり警察が来て5分で出て行けとは
家財道具を窓から投げるシーンは観てて辛かったです
寒いイヴに住宅から追い出されて、その追い出した人達は楽しくクリスマスパーティ、そりゃキレたくもなります
でも暴力では何の解決もできず、たくさんの人を傷付け、残るのは後悔と虚しさだけ
移民問題っていうと日本人には身近な問題として考えにくいけど、日本にもバティモン5のような地域はあって、ほとんどの人は差別という認識はないと思うけど、そういう地域がある事自体が日本もフランスと同じかもしれません
何の明るさも見えないラストでズシンと心に重いものが残る作品で考えさせられました
知らなかった監督さんのちょっと話題の映画。予定では今日『碁盤斬り』...
「希望は?」「そこに無ければ無いですね」
・・・と、ダイソーの店員に返されそうな話でした。「人間の境界」でさえ一縷の希望が見えていたというのに。
一部批判があるようにパリのネガティブなイメージばかり植え付けてしまう面は否めないものの、フランスが「自由・平等・博愛」の精神に反して、黒人やアラブ系移民はもちろん、混血やフランス生まれフランス育ちの二世三世の移民でさえ排除し続けてきたのは事実。
パリはニューヨークなどのように特に移民の多い街ではあるが、地区ごとにインド人が多い地域、黒人が多い地域、ユダヤ人が多い地域など、地元民とは別れていて混ざってはいない。
何年働いてフランスに税金を納めても、白人と平等な権利が手に入らない移民達のフラストレーションは想像するにあまりある。
あの後の市長の選択はどうなったのか、それは今度のパリ市民に委ねられているのだろうか。
移民問題 inフランス
自由なフランスの闇
他人事でない
重い現実。アビーのセリフは今の我々がどう考えるか
文句なし!重いテーマだが、観て良かった。
パリ郊外団地の移民家族と行政との対立はフランス国内だけでなく、今の
日本の未来の問題として目に焼きつけた。
アビーのセリフが一言も聞き逃せないほど、我々に突きつけられた気がした。
今回もラ・ジリ監督は前作に続いて、我々観客にこの作品を観て貴方は何を
思うか問いかけられている。
監督の作品は今作、前作のレ・ミセラブルに続いて行政vs市民・移民の対立構造を
見事に分かりやすく描いている。
今の日本社会にもリンクしそうな今作のテーマだった。
見ごたえはあったし、年間ベスト10候補に入れたい。辛いけど、おすすめしたい
作品です。
どちらの言い分も分かるが
法律系資格持ちのもう一つの見方(参考までに)
今年197本目(合計1,289本目/今月(2024年5月度)31本目)。
(前の作品 「三日月とネコ」→この作品「バティモン5 望まれざる者」→次の作品「」)
ストーリー自体はフランス映画では、古典的フランス映画(余韻を残すタイプの映画)ではなく、フランス特有の移民問題を題材にした、いわゆる移民当事者と行政、地域住民の対立ほかを描く(一応、架空の都市等にはなっていますが)ストーリーです。趣旨的にフランスがテーマになることが多いです。
映画としては架空の物語ではありますが、フランスでこの問題、また後述するように多くの方が疑問に持たれている「地方行政が勝手にあんなことできるの?」といった観点でみました。後者については私が知る限りで書いておきます(後述)。
ストーリーとしては架空ではあるものの、今フランスで起きているこうした問題を背景にしている点ではまったく架空とも言い難く、その問題提起の映画という観点では評価は高いですが「なぜ行政がそこまでいきなりできるか」が示されておらず混乱するのかな(何か、フランスが独裁国家のように見えてしまう)といったところです。
ただこの点は、フランスの歴史まで知らなければならないので、採点上考慮せずフルスコアにしました。なお、関連知識は以下です。
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(参考/フランスの「デクレ」、地方行政の公権力行使について)
フランスでは、アルジェリアとの紛争があった1955年に「(国家)緊急事態法」というものが定められ、地方行政に大きな裁量権が認められるようになりました(この地方の行政の公権力の行使を「市町村デクレ」といいます(「デクレ」というのは「宣言」というような意味))。
身近なところでは、コロナ事情の中で「マシに運用されていた時期」は確かにあります。一方、フランスは自由平等をうたう国ですが、だからこそ法の縛りが少ない国ではあったものの、この「市町村デクレ」により「13歳未満の子の理由のない23時以降の外出禁止」といったものが制定された都市もあります。趣旨は理解できますが、そもそも道徳的に23時以降に理由もなくうろつくこと自体が普通ではないので、「そんなものを発布して何がしたいのか」という批判を浴びたことがあります。
そしてこの映画でも描かれている「外国人の排斥問題」についても、人権を考慮しない地方行政の「市町村デクレ」の連発で当事者が追いやられたのは事実です。一方、こうした連発が許されている一方で、それを不満と思う市民(国民)は、日本より多く地方行政を訴える(日本でいう行政事件訴訟法)門戸が広く(後述)、「連発もされるが、広く受けつけることであまりも変なデクレは裁判所で取消されるし、裁判所からこうした行政に警告がいくシステム」ができあがっています。日本の行政法の発祥はドイツで、ドイツとフランスは隣国どうしですが、フランスはこれとは別に行政法が発達し、それが良くも悪くも今のフランスにあり、また救済の道も広くあることから、一概にどちらが上、下とも言えないように思えます。
映画で描かれている通り、フランスはこのような歴史があるため、行政がなかば警察や司法のように無茶苦茶な行動に出ることがありますが、同時にそれを争う裁判も幅広く保障されているのが特徴です。
(※フランスにおける、行政への裁判(日本の行政事件訴訟法)と日仏の違い)
日本では「原告適格」と「訴えの利益」が厳しく問われます。
(原告適格) 沖縄のサンゴ礁が荒らされているので行政訴訟で争いたいが、それを知った大阪市民が訴えたケース
→ 「どうであろうがあなたには無関係でしょう?」と門前払いを食らうケースです。「無関係な人は来ないでね」です。
(訴えの利益) 土地の収用(土地収用法)に不服があっても、一度収用委員会が収容を決めて、そこに建物を建てたことに元所有者が不満があるような場合
→ すでに所有権がうつって、建物もたっている(立ち始めている)以上、それの取消しを争う裁判は仮に訴えを認めて勝訴させても建物が消えるわけではないからダメですよ、というもの(昭和48.3.6)。
日本ではこの2つが厳しく問われるので、行政事件訴訟法における原告の勝訴率は10%あるかないかですが、フランスは「裁判はちゃんとやるが、とりあえず不服がある人はきてください、書類さえ書けば裁判はやります」という立場に立ちます。
責任も平等
移民労働者達が暮らすパリ郊外のバティモン5で巻き起こる強硬派新市長による弾圧と反発の話。
前市長の急逝により臨時市長にまつりあげられたピエールが、自分のことしか考えず勝手な主張でやらかした市民を制裁すべく取り締まりを断行し巻き起こっていくストーリー。
確かに取り締まりにしても新条例にしても急だしやり過ぎ感はあるけれど、「厳しくとも法は法」はその通りだし、そもそもスラムになった理由はなんでしょうかね…。
アビーの言いたいこともわかるけれど、自責というものがこれっぽっちも頭に無く、自分達で自分達の首を絞めていることに気づいていない人達が多過ぎる。
子どもにぬいぐるみのことを説教していた親がいたけれど、それと同じことなんですけどね…。
行政、市民どちらの目線でみても、胸くそ悪さや憤りを感じるところが多い作品ではあったけれど、これも移民問題に端を発するわけで、とても考えさせられるし面白かった。
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