「「今っぽいアクション映画」ではあるけれど、「突き抜け」がない。」ビーキーパー すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
「今っぽいアクション映画」ではあるけれど、「突き抜け」がない。
◯作品全体
「引退したプロフェッショナルが個人的な理由で暴れまわる」というプロットははるか昔からあるけれど、この作品が『ジョン・ウィック』以降の作品だと感じるのは、「プロフェッショナルそのものが凄さを語るのではなく、敵側が凄さを語る」という部分かもしれない。
『ジョン・ウィック』が確立したプロットは、いまやアクション映画の王道とも言える。『SISU』、『Mr.ノーバディ』…時代背景や主人公の個性は違えど、ほとんど同じプロットでありながら、未だにその隆盛は衰えていない。
本作もその括りになるだろう。ジョン・ウィック同様、無口な主人公というのも加え、主人公以上に敵サイドの人間が話す。主人公は行動によって自分の主義を語り、それを想定して敵側は立ち回る…という構図も同じだ。
見飽きた…といえばそうだけれど、それでもなめてかかってくる敵に対して、完膚なきまでに叩きのめすカタルシスの快感に飽きはこない。
あえて物足りなさを挙げるとすると、アンチ・ヒーロー度合いが足りない。相手から恐れられるためにはそれ相応の容赦なさが必要だけど、グロテスクな割には悪をなぎ倒していくほどの凶暴さがない。詐欺を働く親玉だけにしか痛い目に合わせないところに、不完全燃焼な気持ちが残る。終盤でさんざん主人公をなめ腐る悪の中間管理職に対し、正義の鉄槌がホチキスをパチパチやるだけっていうのは、『イコライザー』のようなインパクトある鉄槌や『ジョン・ウィック』のような容赦ない殺傷手段と比べると、なんとも鉄槌が軽すぎる。
ジェイソンステイサムというスターが魅せるかっこよさはあれど、それが足枷になっているようにも見えた。観客は彼に「正義」と「クールさ」の両立を無意識に期待してしまうからこそ、アンチヒーローとしての過激さには自然とブレーキがかかる。
「今のアクション映画のトレンド」を概要として感じ取るには申し分ない。
年明け早々に公開した映画だったが、そういう節目に大画面と迫力ある音響で浴びるべき作品だったのかもしれない。
〇カメラワークとか
・蜂をテーマにしたオープニング、かっこいいんだけど、あれもジョンウィック以後な感じだったな。スローモーション、カメラの緩急、アートチックなCG。
〇その他
・組織「ビーキーパー」の個性はもっと掘り下げてほしい要素だったな。次作があるとしたらビーキーパーvsビーキーパーの構図をもっと前に出してほしい。この作品に個性をもたらすとしたらここしかない。
・ヒロインとメロドラマをやらないっていうのも今っぽさを感じる。黒人女性というのもそう。
・ヒロインの「正義とは」っていう葛藤が描ける構図だったけど、意図的に避けてたなあ。物語がとっ散らかることを避けたかったんだけど、その結果存在感が非常に薄くなってしまっていた。