「映画大好き!」パレード movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
映画大好き!
生前の現世に未練がある人達が死後、全国各地に集っている場所があるらしい。
生きていたら接点が全くなかったかもしれない者達が、生前に未練があるという共通点で心通わせていく。
自らの死を受け入れるまではできても、未練があったら、生きている人たちを見に行った後、もっと泣き崩れたりありそうなものだが、みんな淡々としていた。味も感じないらしい。
この作品を観たのは横浜流星が出るから。
横浜流星がヤクザの親分の息子、勝利役なのだが、良い役を貰っていて。
組同士の抗争で亡くなるも、残してきた妻が心残り。
見に行くと、妻も勝利への気持ちがまだまだあるままに、別の男性から求婚されていて、心に蓋をして区切りをつけ、新しい人生に踏み出そうか葛藤しているところだった。生きていても、反社の嫁として生きにくいより、良さそうな男性となら応援をした方が良い。
その踏ん切りをできる、優しい男役だった。
満月ではなく新月の日に、探している相手を求めて、亡くなった人達で練り歩いてパレードしているとか。
それぞれの未練を打ち明けあって、未練が消えると次の世界に旅立っていくのだが、森七菜扮する、いじめを苦に自殺した女子高生ダテナナのまさかの夢オチ。次の世界に行かずに、現世に戻ってきたようだ。
それがありなら、長澤まさみ演じる美奈子も、生き直して息子の良の元に戻る選択もありなはずだが、死因が津波ゆえそれは難しいようだ。
災害の多い日本で、大切な人を亡くし、この映画で亡くした人達の想いに、思いを馳せる人はおそらく沢山いるはずだ。
隠れテーマ
①俺達は映画が大好きだ!という映画業界人の主張
②大人になっても仲間になるって良いよね
映画を中心に出ている俳優ばかり。
しかも、マザーの時の長澤まさみと大兼くんがまた親子役で登場。
垂れ流して消費するテレビではなく、ずっと残る作品となる映画に、人間の大切な感情を表現して描ききり、メッセージとして伝えたい。そのために、大人達で真剣に団結して作り上げる「映画」を大好きだ。という主張がリリーフランキー演じる自称元映画プロデューサーのマイケルから何度も飛び出す。
作中でも、マイケルの未練である、学生運動時代の経験をまとめた映画を完成させたい、という想いのために、みんなで協力して映画を撮り、その経験に感化されたナナは生きて映画を撮る人生を選んだようだ。
生きる事に未練なく自ら死のうとまで追い詰められた者が、映画を通して、生き直すこともできる。
この作品で伝えたい強いメッセージに感じた。
映画館がガラガラの昨今で、この作品は映画だけれどNetflix配信。伝える媒体を変える挑戦と不安がありながらも、「映画」という文化を守っていきたい。という強い想いを感じた。