「何かがきっかけとなって、人の心に残るモノがあります。この作品は、路上ライブで出会った男女の創作活動に向き合う姿が描かれます。」数分間のエールを もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
何かがきっかけとなって、人の心に残るモノがあります。この作品は、路上ライブで出会った男女の創作活動に向き合う姿が描かれます。
最初は観る予定していなかったのですが、モノ造りに関する
お話なのと、脚本の担当が「宇宙(そら)よりも遠い場所」
の人と知って興味がわき鑑賞することに。 ・_・シマシタ
音楽。そしてMV(ミュージックビデオ)。
音と映像の違いはあれど、モノを創り出す仕事です。
その創作の世界にハマった二人が主役のお話です。
#一人は朝屋彼方くん。高校生。MV作成に励んでいる。
#一人は織重夕さん。 音楽家。出会った翌日は英語教師。えっ?
ミュージックビデオ作成の魅力にどハマり真っ最中。
とにかく色々なものを題材にMVを創りたい男子高校生。 と
何年も音楽制作を続けてきたものの、自分の才能に限界を感
じて活動を止めることにした女性。
二人の出会いは、雨の夜。
町を歩いていた彼方の耳に聞こえてきたのは、女声の歌声。
雨の中、一人で路上ライブの演奏をしていた。
心を掴まれるものを感じ、思わずスマホで録画する麻屋彼方。
演奏終了後、演奏者の女性に思わず声をかけてしまうが
逃げられてしまう。 (” ナンパじゃないのに… ”)
次の日の学校。
新たにクラス副担任となった新任教師が教室に入ってきた。
副担任と英語の授業を担当するというその女性は誰あろう
昨夜の路上ライブの女性だった。
放課後に職員室を尋ねるが、帰ったと言われてしまう。
何としても、昨夜のこと(=演奏に感激したコト)を伝えたい。
どこにいけば会えるだろうか…
思い立って出かけた公園に、織重夕は居た。
昨晩のコトを説明し、あの曲でMVを創りたいとの想いを伝える。
だが、彼女は良い返事をしない。
というのも、昨日の路上ライブを最後に
彼女は音楽活動を止めるつもりだったからだ。
自分がどんなMVを創れるのかを観て欲しい とアピールする彼方。
説得の末、夕の曲でMVを創ることを認めて貰えた。
どんな映像を創ろうか。
歌詞から連想されるイメージをキーワードにしてみる。
ああでもない。こうならどうだ?
あれこれと、思い悩みながらも制作は進む。
ようやく感性したMVを彼女に送り、どうだったかを知りたくて
再び公園に向かう彼方。彼女はいた。
” 自信作が出来た。きっと彼女の心にも届いたハズ… ”
MVを観たかと聞くと、「見た」という。
安堵の表情を浮かべる彼方に織重夕が尋ねる。
” 彼方君は、私の曲を本当に聴いたの? ”
もちろんそうだと応える彼方に、織重夕が告げる。
” このMV 公開を認めることは出来ない ” と。
理由を訊いても応えてくれない。
果たして彼方は、閉じてしまった彼女の心を再び開くことが
出来るだろうか。
…
…と
こんな感じのお話でお話が進みます。
この作品、
創作活動のゴールに辿り着いた女性と
創作活動のスタート地点にいる少年との
創作活動にかける想いや情熱が交錯し、
作品に込めた気持ちがすれ違いながらも
ひとつの方向を向いていく。
そのひとコマを切り取って描いた作品です。
MV制作の過程が見られたのは新鮮な感動。
悪くはない。…のですが
もう少し、エンディングに至る展開に納得感が欲しかった
と言うのが正直なところです。
( ※ という気持ち、鑑賞後から時間が経つに連れて強くなってます)
◇あれこれ
■絵柄について
輪郭線の無い、淡い色彩の絵柄。
冒頭数分観た時点では、わたせせいぞうさんの絵柄が頭に
浮かんでおりました。
もっとも、キャラクターのデザインは全く似ていませんので
あくまでも色塗りについてのみの感想です。・_・
■石川県が舞台
…との事だったのですが、特に石川県を思わせる風景等は
見当たらなかった気がします。(見落として無ければ)
制作スタッフのどなたかが石川県出身とかなのでしょうか?
■入場者特典
ピックでした。ギターの弦を弾くヤツ。
最近の入場者特典、小型軽量化してますね。ハガキとか。
何の作品だったか忘れましたが、手ぶらで観に行った作品の
特典が” A4サイズのクリアフォルダ ” だった事があります。
嬉しいというより、持て余した記憶が… @-@
※「碁盤斬り」の特典は小判でした。 小判 …の写真・∇・
◇最後に
夕の、創作活動を止める決断は重かっただろうと想像します。
創作活動を再開する決断は、もっと重かったろうとも思います。
” また会いましょう。 次は創作の現場で ”
教職を止め、学校を立ち去る際の、夕の最後のセリフ。
一人の高校生に掛ける言葉としては、重すぎな気がします。
一人の高校生の行動をきっかけに職を辞す というのも同様。
彼方がこのセリフの重みを本当に受け止めきれるのだろうか と
心配でなりません。(老婆心以外の何者でもないです)
その辺りに現実感を加えるエピソードがもう一つ欲しかったかも
と、そんな気がしています。たとえば
「彼方クンが高校を卒業したら、私の101曲目にMV創ってくれる?」
こんな展開があっても良かったかも。 …はい、妄想です。・-・
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。