配信開始日 2025年12月19日

「とんでもない映画」大洪水 nanasiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 とんでもない映画

2025年12月22日
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泣ける

難しい

驚く

間違って★5をつけたわけではないです。タイトル通り、「とんでもない映画」でした。未曾有の災害、タイムリミット、親子でのサバイバル。これだけ素材が揃っていたら、感情を揺さぶるだけのパニック映画に仕立てる方が、圧倒的にわかりやすく、評価も取りやすい。なのに、この映画はそれをしない。それがまず「とんでもない」と感じた理由です。じゃあ、この映画が選んだものは何だったのか。それは、人類という大きな単位と、母と子という最小単位の対立という、答えの出ない普遍的な問いを、娯楽映画の皮をかぶせたまま真正面から投げてくることでした。さらに「とんでもない」のは、それを説明しないこと。台詞で語らず、水、反復、失敗、そして身体の衝動で見せてくる。だから「よくわからない」と感じる人が出るのも無理はなく、でもそれは、この映画が観客を信用している証拠でもあると思います。映画の中で何度も襲ってくる「水」は脅威でありながら、私たち生命にとっては必要不可欠なもの。そして「水」は、母の胎内、私たちが最初に出会う原初の世界でもある。主人公の息子が水を恐れない理由も、そう考えると自然と辻褄が合う。そうした描写の積み重ねが、また韓国映画らしい。私たちが感情を持つきっかけも、なぜ生まれてきたのかも、突き詰めれば実際は「よくわからない」に辿り着く。もしそこまで含めて描こうとしていたのだとしたら、やっぱりこの映画は「とんでもない」と思います。

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nanasi