「【"偶発的にパラサイトを企てた罪と罰、そして大いなる報い。”ブラックダークでシニカル且つトラジディな作品展開が精神的にキツイ映画。精神が疲れている方は要注意映画でもある。】」ビニールハウス NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"偶発的にパラサイトを企てた罪と罰、そして大いなる報い。”ブラックダークでシニカル且つトラジディな作品展開が精神的にキツイ映画。精神が疲れている方は要注意映画でもある。】
■少年院に居る息子と再び共に暮らすことを夢見てムンジョン(キム・ソヒョン)は農業用の黒いビニールハウスに一人で住んでいる。
彼女は、高齢の夫婦で、軽度の認知症だが盲目のテガン(ヤン・ジェソン)と重度の認知症で被害妄想が酷いファオク(シン・ヨンスク)の訪問介護を仕事にしている。
何時か息子と住む家を買うために・・。
◆感想
・近年、高年齢化が進んでいるためか、認知症を扱った映画が多いが、今作で被害妄想が酷いファオクがムンジョンに浴びせる罵声や、唾にげんなりする。
ー だが、ムンジョンは懸命に介護をする。テガンは彼女に優しいが・・。-
・ある日、ファオクを入浴させようとしたムンジョンが”私の事を殺すんでしょ!”と掴みかかって来たファオクを弾みで突き飛ばし、彼女はタイルに頭を打ち、絶命する。
ー 慌てたムンジョンだが、布団にくるみテガンの車で何とか黒いビニールハウスに運び込み、タンスの中に遺体を収容する。-
・精神的な悩みを抱えている人たちのミーティングに初めて出た自分の頬を叩く自傷行為が自然に出るムンジョンは、精神薄弱の気があるスンナム(アン・ソヨ)に気に入られ、“先生”に悪戯されていると思われる彼女を黒いビニールハウスに連れて来る。
ー この“先生”が、ムンジョンのセフレである所も、皮肉である。-
・ムンジョンはファオクの代わりに認知症の母を、テガンの家に連れて来る。
ー テガンは最初は気づかないが、徐々にファオクではない女の存在を、自身の認知症が進んでいると決めつけ、自分を介護してくれたムンジョンに多額の謝礼を息子を通じて渡し、自ら、縊死する。-
■ムンジョンが、何時から意図的にパラサイトを企んだかは、観る人の判断によると思うが、スンナムの言動が大きいと思う。”殺しちゃえば良いのよ!。”
■ラストはシニカル且つトラジディな作品展開である。
漸く手に入れた高層マンションの床を綺麗に拭いているムンジョンの姿。
その後に、少年院を出たムンジョンの息子が共に院を出た少年達と、黒いビニールハウスにやって来る。酒を呑みだした彼らだがムンジョンが急に帰って来たことで、慌てて隠れるが、ムンジョンはそれに気づかず、ファオクの遺体を入れてある箪笥や部屋中にガソリンを撒き火を付けるのである。
<この作品は、喫緊の問題である認知症、高年齢化した社会、低所得者層の問題を織り込みながら、負の連鎖が止まらないストーリー展開に、引き込まれる作品である。>