「クリスマス危機一髪! 最悪からの人生大逆転便」セキュリティ・チェック 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
クリスマス危機一髪! 最悪からの人生大逆転便
“クリスマス映画”と言うと、ハートフルなコメディやドラマ、ファンタジー、ファミリー向けアニメーションが専らだが、意外な作品も。
言わずと知れた『ダイ・ハード』。
アクションの名作だが、クリスマスを設定し、今やクリスマス映画の一つとしても定番に。
年の瀬。世界一ついてない男が悪運から脱しようと奮闘し、乗り越え、来る新年が良い年であるように…なんて感じるのかな?
さて、本作。クリスマスの空港を舞台に、絶体絶命の危機に見舞われた男の奮闘。現代版の『ダイ・ハード』…と評されたのも頷ける。
ロサンゼルス空港で運輸保安局員として働くイーサン。
同じく空港職員のノラは妊娠し、プライベートは良好だが、仕事の方は冴えない。
警官を目指していたが、警察学校の試験に落ち、夢諦めモード。
ノラは再挑戦を促すが、これから産まれてくる子供の為にも現状での昇進を望む。
上司に懇願し、クリスマスの多忙の時期、乗客の手荷物検査を担当する事になる。
それが最悪の始まり…。
乗客の忘れ物のイヤホン。紙に“付けろ”と指示。
男の声。ある荷物を見逃し、飛行機に乗せろと言う。
同僚の悪戯かと最初は思ったが…、自分の今の行動や個人情報が筒抜け。何処からか監視されている…?
半信半疑だったが、同僚の一人が殺され、ノラにまで害を及ぼそうと…。悪戯やただ事でない事を察する。
これは、マジだ…!
脅迫者の目的は…?
何故俺が選ばれた…?
イーサンが選ばれた理由は、本当にただの偶然。
手荷物検査を担当する別の同僚が目星を付けられていた。
たまたまイーサンが変わった。
徹底的に調べられ、コイツなら脅迫するのに容易い、と。
運の悪さはあの刑事とどっこい。
脅迫者の命令に絶対服従。仲間が徹底監視。指一歩の動きも見張られる。
誰にも助けを求められない。そのせいで同僚に誤解を。
ノラにも事情を言えない。つい言ってはいけない事を…。
孤立無援。
脅迫者は言う。テロリストではないと。
後々分かる事だが、飛行機に乗せようとしているのは恐ろしい化学兵器。
それを使って国際絡みの事件を起こそうと…。
どの口が言う? 紛れもないテロリストだ。
脅迫者は冷静沈着。非道。思慮深く、冷ややか。他者を見下す。
イーサンを負け犬呼ばわり。
脅迫と監視で手も足も出なかったイーサンだが、ずっとやられっぱなしじゃない。
警官を目指してただけあって、なかなかどうして行動力、観察力、勘の良さ、機転に優れている。
隙を付き、監視下から逃れ、出し抜こうと、反撃開始!
空港や乗客、ノラを守れ!
ジャウム・コレット=セラとタロン・エガートンのタッグが魅力。
『エスター』『フライト・ゲーム』『ロスト・バケーション』などサスペンスに定評あるジャウム・コレット=セラの手腕が遺憾なく発揮。
ハラハラドキドキのエンタメ×スリルにずっと引き込まれっぱなし。
事件に気付いた捜査官が偽の捜査官を乗せて、ハイウェイで車内乱闘。長回しのような見せ方とクラッシュ連続のカーアクションは迫力。
何の取り柄も無かった男が一念発起。孤軍奮闘。
マクレーン的であり、出世作の『キングスマン』にも何処となく通じる。
タロン・エガートンが熱演。
謎の脅迫者役のジェイソン・ベイトマンが一見普通の中年男に見えて、恐ろしい。
ソフィア・カーソンはお美しく、ダニエル・デッドワイラーも奮闘捜査。
Netflix配信のみなのが本当に惜しい、現代要素と昔ながらを取り入れた面白味充分のサスペンス・アクション。
『ダイ・ハード』のような無名のヒーロー物語でもある。
それはただの一般人だったり、空港職員であったり、夢諦めた者だったり…。
聖夜には奇跡が起きる。
その奇跡が人生大逆転を起こす。
危機を防ぐ。人々を救う。そして、諦めた夢に再挑戦し、見事掴む。
傍らには愛する人と。
本作も立派なハッピーエンド・クリスマス映画。クリスマスに見ておけば良かった…。
続編企画が始動中だとか。
晴れて警官になったのだから、次は…
高層ビル人質事件とか、街中に爆弾を仕掛けられ相棒と共に謎解き疾走とか…??