「【フランス地方自治行政の理不尽な仕打ちに対し、10階建ての古びた団地”バティモン5”に住む移民居住者たちが受難に耐える姿や、住民達の怒りが炸裂する姿をラジ・リ監督が熱くも悲しく描き出した作品。】」バティモン5 望まれざる者 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【フランス地方自治行政の理不尽な仕打ちに対し、10階建ての古びた団地”バティモン5”に住む移民居住者たちが受難に耐える姿や、住民達の怒りが炸裂する姿をラジ・リ監督が熱くも悲しく描き出した作品。】
ー ラジ・リ監督は、シリアを始めとした海外からの居住者が多数を占める”バティモン5”と呼ばれるパリ郊外の都市、モンフェイルにある団地で暮らしていたそうである。
そして、地方自治の腐敗を数々、目にして来たそうである。-
◆感想
・冒頭、古びた団地が爆破され、再開発計画のスピーチをするはずの市長にまで爆風が襲い掛かり、市長が心臓発作で急死するシーンから今作の流れが予想できる。
・有色人種のフランス人、アビー(アンタ・ディアウ)は”バティモン5”の住人で、移民たちのケアスタッフとして働いている。
一方、新市長となった小児科医でもあるピエール(アレクシス・マネンティ)は、今までの旧弊的な行政を立て直したい、”バティモン5”エリアを復興したい、と思っている。
ー だが、そんな彼も思うように行かない”バティモン5”の再開発が進まない状況に焦りを隠せないのである。-
・アビーは、それでも行政の奢りと怠慢に怒りを覚えたアビーは、ピエールに対し”次の市長選に立候補する!”と挑戦状を叩きつけるのだが・・。
ー ココから、市長選の流れになると思っていたのだがなあ・・。-
・だが、ピエールのクリスマスイヴの急な団地からの退去命令が、それまで市の行政の対応の遅さに苛立っていた住民たちの怒りを買って行く流れが、観ていてキツイ。
団地の急な階段を、エレベーターが何年も故障しているため手で冷蔵庫を持って運び出そうとする家族や、ベランダからマットレスや小物を投げたり、紐で吊るして降ろしたり・・。
■以前から行政に対し不満を抱いていたアビーの友人であるブラズは、到頭怒り心頭に達し、市長が不在のクリスマスイヴの準備をしていた家に乗り込み、”クリスマスイヴに家を退去させられた思いを感じろ!”と言い放ち、ガソリンを撒き散らすのであるが・・。
このシーンを見ていると、行政と住民の意志が全く噛み合っていない事や、行政が住民との話し合いの場を持たずに、退去命令を出す事など、地方自治機能が全く機能していない事が分かるのである。
<今作は、フランス地方自治行政の理不尽な仕打ちに対し、10階建ての古びた団地”バティモン5”に住む移民居住者たちが受難に耐える姿や、住民達の怒りが炸裂する姿をラジ・リ監督が熱くも哀しみを持って描き出した作品なのである。>