「ガザもウクライナも」マリウポリの20日間 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
ガザもウクライナも
クリミア半島の根元近くの要衝の地、ウクライナのマリウポリにロシアが攻撃を始めてからの20日間、ここで何が起きているのかを命懸けで撮影し続けたAP通信記者の記録です。
本作は、今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したのですが、その席上、監督は「こんな作品で受賞したくなかった」と悲痛なコメントを寄せました。その言葉の意味を改めて思い知る事が出来る作品でした。
病院では小さな子供が次々と死んで行き、蘇生処置に当たっている医師も涙を流しています。そして、取材チームに「これを世界に伝えてくれ」と叫びます。砲撃によってサッカーのプレー中に足を失った少年、骨盤を破壊され胎児と共に亡くなった妊婦、幼子を助けられずに泣き崩れる母親。
一方では、破壊された商店から、市民たちが次々と商品を略奪して行きます。そして、
「戦争はまるでX線だ。人間の内部を見せる」
と語る医師。
この映画を観て「だからこそ、日本も軍備を」と息巻く人が居るかもしれません。しかしそんな人は、これをしも「自衛の戦争だ」と語るプーチンのグロテスクさをどう観るのでしょう。自分達もプーチンになり得る事を想像しないのでしょうか。
そして、アカデミー賞授賞式で監督が更に語ったように、この映画からガザへも想像力を働かさねばなりません。いや更に、シリアもミャンマーも、マスコミに報じられていない国々へも。
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