配信開始日 2024年2月9日

「オーガニックで知的、そして信頼に足る、新人監督の見事なデビュー作」サンコースト 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5オーガニックで知的、そして信頼に足る、新人監督の見事なデビュー作

2024年6月30日
PCから投稿

ヤングケアラー、介護、ネグレクト、安楽死の是非など、ヘビーな題材と正面から向き合いながら、タッチは決して重くなく、心地よい青春映画の趣きを漂わせながら物語が進んでいく。「人生とは飴玉ではない、が、味わい、楽しむに足るものである」という前向きな人生哲学が、てらいのない語り口で伝わってくる。主人公の少女と心通わすウディ・ハレルソン演じる活動家はおそらくプロライフのゴリゴリの保守派だし、ローラ・リニー扮する母親も問題だらけの人物だが、清濁あるのが人間であるというスタンスにも好感を持つ。そして学校でできる友人たちも一面的でなく、それでいてハートのある子供たちに描かれていて、つくづくこの監督は、夢見がちになることなく人間を信じるスキルを持っているのだろう。騒動うでしかないが、そんな人柄が感じられる、とてもオーガニックで心地よく、知的で信用できる作品だと思う。

村山章