劇場公開日 2024年5月18日

「400年の垢。」ちゃわんやのはなし 四百年の旅人 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0400年の垢。

2024年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

秀吉の朝鮮出兵の引き上げのときに、日本に連れてこられた陶工たち。実態は、拉致。文化も風習も違う日本にやってきて、その苦労はいかばかりだったろうか。差別もあっただろう、孤独に苛まれただろう、自分とは何者なのか常に自問してきただろう。400年後の今、その子孫たちは先祖から受け継いだ焼き物の技術を脈々とつなげてきた。立派なことだと思う。紹介されているのは薩摩焼、萩焼、上野焼、深川焼などなど。薩摩焼は、ほぼ全編にわたり当代15代沈壽官氏が登場し、司馬遼太郎と親しかった先代のことやご自身の修業時代の出来事を語っている。話がうまいなと思ったが、どうやら講演依頼も多く人前で話すことに慣れておられるそうだ。彼は若い時、韓国の大学院進学を志した。面接の時、「400年の垢を落として」と声をかけられたことに憤り入学を蹴った。そして自らのアイデンティティに悩む。そのときに司馬さんから「民族というのは些末なものです。種族ではありません。民族、国家を超越する、日本人として強く生ききれ」と言葉をかけてもらったそうだ。それを「トランスネイション」という司馬さん独特の言葉もいただいたそうだ。まさに"日本人とは何か。"を問い続けた司馬さんならではの言葉だと思う。

栗太郎