「極悪党集結」ビーキーパー 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
極悪党集結
シンプルかつ精緻に作り込まれたアクション映画であり、
その魅力はまさに「プロの仕事」の数々だ。
その根拠は、
無駄を削ぎ落とした演出とシナリオは、
観客の感情にストレートに訴えかけるシンプルな構造で、
主人公がその怒りを燃やし、闘い続ける姿が描かれている。
ドラマ部分に過度な尺を費やさず、
設定が必要最低限にとどまっているため、
テンポよくアクションに引き込まれていく。
ジェイソン・ステイサムが演じるビーキーパー(元特殊部隊員)の屈強さは、
米国、CIA、FBI、SEALs、デルタフォースなど、
さまざまな組織と微妙な距離を保つ設定によって、
映画全体にリアリティと緊張感が与えられている。
武器や装備の扱い方、
1対1の格闘シーン、
さらにはカメラワークやライティングに至るまで、
すべてに隙がなく締まっており、
アクション映画ファンの最低限の評価は得るだろう。
FBI局内では雨漏りをバケツで受けて、
修理するマヌケな職員を背景で描くとか、
無駄のないカット割りでテンポよく展開し、
常に観客を飽きさせない、
極悪党を集結させてもサメやアライグマまでは脱線しない、
あくまで「人間の戦い」に焦点を当てているのも無駄がない。
昨今のアクション映画は、
ドラマ部分の厚みを求められる傾向にある。
しかし、本作は、そんなトレンドに逆行し、
シンプルなアクション映画として完成している。
善悪の葛藤も最低限で、
親子の絆も、あくまでシンプルな設定で、
ドラマ部分に必要以上に焦点を当てず、
尺は使わないアクションと感情で適度にバランスを取っている。
以上が「プロの仕事」の理由だ。
このように本作はアクション映画として非常に洗練されており、
映画に詳しい人ほどその完成度を評価するだろう。
とはいえ、
昨今のアクション映画においてはドラマ部分の充実が求められる傾向にあり、
本作がどの程度の動員を記録するのか、
その反響が楽しみである。