「この作品と同時代を生きる者として、できるだけ多くの人々に観てほしいと願わずにはいられない一作」マリウポリの20日間 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
この作品と同時代を生きる者として、できるだけ多くの人々に観てほしいと願わずにはいられない一作
2022年のロシアによるウクライナ侵攻は多大な犠牲を払いつつ現在も続いています。ウクライナ侵攻直後に激戦となったマリウポリの状況を、現地にとどまったAP通信の記者たちが、文字通り命がけで取材して得た映像が、本作を構成しています。
大局的な情報は一切省いて、一般市民、そして記者個人の視点でとらえるマリウポリの状況は筆舌に尽くしがたく、おそらく配信での視聴だと最後まで観通せないのでは、と思うほどでした。
病院や住宅ですら無差別に攻撃を受ける状況を前に、怒りを覚える以前に恐怖心で体がこわばり、作中の証言者が語っていたように、「今観た記憶を脳内から消したくなる」感覚に陥ります。
彼らが20日でマリウポリから脱出したことは知ってはいても、日付のカウントがあまりにも遅く感じ、「はやく20日間経ってほしい」と思わずにはいられませんでした。しかし監督も語っているように、ここに生きる人たちの苦しみは20日間なんてものではないんですよね……。
今現在ウクライナやガザ、そして世界各地で起きているであろう悲劇から目をそらさないためにも、非常に辛い映像であることは承知の上で、できるだけ多くの人々が観るべき映画であろうと思いました。
本作でアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を受賞したミスティスラフ・チェルノフ監督の、「こんな作品でアカデミー賞を獲得したくなかった」という発言は痛切です……。
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