「緊迫の124分」ソウルの春 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
緊迫の124分
124分、緊迫感が途切れること無く続く。
テンポよく一気に見てしまう。
反乱軍vs鎮圧軍の2極対立構造で見せ、俳優が個性的で一目で誰か分かって混乱が少なく、複雑な状況を説明するのに地図を出したり俯瞰で捉えたりと、複雑になりがちな内容をわかりやすく見せる工夫があり、最後まで迷子になることなくついていけた。
多少のフィクションはあるのだろうが、こんな甘い計画のクーデターが成功するわけないと思っていたら、あれよあれよという間に反乱軍が首都を制圧してしまった。
政府や軍の高官の無能っぷりに呆れる
反乱軍を余裕で鎮圧できる場面がいくつもあったのに、都度鎮圧側の高官たちの判断ミス(事なかれ主義、無責任、腰抜け)でせっかくの機会を逃し続けて、よもやのクーデター成功、ひとり獅子奮迅のイ・テシンの無念さいかばかりか。チョン・ドゥグァンを排除しようとした一派が拷問されるところで、「タクシー運転手」で描かれたような光州事件につながっていくのだ、と暗澹たる気持ちになった。
朴大統領の暗殺から、民主化に向かえるかと思えた「ソウルの春」が潰えて、新たな暗黒時代の始まりになってしまった。
イ・テシンを心から応援していたので、見終えてやりきれないもやもやが残ったが、史実なので仕方ない。
非常事態での争いは、エゲつない方が勝つのだとつくづく思った。
ハナ会の組織力をフルに活用、ルール無用狡猾さむき出しの強引な爆走が故に、チョン・ドゥグァンは勝った。
また、リーダーのカリスマ性は、すごく大事なのだとも思う。
強烈な唯我独尊、自らを恃み先輩もコケにする高慢さとキレッキレの頭脳。
窮地に陥るたびに、おたおたするどころか不敵に笑い、次の手を繰り出すチョン・ドゥグァンは、手探りで進まざるを得ない人々には正直頼もしい。清廉潔白な人ではできないような発想で切り抜けどんな手を使っても勝ち抜きそうに見える。ふてぶてしさ憎々しさが逆に効果的で、この人についていけば大丈夫と思わせるところがある。
この嫌なやつをファン・ジョンミンが演じきってスゴい。
チョン・ウソンのイ・テシンにもカリスマ性がある。
ブレないところ、ひとりでも立ち向かう不屈の意思、信念と頭脳と人間性に惹かれて着いていきたいと思わせるものが大いにあって、高官たちが腰抜けじゃなければ勝ってたのになあ
チョン・ウソンとファン・ジョンミンの、演技が圧倒的。
このふたりががっつり組んだところが、映画の見応えを特上にしていると思う。