劇場公開日 2025年6月13日

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「「夢と希望を持って生きる」ことを妨げるのは、過度な労働」ラ・コシーナ 厨房 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 「夢と希望を持って生きる」ことを妨げるのは、過度な労働

2025年6月13日
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鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

知的

モノクロである理由が最後でわかる。スルメを噛むようにどんどん味が出てくる映画だ。終わりまで見ることができてよかった。そうしなければこの映画が伝えたいことを掴めなかったろう。

原作の戯曲「調理場」は約70年前のものなのに、今も、いや、もっと尖鋭化し分断された社会が怒りと暴力で描かれている。自分と異なる存在を匿名で陰険にチクチクと虐める国も、移民による多様性が強みだったはずが世界の流れに逆行する言動を繰り返すトップ政治家(なのか?そもそも)ゆえに頭脳流出している国も、どっちもどっち。

いろんな罵り言葉を言い合って笑って盛り上がる厨房でのシーンは楽しそうだった。でも仕事が始まると同僚を名前で呼ばずに「○○○人」と、相手の出身国で呼びかけるのはとても嫌だった。モロッコ出身の女性は「カサブランカ」と呼ばれていたけれど嬉しくもなんともないだろう。自分の母語で自分の感情を吐き出せないのはどれだけ辛いか、と言うペドロの言葉に心が痛んだ。複雑な人間で、すぐ頭に血がのぼるけれど、困っている仲間には優しくてジョーク好きのペドロは、この映画の芯だ。ペドロの最後の暴れまくりの意味をレストラン・オーナーのラシッドは理解できない、というより他者への共感と想像力を既に失っている。彼ら移民を人間だと思っていないから。でもペドロを頼ってメキシコから来た新入りのエステラの表情に希望が少し見えた気がした。

ルーニー・マーラの輝きに癒される。サウンドデザイン、映像、音楽よかった。

talisman
グレシャムの法則さんのコメント
2025年6月22日

ハンニバルに係る報告⁈
ご丁寧にありがとうございます。
マッツ版のハンニバル、私はまだ見てないのですが、確かに雰囲気ありそう。Netflixでも見られるといいのですが。

グレシャムの法則
レントさんのコメント
2025年6月21日

すいません。talismanさんのレビューをいつも拝読させていただいて、その芸術や音楽への造詣の深さにいつも感服させられてまして、心のどこかで先生と生徒みたいな関係で勝手に妄想を膨らませております。あまり気になさらないでください。

レント
レントさんのコメント
2025年6月21日

コメントありがとうございます。talismanさんに褒めていただくのは先生に褒められる生徒のような心境です。とても励みになります。

レント
uzさんのコメント
2025年6月19日

コメントありがとうございます。

ファミレスを揶揄するような発言が数度ありましたが、そんな店だったんですね。
自己及び自国の利益を余所者に攫われたくない、こちらの利益のために利用だけしたい、って感じでしょうか。
理解できる部分と拒絶したい部分どちらもありますが、自分は近くの人ほどそのへん関係なくなります。
余裕がない人ほどその半径は狭くなるし、移民など足元から不安定だと自分しか見えなくなるのかもしれません。

uz
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