「人生の後半戦の世知辛さと寒々さが沁みる。」アメリカン・フィクション 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
人生の後半戦の世知辛さと寒々さが沁みる。
コンセプトはとても興味深いのだが、「黒人のステレオタイプ」にとらわれている人たちを皮肉るブラックコメディであるにも関わらず、ひとつひとつの状況がベタで平易すぎるように思えて、結局はステレオタイプの枠内から抜け出せない狭苦しさみたいなものも感じてしまった。例えば似たケースの実話としてのJ・T・リロイ騒動なんかはより複雑でより滑稽だったりするので、フィクションとしてはいささか物足りない。しかし進んでいるようで進んでいないアメリカの黒人の現状を伝えるためには、これくらい単純でわかりやすく描くべきなのかも知れない。その辺の肌感覚は、知識の乏しさや現地の空気感がわかっていないため、どこまで理解できているのか自信がない部分ではある。一方で、介護が身近な中年以上の家族ドラマパートはかなり切実な現実であり、人生の後半戦の寒々しさを描いたドラマとして身につまされるし、沁みる。
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