「朝日座ロケが効いている」パレード 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
朝日座ロケが効いている
未練を残して死んだ人間が「その先」に行くことができずに亡霊のようにさまよっているという設定で震災を描く点で、『天間(てんま)荘の三姉妹』にも近い作品。あるいは是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』を思い出す人もいるかもしれない。こういう生の世界と死の世界の狭間という感覚は日本以外にどれくらいあるんだろうか。あまり西洋的な感覚じゃないのかもしれないとふと思った。
この作品では、子ども一人を残して震災で命を落としたシングルマザーが主人公で、他に様々な理由で未練を残した人々とのやり取りを描く。リリー・フランキー演じる男は映画プロデューサーで、未完成の作品を完成させるというエピソードが出てくるのだが、亡霊と「映画という虚構的なあわい」の親和性を活かしていて、主人公のエピソードよりも全体の中で光っている。それは全体としてバランス的にどうなのかという気もするのだが、気持ちのいい作風なので良いかな。
福島県南相馬市にある朝日座でロケをしているのだが、これが大変良い効果をあげている。かつての生者たちがかつて映画館だった場所につどい、映画という虚構を見つめる。このシーンはなかなか味がある。震災後に朝日座を訪れたことがあるのだが、「ニュー・シネマ・パラダイス」のような「夢の跡」を感じさせる場所だった。本作のロケ地にピッタリだと思う。
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