「コアなファンの真心を踏み躙ってはいけない!」数分間のエールを やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
コアなファンの真心を踏み躙ってはいけない!
冒頭からポップなアニメキャラが活躍するゲームの仮想現実空間に迷いこんだんじゃないかという映像が彩り鮮やかに展開していく様は、最初正直違和感がありましたがだんだん慣れていきました。
空間のチリまで描写(他のアニメ作品でもあったなあ)する精細さと、興味のない標識などは記号化して文字崩すあたり、非常にデジタル的感覚化遠近法(名称適当!:笑)を駆使していて背景含めて癖の強い作画になっています。私は好きでないですが、今風で若い人には刺さるのですかね?
上記の映像の違和感はそんなに批判するまでもないのですが、ストーリー上ではそれを遥かに上回る「えっ?あんたこれ本気で言ってる?」というのがありまして・・・それが最後本作ではまるで当然の様にすんなりと「正当化」までされちゃったのでネタバレまでして、猛烈に抗議(笑)する次第です。
その信じられない発言、行為は以下です。
おそらく今、一番の熱烈な織重夕ファンである彼方くんが試行錯誤を繰り返し寝る暇も惜しんで彼女のために最初に作ったMVを「歌詞の意味が分かってない、私の気持ちに寄り添ってない」とダメ出しし、しかも公開を禁止したことです。
愚行以外のなにものでもない、と思いました。こっからストーリー上の違和感の方が映像のソレより悪い意味で目立つ様になりました。
彼方くんが自分の感覚頼りで表面だけ取り繕ってサラッと綺麗に作ったMVだったらまあ、そんな流れもアリかもしれません。だけど彼のMVの制作過程、歌詞のひとつひとつの意味を細やかに検証、拾って映像化、イメージ化してる部分を詳細に見せられてるわけですから、その拒絶理由に疑問符しか出てこないわけです。
感情的にも、コアなファン(下手したら最初のファン)が側に居て協力してくれるという意識が彼女には希薄、もしくは無くて、だから一番のファンの真心を踏み躙った感覚も無いんだろうな、と彼女に対して反感をもちました。
逆にコアなファンにさえ的確に伝わらない歌詞の意味、今まさに夢を捨てようとしている人しか共感できないピンポイントな表現?しか出来ないのは、作り手側の表現能力の低さを露呈しているのではなかろうか。
私も公開されている「未明」の歌詞を検証しましたが、場面が急に飛んだりして難解で彼女の意図する「夢を諦めて終わりにするイメージ」は全く想起できませんでした。
この初見殺し無理ゲーを、最終的に超絶技巧でクリアする彼方くんには脱帽なんですけど、出来たMVフルがこれまた正直、好きになれない描写のオンパレードでして・・・初稿の塔を登るやつ見せてって思わず心の中で叫んじゃぃした(笑)。
つらつら書きましたが今回、評価が厳しめになってしまったのは「ルックバック」という同じくクリエイターの苦悩、葛藤を描いたアニメ映画の大傑作を直前に鑑賞していたからだと思います。
その中では全く逆のストーリー展開「自分の近くに熱烈かつ最も偉大なファンが居たことに気づき、至高の幸福に満たされて奮起し過酷極まる創作活動を再開する話」でした。
比べたらどちらにも失礼になっちゃいますが、扱う題材は類似していても映像、ストーリー、演出、すべてにおいてレベルの差は歴然でしたね。
では。