「舞台で観たい作品」ピアノ・レッスン 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
舞台で観たい作品
デンゼル・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、
ジョン・デヴィッド・ワシントンのコラボ。
1911年、ミシシッピ州から物語は始まる。
この設定に多い凄惨な暴力表現の多い作品かと、
身構えてしまう。
本作は違う。
アメリカ南部における黒人家族の複雑な【内面世界】を鮮やかに描き出す。
人種差別という社会構造が個人のアイデンティティや家族関係に与える影響を深く探求している。
ウィルソンは「マ・レイニーのブラックボトム」では、
音楽業界における黒人女性ミュージシャンの苦悩を描いた。
こちらはyoutubeで取り上げているので言及はしない。
本作の物語の中心は、
白人地主サターのピアノを巡る姉弟の対立である。
姉は、ピアノを単なる楽器ではなく、
家族の歴史と文化を象徴するものとして捉え、
それを手放すことを拒む。
一方、弟は、土地の所有を通じて経済的な自立を図り、
家族をより良い生活へと導きたいと願う。
この対立は、単なる物質的な争いではなく、
黒人としてのアイデンティティ、
家族の絆、そして白人社会からの解放という、
より根源的な問題を孕んでいる。
観客は、それぞれの登場人物の立場に共感し、
彼らの葛藤を自分のことのように感じることができるだろう。
演劇、戯曲でも、この作品が高い評価を得ているのは、
登場人物たちの感情が、
俳優たちの演技によって鮮やかに表現されるからだろう。
ストーリーでカタルシスを作るというよりも、
感情の演技がカタルシスをクレッシェンドさせていく。
特に、後半のピアノ演奏シーンにおけるブルースのようなシャウトは、
舞台装置と一体となり、観客を物語の世界へと引き込むのだろう。
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