「妄想力が突破力になるかはわからないが、暴走し手に負えない刑事になりそう」朽ちないサクラ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
妄想力が突破力になるかはわからないが、暴走し手に負えない刑事になりそう
2024.6.21 イオンシネマ京都桂川
2024年の日本映画(119分、G)
原作は柚月裕子の小説『朽ちないサクラ(徳間文庫)』
親友の真相を言う警察一般職員を描いたミステリー映画
監督は原廣利
脚本は我人和人&山田能龍
物語の舞台は、愛知県名古屋市&岡崎市周辺
愛知県警の公聴課にて市民の対応に従事している森口泉(杉咲花)は、世間を騒がせているある事実について、自身が関わっていることを憂慮していた
それは、神社の息子・宮部秀人(篠原悠伸)が殺人犯として捕まった事件にて、警察の対応が遅れたのが慰安旅行に行っていたからだと、新聞にリークされていたことだった
泉は親友の千佳(森田想)に慰安旅行に行っていたことを知られていて、彼女がそれを記事にしたのではないかと疑っていた
千佳はそれを否定し、「真相を突き止めたら誤って」と言って取材に走った
だが数日後、千佳は宮部と同じような殺され方をされてしまい、泉は「自分が疑ったせいだ」と責めていた
その後、上司の富樫(安田顕)と捜査一課の梶山(豊原功輔)から事情を聴かれた泉は、自分が被疑者になっていることに気付く
彼女はそれを否定し、自らの嫌疑を晴らすために、事件を調べることになった
慰安旅行がバレるきっかけになった警察学校の同期・磯川(萩原莉久)とともに動き出す泉だったが、富樫と梶山から勝手に動くなと釘を刺されてしまう
それでも、彼女から得た情報が捜査を推し進めることになり、梶山は「動く前に連絡をしろ」と、彼女の捜査を容認していくことになるのである
映画は、公安の暗躍を描く内容になっていて、公安でしか知り得ない情報とか、捜査課とのパワーバランスなどが背景にあったりする
泉という刑事ではない人間の視点で描くことで、公安とはどういった組織なのかを説明する流れになっていて、内通者(スパイ=S)と言った隠語のようなものも登場する
そして、事件全体の中で、「どこにSがいて、その目的とは何か」を追っていく流れになっていた
ラストでは、泉がある人物に事件のカラクリを説明するシーンがあるのだが、これはある人物がいうように「君の妄想だ」という言葉がふさわしい
確たる証拠もなく、思い込みと違和感で事件を結び付けているのだが、これで事件が解決していないところがリアルでもある
本作は、ある意味において、泉の刑事適性試験のような作品になっていて、それが合格だったのかどうかというところが終着点になっている
それを認めるのがある人物かどうかはさておき、少ない情報から真相を紐解く推理力に関しては、合格レベルだったのかな、と感じた
いずれにせよ、ミステリー映画としては、黒幕が逮捕されていないので終わっていない感じがするのだが、泉の刑事適性試験だったと考えれば、ギリ終わっていると言えるのかもしれない
彼女の妄想は本当に妄想レベルで、どこまで真実に近づいているのかはわからないが、事件全体の辻褄合わせという点では合格なのだと思う
実際には、もっと多くのしがらみや真実があり、彼女のレベルではそこまで到達していないのだが、それ以上を描くには時間がなさすぎるのだろう
宗教団体と公安の関係、警察上層部との関係であるとか、ある人物は「本当はどの組織のSなのか」というものも判明していないので、このあたりが気になる人からの評価は低いように思えた