あこがれの色彩のレビュー・感想・評価
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現代版、色彩豊かな思春期
小島淳二監督作品
タイトルに色彩とある様に美しい映像に、多彩なカメラワーク、現代の片親の思春期の子の感情にそれを取り巻く人間模様も相俟って色彩豊かな作品になっています。
主人公は14歳の結衣で早々にの朝の食卓シーンが出てきます。
料理が上手に出来てない事に祖母が自分が作ったからと謝るのですが
食卓には結衣、父親の信夫、祖母の三人と母親が居ない家庭だと予感をさせます。
結衣は美術教室に通って好きな絵を書きますが先生からは「基本から」と
当たり前の御もっともな指摘にも素直になれない。これは思春期の特有の態度ですが、食卓のシーンもあり複雑な環境で育った子なんだなと改めて感じさせます。
そんな結衣に美樹と言う女性との出会いが訪れます。
美樹は(信夫の恋人)有田焼の絵付師で自分のオリジナルデザインの有田焼を作りたいと思っていますが師匠に否定されてしまう。
結衣と美樹は、絵と有田焼とやっている事は違えどやりたい事は同じで共に共感し近づきます。二人を否定した先生と師匠も真っ当で基本や基礎がしっかりしていないと良い作品は出来辛いのは確かで師匠も見てくれで判断してなく、Marimekkoと具体例まで挙げてます。
二人にとって何とも言えない環境でそれを上手く再現出来ていると思います。
結衣の年頃の思春期の行動も良く描かれ、信夫が美樹のコンクール入賞の為に金が必要で
車を売ったりとすると通っていた水泳を辞めて律儀な所を見せますが、パパ活や眠剤遊び
など危うい一面も見せます。眠剤遊びも昔のコックリさんをやっている程度の描写でパパ活もそう重くは描かれていませんが田舎だろうとネットで簡単に情報が入る、これが現代のスタンダートなんだと素直に思いました。
さらに結衣は美樹が参加するコンクールで美樹のオリジナル作品が出展されると思っていた
所、古来の伝統工芸そのままの作品だった事に絶望する。裏切られたと思った結衣は友人と協力し美樹を呼び出し眠剤入りドリンクを飲ましてしまうとかなり危ない展開にもなります。ゆっくりとした描写が多い中でハラハラする作品でもあります。
あまり登場しませんがMEGUMI演じる直美(結衣の母親)と信夫の喧嘩は痛快で
真面目なシーンですが、それも?そこまで言うか?と言う程、痛快です。
後に美樹は信夫の伝手でやりたい事が出来ると言う他の工房に移るがそこは
商業デザイン特化のいくらで何個作れば儲かるの理想とは程遠い世界だった。
結衣、美樹ともに再スタートする場面で映画が終わりますが
絵具が水に溶けていくエンドロールは目を引きます。
車内のシーンが多いのですが、信夫と美樹の会話メインかと思いきや
そのままのアングルで夜中に友人と歩いている結衣を強引に車に押し込んだりと
どれも印象的でした。説明や会話少なくても人間模様が伝わり主演の中島セナは初めてこの映画で見ましたが気難しい性格の主人公を難無くこなし物語に溶け込んでいたと思います。
何処の業界もそうなのでしょうが、コネや金を積まないと成功しない闇も描かれ
やりたい事を100%やる事は難しいですし、時に妥協も必要。
ただ、新しい事に挑戦する人達を絶やしてはいけない、改めて理想と現実を考えさせられる映画でした。
小島監督の次回作品が楽しみです。
ほべつご
伝統の殻を打ち破るにはその伝統の何たるかを理解しなければ、仏の掌で暴れてるだけになりかねないし、自分のパッションを表現するには基本技術習得が必須なのだが、これらは往々にして面倒で退屈だ。また、工芸の世界は表現意欲と職人気質と損得勘定のバランスのうえに成り立っている。これらを理解して順応するには中学生の経験値は低過ぎるし、不器用で無神経な父親(に象徴される俗物性・日常性)に邪魔されれば尚更だろう。
まずは結衣がそのパトスを描き切るための確かな技術を身につけて欲しい。
主演の中島セナが無表情芸で好演。
目的と手段とただの趣味
父親と祖母と3人で暮らす独特な色彩で絵を描くことが好きな14歳の娘が拗らせる話。
写実的な絵を教える美術教室に通いつつも先生の言うことに聞く耳を持たない主人公が、有田焼の窯元で修行中のオリジナリティたっぷりのデザインを描く父親の彼女の絵に惹かれるけれど…というストーリー。
タイトルやあらすじ紹介をみると、兎に角絵が大好き!な主人公なのかと思いきや…The中2。拗らせてますねぇ。
言いたいことわかるけれど、話しの持って行き方が極端過ぎて、なんだか絵も色彩もどうでも良い様に感じてしまったし、オヤジのダメっぷりはなんだった?賞レースの生臭いところもそれだけの為?
なんだか広げ過ぎてとっ散らかってしまったものを、理由もなくまとめて終わらせられた感じだった。
それと「煮詰まる」と「行き詰まる」間違えてますね。
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