劇場公開日 2024年8月23日

「韓国現代史の暗部を描く映画はハズレがない」ソウルの春 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5韓国現代史の暗部を描く映画はハズレがない

2024年9月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

映画「タクシー運転手」で市民を虐殺していった軍事政権が作られる過程が描かれる。また、映画「KCIA 南山の部長たち」で大統領が暗殺された直後の話でもある。
まず全斗煥(役名はチョン・ドゥグァン)を演じたファン・ジョンミンのなりきりがすごい。そして盧泰愚(役名はノ・テゴン)もなかなかそれっぽい雰囲気を出している。この時代の韓国の暗部を描く映画は意外とたくさん作られていて、軍事政権時代とはもう違うんだという韓国の決意を感じる。
彼らが起こしたクーデターとそれを阻止しようとした首都警備司令官という構図だが、史実を元にしているからクーデターが成功することはわかっている。明るい終わり方でないことも予想はつく。だからこそちょっと驚いてしまった。クーデターを阻止することができたチャンスが何回もあったことに。あそこであいつが尻込みしなければとか、あんな優柔不断な先延ばしをしなければとか、反乱軍を甘く見ていた軍の上層部と大臣たちの判断がクーデターを成立させてしまったということだ。なんということ。これが後の光州虐殺を生み出すのかと思うと苦しくなる。
この映画を面白いと言っては不謹慎だが、最後まで続く緊迫感、重厚な人間ドラマ、とても観応えのある映画だったことは間違いない。ただ、空挺旅団の配置や動き、軍部内の関係性(それぞれがどちら側なのか)がとてもわかりづらい。当たり前ともいえるが。なので若干ハードルは高めだ。
この約7年後に映画「1987、ある闘いの真実」の民主化闘争が起こるということだ。終わりに感じたモヤモヤを解消するために、再度鑑賞したほうがいいかもしれない。

kenshuchu