「子どもの目線を徹底して描いた傑作」クレオの夏休み 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
子どもの目線を徹底して描いた傑作
なんてすばらしい映画だ。鑑賞中、5歳の女の子に観客を完全に同化させるような、見事な視点。パリで父親と2人家族のクレオは、カーボベルデ出身のナニー、グロリアを母親のように慕っているが、彼女が祖国に帰国しないといけなくなる。すると、夏休みの間だけクレオはカーボベルデのグロリア宅に遊びに行くことになる。
カーボベルデの家では、グロリアの実の子どもたちが暮らしている。出稼ぎで何年も母親と離れていた子どもの一人は、白人のクレオに冷たくあたる。グロリアの長女が出産すると、彼女は赤ん坊につきっきりとなり、クレオは大切な人を奪われた気持ちになっていく。
近接のクローズアップとスタンダードサイズの狭い画角がすごく効いている。5歳の子どもの小さな世界、低い視線から見える視界の狭さを体感させる。グロリア役のイルサ・モレノ・ゼーゴは、実際にカーボベルデ出身でフランスでナニーをしていたらしい。大変素晴らしい演技を見せてくれた。
陽光きらめくカーボベルデの海岸も美しかった。忘れられないショットがたくさんある宝石のような美しい映画。
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トマトさんのコメント
2024年8月1日
こんにちは。
先日鑑賞してきたのですが、近接・クローズアップな作品だなと思っていたのですが、杉本穂高さんのレビューを読んで納得できました。ありがとうございます!(勝手にすみません💦)
クレオの素直で可愛い部分と、子どもの素直であるがゆえのこわい部分が描かれていました。子どもにもこういう部分があるのだと痛感した作品でもありました。
クレオとグロリアの関係、アニメーションも折り込まれた、素敵な作品ですね。