劇場公開日 2024年6月22日

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「マスクと一緒に隠してきた自分を裸にする私と君」つゆのあとさき サスペンス西島さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0マスクと一緒に隠してきた自分を裸にする私と君

2024年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2024年劇場鑑賞50本目 良作 64点

2024年劇場鑑賞年間8位の作品である蒲団と同じ監督の最新作

22年の同時期に公開された作品である、夜明けまでバス停でに近しい内容なのではないかと、心弾ませ渋谷ユーロスペースに足を運びました

どうやら原作は昭和初期の銀座のカフェーを舞台にしており、舞台をコロナ禍の渋谷に置き換えて描いたとのことで、この改変はコロナ禍が落ち着いた2024年現在という意味でも、今作に登場する女性たちの姿を描く上で良い判断だと思います

というのも、キャバクラで働いていた主人公である琴音は、新型コロナウイルスのパンデミックによる店の休業で家賃が払えなくなり、一緒に住んでいた男には家財を持ち逃げされ、行き場もお金もなく文字通り身一つでふらついていた所に出会い系喫茶で男性客相手にパパ活することで、なんとか食い繋いで生活を続けていた

ここでこの改変が良い方向に転んだであろう大きな理由が、このレビューのタイトルにもある通り、マスクと一緒に隠してきた自分を裸にするということである

男に消費されてきた琴音が抱えた痛みや悲しみは特別関わる人以外には表に出さずにいる、もしくは心を開かない、あるいはどうでもいいと脳死しているような生き方に感じるのが、まるでコロナ禍の日本国民の脳死にマスクをつけ、それは果たして症状が出てないだけで病原菌がある前提で他者に移さない為の処置なのか、はたまた外部から身を守る為のマスクなのか(一般的には後者の効果は薄いため前者で考えるのがセオリー)はっきりしないまま、周りがつけているからつける、のような3年ほどに及んだその光景は、表情も見えず外部と一枚壁を隔てていたような空気が今作の女性陣の葛藤や告白、次第に心が通っていく過程で、マスクをとり、心も身体も(職業柄)裸になっていく様がダブルミーニングであったので、良い改変であった大きな理由である

マジックミラー越しにマスクつけたイケない中年男たちが、大学生から20代くらいの若い女性をジロジロと吟味している光景がまぁ気色悪い、それを隔てる壁の真ん中で映すカットも非常に良かったし、話さずともTwitterのような呟きに同世代の女性キャストの悪口を同じ空間にいながらそれで漏らしたり、体の関係になったキャストと客がホテルで告白し合うなど、隠す表情、隠す本音、マスクを外して、そのマジックミラーの壁を越えてペアになって、裸になる、のような秘めると放つの色々な要素が見れた

西野凪沙が可愛い、好き

サスペンス西島