「アカデミー賞ノミネート作品?」アメリカン・フィクション ゆ~きちさんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー賞ノミネート作品?
本作はパーシヴァル・エヴェレットの小説「Erasure」を原作にした風刺的なブラックコメディ。売れない作家セロニアス・“モンク”・エリソンは、新作の原稿が「黒人的ではない」という理由から出版社に受け入れてもらえず、対照的に白人社会の求める黒人像に迎合した作品を書く若手作家が人気を集めている現状に不満を抱き、勢いであらゆるステレオタイプを詰め込んだ小説を執筆。別人の名前をペンネームにして出版したその小説が、図らずして大ベストセラーとなってしまい…。
「マスター・オブ・ゼロ」やHBOのテレビシリーズ「ウォッチメン」の脚本家として知られるコード・ジェファーソンが初めてメガホンをとり、主演のモンク役を演じるのはダニエル・クレイグ版「007」シリーズのジェフリー・ライト。共演にはトレーシー・エリス・ロスやイッサ・レイ、本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたスターリング・K・ブラウンのほか、アダム・ブロディやキース・デイヴィッドらが名を連ねている。
昨年秋に行われたトロント国際映画祭でプレミア上映されるや大絶賛を浴び、同映画祭の観客賞を受賞。同賞を受賞した作品は2008年から2022年までの15年間で14作品がアカデミー賞作品賞にノミネートされており、うち5作品が受賞を果たしていることから、一躍アカデミー賞の有力候補として大きな注目を集めることに。その後もアカデミー賞に向けた前哨戦となる全米各地の批評家協会賞でも数多くの賞に輝き、現時点で52の映画賞を受賞、アカデミー賞を含む153の映画賞へのノミネートを獲得している。
批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家から寄せられた好意的レビューの割合は94%で、観客からの好意的レビューの割合も95%と極めて高い水準をキープ。批評家ジュールデン・サールズは「IndieWire」に寄稿したレビューのなかで「黒人の知性主義を評価したり有意義なかたちで関与できない白人の性質や恩着せがましさに批判的な視点を向けた作品。白人中心のドラマが主流の映画界に新鮮な息吹を与えてくれる」と評している。
ここからは私の個人的な感想を…。
IMDbの評価、7.8/10、アカデミー賞主演男優賞や作品賞などにノミネートされたとあっては期待せずにいられないじゃないですか😭。
しかもコメディとあるからわかりやすいのかなと思ってたら、なんじゃこれ?…
字幕がない不利はあるけど、要は卑屈な黒人のあるある話?…
カナダの観客は上映中でも割と自由に笑ったり、時々くっちゃべったりするんですが、コメディの割に誰も笑わず…。やはり、移民も有色人種の多いカナダでは特に笑えないのかなと思いました。
とにかく、どういうところが面白くて、どんなメッセージ性を含んでたのかが知りたかったです。
やっぱり映画.comの優れたレビュアーさん達の補助線がほしいなぁと、つくづく思います。
sow_miya さん、素敵な補助線ありがとうございました。
カナダにいると言っても、周りには中国人、インド人、メキシコ人…移民だらけなので、差別してたら仕事できないくらい、他民族国家です。なんでアメリカ人があんなに差別的なんだろうと、不思議で仕方ないですw
父も、兄も姉も医者。自分は文学博士で大学教授。こう耳で聞いたら、どんな見た目の人を思い浮かべるか。
そんな人々の偏見の無自覚さが、最終的なテーマかなと思っています。
「アメリカの白人たちが考える“黒人”という文脈の上に成り立ったフィクションが、モンクにとってはいかに現実乖離していてバカバカしいかを丁寧に描きつつ、結局その偏見の上に立ってしか物事を見れない人間の愚かさのリアルを、毒で味付けして笑い飛ばした映画」と受け取り、自分はとても面白く観ました。
ラスト近くで、ぞんざいに扱われているアジア系の助監督の表現とか、アカデミー賞でのあの話題に通じていて、そんな所も「やるなぁ」と思いました。
ニコさん、こちらこそ詳しく教えて下さりありがとうございました。
日本にいる方が外国人とか、特に黒人みたいに明らかに強そうな遺伝子に怯みがちになりますよね。見慣れない人に対する警戒心というか。
移民国家カナダでも、何となく縄張りを侵しがちな中国人などに偏見を持つ人がいますけど…。
コメントありがとうございます。
基本的にはアメリカのローカルネタ映画かなあと思います。
ただ、属性に惑わされず個人として相手を見ようね、という話でもあると(勝手に広げて)解釈すると、日本に住む私にもなんとなく身近なテーマであるとも思えました。
個人的には、他人を属性で判断するのって、人間の野生的な本能にもルーツがある気がしています。相手が危険かどうかは、弱肉強食の世界なら瞬時の判断が必要なので……単なる持論というか、それ以下の感覚的な話ですが。偏見って、本能に繋がっているから根深いのかなあと。
カナダのお客さんはそういう感じなんですね。アメリカに比べると、こういったテーマについてのカナダでの雰囲気を知る機会が少ないので、空気感が伝わるお話はとても新鮮です。
日本では配信だけで、本作については他の観客の生の反応を見られませんでした。