ビニールハウスのレビュー・感想・評価
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裏目
たしかに半地下のほうがマシかも
ビニールハウスが出てくる韓国映画(しかもそれが燃える)というとバーニングを連想してしまうが、こっちは自傷癖、認知症、盲目、知的障害、非行少年…とネガティブ材料をいろいろ集めて展開していくサスペンスで、劇伴ほぼなしの緊迫感に満ちた100分間はかなり楽しめた。
しんどい要素を詰め込んだ酷い話なのだが、それらのネタの使い方がうまくて伏線回収も丁寧。小倉智昭似の盲目の旦那に悪事がバレそうになるところでは、張り詰めた場面にも関わらず(逆にそれゆえに)爆笑したくなるシーンにもなっていたりで、ホントに気が抜けない(笑)。
主人公役のキム・ソヒョンは序盤の不幸で枯れた感じから、話が進むにつれて美人になっていくように見えたけど、気のせいだろうか(まあ元から美熟女なんで…)。
綻び
ある一つの出来事をきっかけに、誤った選択をしてしまったがため破滅へと突き進んでしまう事態に。人生においては何をやっても裏目に出てしまうことがある。そんな負の連鎖を描いた作品。
主人公ムンジョンはビニールハウスで暮らす訪問介護士、一人息子は罪を犯して少年院に、実母は認知症で施設に入っている。彼女自身は知らず知らずに自傷行為を繰り返していた。
そんな境遇でも介護先では献身的に介護を行う、しかし同じく認知症を患うその家の奥さんからは日々罵倒されていた。
恵まれない境遇ながらもけなげに生きようとする彼女の精神はもはや限界だったのかもしれない。そんな彼女に追い打ちをかけるように悲劇が訪れる。
予告編で感じたほどサスペンスフルな展開ではなく、結構静かに物語は進む、途中眠気に襲われるほどに。でも奥さんの死体を運ぼうとしてるときに盲目の旦那さんが帰ってきてしまったりと結構スリリングなシーンもあって楽しめる。この辺のセンスは確かな監督。
誤って死なせた奥さんの代わりに自分の母親を盲目の旦那さんにあてがうムンジョン。このシチュエーションを聞いただけでも思わず笑ってしまいそうになるけど、実際には全然笑えない。
正直に事の顛末を話せばあの旦那さんならわかってくれただろうし、罪には問われなかったかもしれない。ましてやその後、己の認知症を悲観した旦那さんは妻と心中を図るわけで、結局身代わりに自分の母親が殺されてしまうというなんとも皮肉な結末に。
客観的に冷静に考えれば彼女は愚かな選択をしたと傍から見れば思うわけだけど、彼女の精神状態から考えれば正しい判断が可能だったかは疑わしい。あまりの事態に冷静な判断力を持ちえなかっただろう。
苦心してやっと息子と暮らせる家を手に入れ、ビニールハウス暮らしともおさらば。証拠となる奥さんの遺体もろとも焼き払うが、そこには少年院を退所したばかりの息子が忍び込んでいた。
またムンジョンが助言をした同じグループセラピーに通う女性もその助言通りに相手を死なせてしまい、警察には当然彼女からの助言に従ったと自供するだろうし。
不幸な境遇の女性が一つの出来事をきっかけにして更なる不幸に陥ってしまうこの救いようのない物語を通して、なぜ彼女は過ちを犯してしまったのか、彼女のような社会的弱者がこのような事態に陥ってしまうこの社会の在り方を問う意欲作。
通貨危機以後日本以上の格差社会になった韓国、不動産高騰による住居問題、実際に韓国ではビニールハウスを住居としている人がいることに驚いた。また障害を抱えた社会的弱者や高齢化問題、母子家庭の問題等々現代社会が抱えるあらゆる問題を詰め込んだ。本作がデビュー作となる若き女性監督を今後も応援したい。主演を演じたキムソヒョンはその女優オーラを消し去り不幸な女性を全く違和感なくリアルに演じきった。日本の女優さんでいうところ筒井真理子さんを彷彿。
ラストの絵はかなり好き。きっとイ・チャンドンの名作「バーニング」に触発されて作ったんではないか。
清々しささえ感じるBAD ENDING
半地下のがマシってことはないと思うけど…
生き延びるためのサスペンス: 負の連鎖のジェットコースター
負の連鎖がじわじわ広がって物語が展開するサスペンス、ビニールハウスの世界へようこそ。
ここでは、貧困や孤独、介護といった、現代の韓国社会が直面する切実な問題に焦点を当てています。
主人公ムンジョンのようにビニールハウスで生活を余儀なくされる人々の物語を通じて、社会問題に深く切り込みつつ映画というエンターテイメントに落とし込まれた物語をおっていく。
盲目の老人テガンと、重い認知症を患う彼の妻ファオクの介護士として働く彼女の姿は、重苦しい現実を突きつけます。
この映画は、負の連鎖がどのようにして広がっていくのか、その過程をじわじわと描き出しています。社会派映画好きからホラー映画愛好者まで、誰もがこのサスペンスに夢中になるでしょう。終始、息をのむ展開に「あー!」と叫びながらも、目を離せません。
映画の終わりに向けて連なる出来事が次々と引き金を引き、それは止まることはなく
駆け巡ります。映画を観終わってしばらく頭から離れないかも
救いのない不幸なパズルが完成してしまう
事前知識も期待値もゼロで見に行ったのですが、なかなかに面白かった!!
主人公が局面局面で悪い方向の選択肢を選び続ける話で、よくもまあ、ここまで不幸な要素を詰め込んで、思いもしない最悪な結末に話をまとめられるものです。
細かなツッコミどころやご都合主義的な部分もありますが、なかなかの剛腕で話を進めていきます。
ひとつ疑問なのは、小説家の先生と不倫相手は同一人物? どこかのシーン見逃してたかな?
こちら監督の長編デビュー作らしいので次回作以降に期待したいところです。
タイトルなし
ビニールハウスという題名の割に、それ自体のマイナス部分がほとんど描かれてなく、逆に床もしっかりしてそうだし、家具も冷蔵庫も流し台もあるし意外と住みやすそう!と思ってしまった。
介護描写ばかりが長く描かれてましたが、肝心の主人公の数々のやらかしを放ったらかしたまま、いきなりエンドロールだったのでビックリです。
ビニールハウスと言うより軍用テント
Wisdom
キャッチコピーはアレですが、介護の闇を描くのかなと気になって鑑賞。
一つのズレがやがて大ごとになっていくという感じの作品ですが、介護や障害にもフォーカスを当てて、それらが基本的に悪い方向へと進んでいってしまうのが今作の特徴だなぁと観ていて思いました。
夫婦を介護してる女性が奥さんに悪態をつかれたりするシーンは観ていてこれリアルの方がもっとキツいんだろうなと考えてしまったり、胡散臭い集会の人に懐かれたら実際はもっと面倒なんだろうなと思ったり、現実に近い感じで作品を描いているのもあって、淡々としていましたが、エンタメには見られない陰鬱さがあって良かったと思います。
途中、介護してる奥さんを事故で殺してしまってから事態は一変するんですが、ここまで意外と長いのもあってやっとかと思ってしまいました。
そこから自分の母親を身代わりにしてやり過ごす日々が続くんですが、なぜかうまいことすり抜けれていましたし、身代わりの面白さはそこまでなかったかなと思いました。
ラストシーンこそ中々にインパクトがありましたが、どうもそこまでの道のりがゆったりだったのもあって、あの燃え盛るシーンの哀愁にうまく浸れなかった感じがありました。
題材こそ良かったものの、不幸だらけだと観ているこちらもズシーンと気が重くなってしまうなと思いました。エンタメって難しいです。
鑑賞日 3/19
鑑賞時間 17:55〜19:45
座席 F-3
韓国の社会問題
床を拭くムンジョンが頭に残る
言葉は悪くなってしまいますが良い意味で胸糞悪いというか、終始心がザワザワ、ずっと地を這うような暗い雰囲気が続きます。でも、こういう胸焼けするような目を背けたくなるような現実だから社会問題って言うんだろうなと。
ムンジョンが床を拭くシーンが何度かある。その掌に込められた力から、それぞれ異なった感情が感じられるのが印象的だった。
母親ってのはやはり何があっても子供への愛を捨てないものなんだね。息子はそんな母を軽蔑してる感じだけど…。子供のためならなんでもやってあげたいという思いが歪んだ形で表出してしまった。
グループセラピーのシーン。少し前に見た「夜明けのすべて」にも出てくるけれど、まるで雰囲気は逆。不安を和らげるというよりは、一歩間違えれば危うい刺激に触れる場となっており、これだったら個別カウンセリングのほうがいいのでは…と見ていて辛くなった。ムンジョンは何か精神疾患を抱えているようだったけど、どんな病気に当てはまるのかはわからなかった。
暗闇から脱出できない後味悪いラストになっているので、平常心でいられるときに観ることをオススメします(^^;
共感できたのは「おじいさん」だけでした。
釜山の映画賞で賞も沢山もらった作品ということで、かなり期待して観た作品。が、正直なところ面白くなくてがっかり。おそらく、まず主人公が好きになれなかったこと、そして主人公の息子に同情もなにもできなかったことが一番大きな原因かと。主人公の息子は単なる不良行為で少年院に入ったのだと思いますが、そこに何か同情すべき理由が描かれていたら、もっとこの作品に入り込めたかもしれません。息子が少年院に入った理由がただの不良行為でも、母親は息子がかわいいのは理解できます。けど、単なる観客としてはそこに「ドラマ」がほしかったなと思いました。息子の為に罪を重ねて、破滅していく女性の物語ですから。
それから非常に不謹慎な感想ですが、ビニールハウスの家が想像していたより立派で、ここで息子と頑張れば良いのにとも思ってしまいました。
セラピーの会で知り合った女性が車中でとった行動も、早いうちから最後こうなるだろうと予測がついてしまい、パラサイトのようなあちこちハラハラするような場面も少なかったです。(ここでハラハラしてほしいのだろうと思う場面は色々ありましたが)
ただ、主人公を信じる優しい雇い主のおじいさんだけは、とてもいい人でほっとしました。
以上、厳しめなレビューになりましたが、エンディングにははっとさせられましたし、どの役者さんも素晴らしい演技でした。
「長編デビュー作」を味わう
イ・ソルヒ監督、本作が長編映画デビューで脚本も自らのもののようですが、素直に面白く良く出来た作品だと思います。正直、都合の良さを感じざるを得ない部分は多いです。或いは、描かないことで胡麻化していると思える部分も少なくありません。ただ、予想できる展開と思いきや、そこにちょっとしたアイディアがプラスアルファされていて「有りがち」とは片づけることのできない「光るもの」を感じさせます。
また、バジェットの都合もあるのでしょうが、売れっ子ではなくドラマ中心に活躍する実力十分なキャスティングも効果的で、特に老人役の方たちのしびれる演技がそこはかとなく不穏で、虚実の判断が出来なくなった状況の不気味さは不安を掻き立て、その場から逃げ出したくなる衝動にかられます。
どうしても映画館というような作品性ではないものの、潔いくらい説明は省いているため、何も判らない序盤は特にノリにくく、配信だと集中力が試されるかもしれません。或いは、イ・ソルヒ監督の今後に期待をすればこそ、この「長編デビュー作」を味わうためにも劇場鑑賞する価値はあると思います。興味あれば是非。
まあまあだった
予告ですごく面白そうだったのだけど、それほどでもない。ビニールハウスは能登の被災者が実際に暮らしていて大変そうだ。しかし、こちらのビニールハウスは水道が引かれているようだし、暮らし向きは悪くない。暑くも寒くもなさそうだ。
物語はビニールハウスの暮らしではなく、介護と死体の入れ替えなどのサスペンスだ。お風呂で奥さんが死んだ時に通報していればそれ以下はなさそうで、ついそうしてしまうこともあるだろうけど、でもやっぱり通報すればよかったじゃんと思う。出所した息子を焼き殺す展開は悲惨な割に、ドラマとしてはとってつけたようだ。
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