箱男のレビュー・感想・評価
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映画館というハコから
導入は不思議な可笑しみもあって面白かった。
堅苦しい言葉で難しいことを語っているようでその実ただの屁理屈、というのは、森見登美彦にも通ずる。
しかしそれは罠で、理屈で考えちゃいけなかった。
4人の登場人物はみんな変。
箱男になりたがる気持ちも、偽医者の完全犯罪とやらも、軍医の嗜好も、葉子の目的も、何も理解できない。
感情の動きも行動の理由もすべて摩訶不思議。
途中の箱vs箱や警察の取り調べは、偽医者がノートに綴った内容であると明示される。
ここで、どれが現実でどれが妄想かが曖昧になっていく。
そしてそれが完全にどうでもよくなってから、今となっては有り触れたオチが待っている。
何度も「終わりかな?」と思うくらい長く感じたし、あれやりたいだけなら100分で収めてほしい。
男性陣が初老であることで滑稽さや悲哀が増していたのは、「27年越し」の怪我の巧妙。
そちらが狂った演技をする中で、葉子の無感情芝居が対比で映えるのも見事。
テーマ性や作風が変わったり戻ったりするのは、ノートの“書き手”が変わってるから?
しかし無駄に混乱するばかりで、残ったのはどうやってしゃがんだ状態で走ってたのかという疑問。
それ以上に裸体とふくらはぎであった。
あと、超久しぶりに『箱ガンダム』思い出した。
難解な原作ゆえに推薦はしません
この監督でしかも永瀬正敏さんの主人公で1997年の安部公房の生前の製作推挙も貰って、製作出来なかった作品を時を越えてって何よ!
しかも浅野忠信と佐藤浩市まで出演だって、今現在最高の男優3人!
原作は当時難解ですから話は知っていても読破は出来なかった作品。原作に結構沿った内容になってそうです。
観ていても眠そうになってしまうほどでも途中効果音で奇抜な音を作り出して前半は持ち応える。
後半は謎の女葉子の白本彩奈さんの美しさで目が冴える。
話は難解です。無理して観なくても楽しい映画を観ていて良いですね。
白本彩奈さんが綺麗です
なんとなく言いたいことはわかるけど…長い(笑)
お前がそう思うんならそうなんだろう
お前ん中ではな
人と話してて、まるで自分の意見のように話してるけど、よくよく聞くとテレビの受け売りだったり。
自分の意志で生きてるつもりでも、実は誰かの思惑で生かされているのかもしれない。
そういう社会風刺なのかな…と。
まあどう取るかは人それぞれ…という感じ。
とにかく白本彩奈さんの裸体の美しさ…。
見てなかったアマゾンズをみてみようと思います。
DRUG
強烈なビジュアルに惹かれての鑑賞。原作は未読です。
心の声がメインになるタイプの作品であまり好みではないなとは思いましたが、それ以上に難解さが極まったような作品でこんがらがりながらなんとか観きりました。
変態プレイのシーン、文字で読む分には色々と想像できるのかなと思いましたが、いざ映像化されるとそういう映像にしか見えず、白本さんは特に体を張っていたなという印象だけで終わってしまい、物語の本質が見出せずにもったいないなとは思ってしまいました。
今作の意外な収穫はアクションシーンの良さでした。
箱男がしっかり箱男のままスピーディーでダイナミックなアクションを繰り広げれてくれますし、渋川の兄貴が狂ったように石を飛ばしてくるのも込みで序盤から方向性は思ってたのと違うけどこれは良いぞ!とテンションが上がっていきました。
中盤まではなんとか見れていたんですが、パラレルワールドに突入したのか、原作の難しさが限界突破したのか、セリフやモノローグの物量が半端じゃない事になって頭が追いついていかずで大変でした。
もっと文学の勉強をしとけば…とこういう時思うんですが時すでに遅し…。
ラストシーンでは観客に問いかけるシーンになるんですが、まぁなんとなくこうだろうなと予想が立てれてしまい、全く同じセリフが浮かんでそのままのセリフが吐かれたのでおぅ…ってなりました。
メタ的視点は好きですが、オチがそれかーとはなりました。
原作に興味は持てたので読んでみようとは思いました。
鑑賞日 8/24
鑑賞時間 10:40〜12:55
座席 C-2
石井そうご( 漢字が出ない) 改名したんだ?
27年前にクランクイン直前に企画が飛んでからの、今更ながらの復活を遂げて見事公開にこぎつけた本作。今年が安倍工房生誕100周年という事でいいタイミングだったんでしょう。
安倍工房は読んだ事はないが、ポスターの箱男のビジュアルが、ぼっちちゃんの完熟マンゴーみたいで気になり鑑賞。
永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩一と無駄に豪華なキャストなのにあんまり宣伝されてないよね?
まぁ、路上で段ボールを被って覗き穴から、女性のふくらはぎをガン見して、ふくらはぎの絵を写生している変態の映画ですとは宣伝できないわな?
段ボールにこだわりのある永瀬正敏と浅野忠信は段ボールを被ったまま階段で決闘したり、段ボールを被ったまま全力疾走したりと無駄に体力使いすぎw
これに看護婦のヒロイン白本彩奈が絡んでくるのだが、脱ぎっぷりのいい事ったらありゃしない。
今どき風俗でしかお目にかかれない昔のセクシーなナース服を着てくれるし、浣腸までしてくれるぞ?お好きな人には堪らないですな( おい)
映画comでは白本さんの写真が出てこないけど、例えるなら
「壇蜜からシリコンバックと下ネタを抜いた」
ような、小股の切れ上がった妙にそそる美人さんです。「カメラを止めるな」 にも出演しているとの事。
段ボールを被ったまま、いきなり禅問答が始まったりして、ついていける人がいるのか心配になります。
俺が見た回は計6人ってとこでした。大丈夫かぁ?
見どころは段ボールを被ったままのスタントシーンです。
こんな馬鹿馬鹿しい設定の映画を心の底から楽しめる層ってどれくらい居るのか分からないね?
友達と話していて
「 浅野忠信と永瀬正敏が段ボールを頭から被ってガチで喧嘩するのー!面白ったー!」
と言われても、友達も困るわなぁ。俺はとても面白いと思ったけど。
実写版プーさんに満点つけている人の言う事ってマイノリティだけどな。
話しのネタにはならないけど、シネフィルだったら通ぶれるのでお勧め。これも狂い咲きサンダーロードみたいにカルト映画になるネ!
コミカルと偏執
内面にある歪み、頭でっかちになりながら外界をシニカルな気持ちで覗き、自身を「ホンモノ」になろうとする(外界の人とは違う存在)で、外界の人たちを「ニセモノ」あるいは「覗かれる側」の人と捉えて自己正当化して閉じていく偏執っぽさと性的嗜好のスケベ感は、観にきてる人の内面をエグりにきていて切れ味が鋭い。
けれど、映像はシュールな感じで始終メタルギアソリッドのスネークの潜入っぽさを彷彿とさせているし、箱男同士が戦ってるシーンは、大乱闘スマッシュブラザーズを彷彿とさている。
あと、「重要なことなので、何回も言っておく。」と脳内ナレーションをするくらいに同一フレーズを盛り込んでくるのもコミカル。
音楽は不安と危機を煽ってくるような緊張感が漂う激しめなので、映像とアンビバレントでおもしろい。
ある意味喜劇?
箱を被ったオッサンが、ヒョコヒョコ動いたり、
キレッキレにケンカしたりする様は、とても滑稽で、
ある意味コメディとして楽しもうとしている自分がいました。
だって、やっぱり、良く解んないんだもん!
そういう作品だとは思っていましたが…
安部公房さんの原作は未読だし、
とりあえず、現実社会では、
みんな見えない箱に入ってるよなー、
とは思うけど…。
そーいうこと???
なんとなく厨二病の様だなーとも思ったもので、
だから、もっと若いキャストで観たかったかも…。
でも、永瀬さんで演ることに意味があったんですものね…。
合う合わないは別にして、
流石の貫禄のみなさんなので、
お芝居を観るという部分では満足でした。
佐藤浩市さんは、最近ものすごーく良いです!
ゾワゾワしました。
現代にマッチした安部公房作品の見事さ
ダンボール箱という、力づくで剥がされればひとたまりもないものを被って、匿名性が保証されたと勝手に気を大きくして、小さな窓から覗いた世間を嘲笑う主人公の「わたし」
安部公房の50年前の作品が、現代のスマホ全盛時代のメタファーとして、これほど機能しようとは…という思いだった。
50年前は、多分カメラの普及を念頭においた作品だったのではないかと思われるが、今作では「日記が重要」というセリフ通り、周りをシャットアウトした中から生まれ出た言葉を、勢いのまま書き連ねる「SNS」等のネット状況が、明確に意識されていることは間違いない。
象徴的だったのは、劇中で繰り返される「箱男を意識するものは、箱男になる」という言葉。
自分はこれを聞いて、Xなどで掃いて捨てるほど目にする「執拗に特定の個人に粘着するアカウント」の存在を思った。
冒頭で描かれていた通り、そこに存在していても気に留めなかったり、ないものとして扱ったりというのは、必ずしもその対応の全てを肯定できるものでもないが、社会に生きる態度としては、概ね健全(個人として明らかに闇を抱えていないという意味で)と言えるだろう。
また箱男も、そっと閉じたダンボール箱の世界の中で、小さな窓を通して見たものを、自分の中で処理しているだけなら特に問題は起きない。
だが、箱男の存在が気になり、執拗に攻撃を与えるワッペン乞食のようや存在や、わたし、軍医、偽医者たちのようにスルーできなくなってしまう者たちが現れた途端に、当人たちの間で問題が表面化してくる。
いずれにしろ、そのような者たちの未熟さがこれでもかと描かれているのが、本作ということなのだろう。
そうした、色々と言葉を弄しながらも、結局のところは社会と折り合いが付けられず、欲望的にも幼なさが見え隠れする主人公たちに対し、葉子のなんと軽やかで力強いことか。
男たちより一歩も二歩も抜きん出ている葉子が発する、原作にも出てくる「夏だからじゃない?」というセリフの身も蓋もなさに思わず笑ってしまったが、いよいよ蛹から成虫へと変化するかと思われた箱男が、ヤドカリのように箱を巨大化させただけだったことを察して、静かに立ち去るところもクールだった。
ラストシーンの仕掛けには、ちょっと驚かされたが、最後のセリフはややダメ押し感を感じてしまったので、マイナス0.5。
アート作品のような美術のすばらしさと、光のコントラストや構図の美しさにも惹かれた。
(撮影監督は「PLAN75」や「あんのこと」の浦田さんとのことで納得)
この映画の世界観をもとに、原作をもう一度ゆっくり読み直してみようと思う。
天地無用
阿部公房の作品はなんだかざらざらとして間がうまく読めなくて意図が見えず結局読むのはやめてしまった。
うっかり観てしまった「箱男」
映像化されてもやはりダメだったな〜
アート作品のようにモノクロ画像やぼかした映像が差し挟まれどこを拾い上げていいのか分からなかった。
まず、ほぼ一人称がキツかった。
箱男に注目する人は箱男になる。
箱男って?
箱男は「入る」ではなく「出る」という。
箱に出ることは外界からの逃げなのか、自由なのか。
それを求めて箱男になりたがるのか。
箱の中にはドラえもんのポケットの様にいろんなものが入っている。カメラどこからとった?
箱男は一地域に一箱と決まっている。
だったらどこの地域の箱男も狩られ続け、よりアップグレードした箱男の誕生となるのだろうか。
それは怖い。
そして、ノートの存在。
これが箱男への切符?
まるでデスノートだ。
文字のような落書きのような。
「わたし」は逃げ続ける。
何からか。
見られることからか?
原作から随分時代も変わり、ネットや監視カメラやスマホなどの普及に24時間どこでもその姿は見られる。
そこからの脱出は段ボールに入っても無理だろう。
「見られる側」から「見る側」への優越感か。
とりあえず、わからないことだらけだった。
真の箱男とは誰なのか?
「わたし」は「あなた」
よくわかったのは最初の箱男は足フェチだということ。
今年1番、長い…って思った作品。
ごめんなさい。
私には無理でした。
原作か解説を一読してから視聴すべし
前半はストーリーも比較的わかりやすく、斬新な設定や箱をかぶったままでのキレのあるアクションを楽しむことができる。
しかし後半は、作中で実際に起こったことと登場人物の空想・妄想の区別が付きづらいため展開がよくわからない。そして最後、やや唐突に哲学的な結論を突きつけられて終幕となる。
原作のあらすじや作風を理解していなければ、粗い展開を、斬新な設定と強引な結論でごまかした不誠実な作品といった印象を受けるのではないだろうか。
難解な原作をかなり忠実に映像化した制作陣の努力を感じることができる作品ではあるが、映像作品としての面白さはあまり感じることはできなかった。
箱男=完全な孤立・完全な匿名性=現代のSNS社会のメタファー
タイトルに書いたことが、本作のメッセージかなと解釈しました。
原作は1973年に世に出たものとのことですが、
今でも充分通用するテーマだなと感じた次第です。
箱男は箱に入って社会を見る、それが現代のSNSに通じているとまずもって感じましたし、
他者から攻撃されたり、入れ替わろうとされたりするところも、SNSに通じるなと思うんですね。
コロナ禍では引きこもるしかなかったわけですが、箱男も箱の中に引きこもり、それを正当化している。
まさにここ数年で生まれた課題を、本作であらためて突きつけられているように感じました。
映画それ自体を理解しようとすると大変な難解さだと感じますが、
わりかし自分はこう解釈する・・・的な見方をすると、それなりに楽しむことができますね。
ラストも永瀬正敏演じる“わたし”から、箱男はあなただ!と断言されるわけですが、
その締め方も良いなと思いました。まさに自問自答して終えることで、余韻がたなびくと思いますね。
それにしても箱男が走るシーンや箱男同士で戦うシーンがシュールすぎて面白いです。
もう声を出して笑っちゃうくらいに面白い。わざとやっているんだろうけど、動きとビジュアルがコミカルで面白すぎますね。
それから、葉子役の白本彩奈が美しすぎて見惚れてしまいました。
今後も要注目の俳優ですね。
最後にパンフレットも素晴らしいんです。
大島依提亜さんのデザイン且つ読み応えがありますので、オススメです。
というわけで、非常にアバンギャルドな本作、出来うる限り多くの映画ファンに劇場で観ていただきたいです。
変態小窓とエンジェル葉子。
洗濯機の入った大きな箱を被り他人の日常と女性の足や尻を覗くホームレスな箱男と、医師免許を持たないニセ医者で暗殺者とニセ看護士葉子の話。
箱の中で他人を覗きながらも生活、コスプレした様な謎な男からの攻撃と、ニセ医者からの監視と狙われる箱男から見せてく。
ちゃんと観たつもりではいるけれど、ん~解らない(笑)本作何で観れたと聞かれたら葉子ちゃんのセクシーさとセクシーさとセクシーさと綺麗さ!
中盤過ぎ辺りか終盤の銃撃戦よりも、てかストーリーどうこうよりも葉子のあの後が見たかったし、葉子役の子が気になったね。
とりあえず軍医のしてたニセ医者の疑似プレイは…、ん~羨ましい!(笑)
謎過ぎる〜
タイトルからして絶対に怪しそうな謎の物語だろうけど、たまにはヒーローでもアニメでもドキュメンタリーでも無い不可思議な映画も見てみよう、と佐藤浩市さんらの出演もあり、
軽い気持ちでうっかり見てしまいましたが、予想を上回る謎の映画でした。。
*****
多分引きこもりの人の心理とか、あとどこにでも監視カメラのある一億総監視社会とか、SNSの匿名性とか。。そのあたりのことを
皮肉とかもこめて、視覚的には分かりやすく「箱」というものを使って社会風刺とか。。そのあたりを伝えようと革新的な映画手法を狙ったのかな、と概ね理解は出来たような気もしますが、
女優さんのスタイルが良いことをこのストーリーの中でそこまで示す必要性が感じられなくて残念でした。
意味のある恋愛シーンでもないし。。あそこで偽看護師の彼女が服を脱がなくてもそもそも箱に入ってるだけで充分に箱男という存在の異質性、異常性、日常からの違和感とか表現済みだと思うけど。。箱から彼女を見たいだけって社会風刺でも何でもないしな~なんだこの場面???と、謎が多すぎる映画でした。
病院内に目張り用のダンボール30〜40枚くらい?
これでもかと置いてあるのがもうおかしい。。
しかし永瀬さんとか箱に入った大人どうしが箱のまま喧嘩するとかなんじゃこりゃ????でした。
箱出て戦おうよ。
途中で置いてかれたけど
面白かったです‼︎
最初、完熟マンゴーぼっちちゃんかと思ったけど全然違いました‼︎
序盤から「夜明けのすべて」で知った、渋川清彦さんが武器を持って箱男を追っかけてて、アクション映画始まった⁈って思ったけど結構そのシーン面白かったです‼︎
あと箱男と箱男で戦うシーンも面白かったです‼︎
ストーリーは途中からちょっと分からない部分が出てきました。
ラストの主人公の言葉はなんとなくなら分かりました‼︎
永瀬正敏さん、浅野忠信さんの演技はとても良かったです‼︎
「箱男」・・って、いわゆる怪人by石井岳龍
石井岳龍は阿川佐和子との対談でキッパリと「自画像です」
とも言っている。
「一瞬して永遠の瞬間を作り上げる・・・それが映画である、とも。
しかし、伝わっただろうか?
映像は実に面白かった。
映像が刺激的でアートだ。
今日日、実験的なこの映画が完成に漕ぎ着け、世界にお披露目される。
とても嬉しいことです。
しかし娯楽性不足とテーマを無理クリ納得させる力技が不足と
感じてしまいました。
時代が求めてる映画と乖離している感が否めないのです。
しかし監督は異端を畏れてはいない。
俺は俺。箱は箱。箱男はお前だ。
段ボールを頭からスッポリ被って、上半身を隠して、
長細い窓(隙間)から、世界を覗き見している奇妙な男。
良くも悪くも《前衛》なのだと思います。
(前衛とは・・・時代に先駆けていること)
なので、1973年に安部公房が「箱男」を発表したときは、
この小説は時代に先駆けていたのだと思います。
しかし2024年の今、この映画から訴えてくるテーマ。
★解説の冒頭を引用します。
『完全な孤立、完全な孤独を得て、
『社会の螺旋から外れた「本物」の存在・・・
『それが「箱男」………………………………………後略』
多分、石井岳龍監督はヌーベルバーグの尻尾をくっ付けている
のだと思う。
箱に住み、世界を覗き世界を見下す。
永瀬正敏は隈取りをしたり、化粧したり、時に素顔だったり。
面白いシーンも多々あります。
段ボールの蟹歩き、
ニセ箱男とのバトルは正に真骨頂のユーモラス!!
箱男が増殖するところ。
永瀬が浅野が佐藤浩市が目だけ覗かせて、言い合いをするシーンや、
そして、なんとラストに、箱男は30個位に増殖する。
しかし箱男は無力だけれど、段ボールの世界では自由だ。
映像は黒白とカラーを混ぜて、そこに墨絵を足したような色味で、
ザラついた画面はトンガった角と線で出来ている。
実にアートだ。
シーン・1シーンを切り取ると絵画である。
その中で、
丸いのは葉子の裸身だけ。
やはり27年前の企画だなぁ、とは思う。
27年の石井岳龍監督は40歳だし、
永瀬正敏は30歳。佐藤浩市は36歳だ。
やはりその年齢の彼等で観たかった。
特にドイツでクランクアップの日に、「中止」
その知らせを受けて永瀬正敏は東京に帰ってすぐ入院して点滴を3日間
受けたほどショックだったという。
27年前の永瀬正敏にはの若さや無謀があったと思う。監督にも。
そうだ、無謀さが足りないのだ。
2024年になってもウイスキーのような熟成せずに、。
なんとも青臭い石井岳龍だ。
完全な孤独、
完全な孤立、
あまりにも丈夫で壊れない《箱》と《箱男》
暗くて陰気な永瀬正敏の《箱男》
それは鬱屈を抱えているから、当然かもしれない。
それに憧れて《ニセ箱男》になる浅野忠信。
ユーモアたっぷりで茶目っ気のある浅野忠信の《ニセ箱男》
は魅力的だ。
《箱男》と《ニセ箱男》のバトル。
実に面白い。
《補足》
診療所がある。
軍医(佐藤浩市)がシャッターで仕切られた地下に、
半分死にかけて暮らしている。
診療はニセ医者(浅野忠信)が行う。
看護師の葉子(白本彩奈)がいて、軍医の性処理を
担っている。
佐藤浩市が老獪でいい味を出している。
この映画は幻想と現実が交差し、その世界は捻れている。
看護師の葉子(白本彩奈)の存在だけが、瑞々しく色っぽい。
石井岳龍は葉子を美しく撮った。
女優をこんなにも美しく撮る石井岳龍は優しい、優しすぎる。
「蜜のあわれ」でも二階堂ふみが、本当に色っぽくて可愛いかった。
金魚の化身だったが、(この映画大好きだ)
葉子の白本彩奈は、魅力的過ぎて、良し悪し、だった。
美しい、あまりに美しいヌード。
スラリリと伸びて程よくふくらみ健康で影がない。
葉子の存在そのもの生命力に、箱男は惨敗。
白旗を上げるしかない。
葉子は、箱男、ニセ箱男、軍医・・・の中で唯一固有名詞がある。
渋川清彦は、なんだろう。
右翼?左翼?応援団長?
彼も破壊的かつエネルギッシュで魅力的だった。
箱男が一目でメロメロになる葉子。
美しさの功罪か?
葉子の存在は「蜜」であり「眼福」だが、
「箱男」の存在理由を弱めてしまった。
この映画に真に足りないのは、渋川のように無鉄砲さと
エネルギー。
永瀬正敏は真面目に考え過ぎたと思う。
もっとやけっぱちの開き直りで演じたら
どうだったろう。
永瀬に世界の不条理を感じる。
しかし世界の広がりを感じない。
それは演出と脚本の罪か?
音楽は不協和音が不快感と歪を増幅する。
ラストの箱男のひと言。
「箱男はあなたです」
これが言いたかったことだとしたら、
画一的であり、惜しい‼️
パンチの効いたラストが欲しかった‼️
やはり観念の映像化はむずかしい?
『友達』のアレンジでポン・ジュノ監督のパラサイトが成功したように石井監督にも期待していたのだが、どうもいけない。原作の“解釈“に拘泥していてかなり息苦しい。いかにも再現された箱ではなくヴィジュアル的にもっと奇抜な箱でもよかったのでは?これが監督として極めた箱だみたいな。所詮、映像は観念に勝てない。例えば、世界一の美人と言えば話の“読者”なら個々の想像で成立するが、映像ではどんな女優やAIでも異論が噴出するだろう。作家から”娯楽にしてくれ”と言われたらしいので思い切ってSFにしちゃうとか…
ただ劇中の女優が山口果林とダブって好印象。この作品は君へのラブレターだよの言葉を安部公房から貰った山口果林(当時不倫 のちに同棲)安部のどの作品にも共通する謎めいていて主人公につれない女性像は山口や安部夫人の影響かも。
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