「CYAN」数分間のエールを ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
CYAN
かなり期待していた1本。
MV制作にのめり込む少年と、夢を諦めた教師が偶然出会って生まれるクリエイターの悩みや葛藤をぶつけまくる花田先生脚本の色全開の勢い十分な作品で、上映時間も相まってその加速っぷりは凄まじく、全身ゾクゾクしながら観ていました。特典は後日譚の漫画です。
雨の中で弾き語る大人の女性の歌に惹かれた朝屋彼方が、赴任してきた織重夕の歌のMVを作りたいという衝動的なものから始まるこの作品は、今までには観たこと感じたことのないものが随時あって、映像表現も声優さんの表現もどのシーンも儚さと強さがそこにあって、そういうものを好んで観ているので、ターゲットど真ん中だったんだなと思いました。
自分自身もスマホではありますが、MV制作をやっていて、今でも時間があればMAD動画を作ったりするくらいには映像作りは好きなんですが、今作の彼方の機材を揃えてからは多くの作品を作り上げていき、想像の世界をあの手この手で育てていく様子がこれまた面白く、塔の高さの表現だったり澄んだ空の色だったりと、こだわりが多く詰め込まれていて、制作の段階でとても引き込まれました。
夢から一歩退くという決断の難しさを夕と友達の外崎の行動からビシバシ伝わってきて、賞を取ったから才能がある、誰かに響くと思って作っている、という違った角度からの苦しみには共感するポイントが多くて、観ていて胸が苦しくなる場面も多々ありました。
夕の思いを汲み取って、自分が何を作りたいのかの限界を突破して彼方が作った「未明」のMVは、希望よりも絶望が多く描かれていて、夢を諦めていく周りの人と諦めきれずにいる自分の対比、そこからの殻を被る様子と、5分はない音楽と映像の中にクリエイター讃歌と取れるものをギュッと詰め込んでいて感情が爆発しそうになりました。凄すぎた…。
ラストシーン、いやーこれまた良かった。
夢を諦めたはずの夕が学校を辞めて、再び音楽の道へとカムバックし、クリエイターとしての再会を彼方と誓うシーン。
んんー好きすぎるー!ってなりました。中編アニメーションとは思えない破壊力をこれでもかってくらい食らって、花田先生脚本の切れ味が炸裂していました。
映画自体のCGもソフトウェアで作られているらしく、普段見るCGアニメとはまた違うタッチで描かれており、色合いやキャラの造形もとても好みでしたし、今後の作品が楽しみになりました。
楽曲も素晴らしく、今作のMVの曲として流れる「未明」は菅原圭さんの力強い声とサウンドも相まって思わず拳を掲げたくなるくらいには興奮しました。
全力投球の青春、真っ直ぐすぎる彼方に強く感情移入して、より強く行動したくなる作品でした。
自分もクリエイターになりたい、止まっちゃダメだなと再確認させられました。
アニメって素晴らしい。
鑑賞日 6/14
鑑賞時間 9:00〜10:20
座席 O-12