「ドラマのレベルではない圧倒的な映像!実写化不可能と言われたが眼前に広がる映像は絶対観るべき!」沈黙の艦隊 シーズン1 東京湾大海戦 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマのレベルではない圧倒的な映像!実写化不可能と言われたが眼前に広がる映像は絶対観るべき!
この作品には二つのテーマがある”日米安保”と”核”だ。
映画公開時映像は凄いが独立国「やまと」建国までで終わった尻切れとんぼ感の話だった。
しかしあれは、あくまでこのドラマのための壮大な予告映画だったと思えば納得。
そして、本作VODの続きがすごい。
原作とはキャラクターが違ったり現在の世界情勢に合わせた脚色はあるものの、全然ありな設定。
第一話から見応え十分!
潜水艦が潜航するシーンなどはアニメや漫画では表現出来ない迫力、暗い海中の映像も圧倒的だ。
大沢たかおの艦長存在感半端ない、原作よりピタッとくるくらいカッコイイ!
とにかく、実写化が今だという事があまりにもリアル過ぎて怖いくらいだ。
原作は、1988年米ソ冷戦中に連載された、そして1991年ソ連崩壊と共に一旦は終結したかに見えた、そんな時代に作られた作品。
当時は実写化は不可能と言われた、実写化してもただの絵空事になってしまうからだ、しかし“今”は果たしてどうなのだろうか?『沈黙の艦隊』を実写化するならいま」だった理由を主演製作の大沢たかおは「この作品は“今”だから実現した。5年前だとしても、5年後だったとしてもできなかった」と力説している。
製作の話しが進んだ頃はまだウクライナ戦争は始まってなかったが、大沢曰く「ウクライナ侵攻の前でしたが、中国と台湾の間の緊張が高まるなどしており、日本はどうしたらいいのかを考えるきっかけになるような映画を作ってもいいのではないかと考えました」と明かしている。そして「30年の時を経ていますが、当時(かわぐちかいじ)先生が考えていたこと、問題視していたことが全く変わっていないんです。むしろより浮き彫りになり『沈黙の艦隊』で描かれていることが実際に起こりつつあります。だからこそ“今”実写化するべきだと思っています」
今や世界の警察と言われたアメリカはいない、ウクライナ戦争もこのままいけば勝利は無い。
受け入れがたいがその現実を世界は突きつけられようとしている。
日米安保の傘の中にいる日本も決して他人事では無い、アメリカが日本を守ってくれるなんていうのは日本人が勝手に思ってるだけの事だ。
この作品の中でも「“核“保有原潜をNYへ近づける訳にはいかない」という米艦隊の司令官の言葉、例え同盟国であっても決して信用などしていない。核保有国であり唯一核をもって攻撃した事がある国、だからこそ核を使って攻撃される事の恐怖を常に抱き、その核で攻撃されるかもしれないという恐怖を一番知っているのだと思う。そんなアメリカが沖縄に駐留している意味は日本を守るためなどでは決して無い、では何なのか?
それはアメリカに利益があるからに他ならないという事を忘れてはならない。
(極論ではあるが)行き着くところはアメリカファーストなのである。
日米安保。その言葉でアメリカに守ってもらえていると勘違いしている日本人にその幻想をまざまざと見せつけている。
そして、「沈黙の艦隊」がなぜ沈黙の艦隊なのか?それは
〈核兵器があってもなくても「核の脅威」を示すことが可能であれば、沈黙の艦隊は成立する〉ということである。
つまり実際に核を保有しているかどうかの明確な根拠がなく運用能力が未知数であっても
〈核を保有している、そしてその核を使う能力の“可能性”がある〉
それだけで十分核の脅威をもってしまうという事だ、それは正に北朝鮮と同じではないだろうか。
いや、北朝鮮に限ったことではない、”核”という存在を生み出してしまった人類が抱えた永久的な脅威である。ドラマの中で上戸彩演じる記者が海江田艦長に核を持っているか聞く場面がある、海江田は「YES」と答える、このやり取りは原作には無い。しかし実際”核”を保有しているかどうか不明だったとしても十分なのだ、核を持っている可能性がありその核を使う能力が十分あると分からせるだけで十分だからだ。
東西冷戦が終わったかのようにみえて、実はその火種は残っていたんだとわかった現代。
例え領土がなくとも、核を使用する能力がある原子力潜水艦というだけで一国家として振る舞うという一見荒唐無稽な事が実際に起こりえると感じずにはいられない。