「あんた誰や?俺の知ってるサカイさんはどこ行ったんや?」東京カウボーイ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
あんた誰や?俺の知ってるサカイさんはどこ行ったんや?
まず、30年くらい前の経済力のあった日本ならこんな話も成り立ったろうけど、いまや隣国どころか東南アジア諸国にさえ勢いで負けている日本には、こんなリゲイン片手の猛烈サラリーマンはいないだろうな。しかもサカイは、本人はできるビジネスマン気取りなんだけど、どこか風采が上がらない。大きな案件(チョコレート会社)をまとめた手腕を自慢していてもその実情まで把握していない。そもそも数字さえ上がれば興味がない。
そんな奴。
だから婚約者を5年も放置しているのだろう。
だけどまてよ、あのできる上司(婚約者)がどうして5年も待っていられるんだ?待てるだけのなにか魅力が、彼にあるのか?
そう、あるんだなあ。けして彼女がダメンズウォーカーなわけではなかった。サカイには彼なりの愛嬌がある。そこに彼女が気付いている。だから待てたのだろう、そう思えた。
劇中、「何で泣いているの?」「わからない」のやりとりにはハッとした。「俺はいままで、ものごとを良くしてる人だと思ってた」の反省も素直だった。「売っちゃったんでしょうね。俺みたいな口先だけのサラリーマンに」はその先の決断に至る決意に見えた。そういう感性だ。不器用だけど、受け入れる度量がある。大物感は全然ないけど、人としての優しさがある。(←ずっと気を張って数字を追いかけていて忘れがちだったけど)
人生は反省と後悔の連続で、それでも人は生きていく。ラストの展開のあと、サカイとケイコの二人なら上手い結果を導くだろう。そんなムードがあった。そんな二人の関係性を、こんなにうまく伝えてくれたという嬉しさが残ってほろりと泣けた。たぶん、その時理由を聞かれても「わからない」としか答えられなかっただろうけど。
なお、国村隼演じるワダは、破天荒でいながら頼りがいもあり、心地いいはっちゃけキャラだった。
ケイコは誰?と思ったら、スティーブンセガールの娘さんか。いい味出してた。もっとスクリーンでお見掛けしたい。