「主要人物で50人くらいいるけど、鑑賞中に混乱しないのは見せ方(字幕も)がうまいから」ソウルの春 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
主要人物で50人くらいいるけど、鑑賞中に混乱しないのは見せ方(字幕も)がうまいから
2024.8.27 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年の韓国映画(142分、G)
1979年に起きた「粛軍クーデター」の顛末を描いた史実ベースの伝記映画(一応、フィクション)
監督はキム・ソンス
脚本はホン・ウォンチャン&イ・ヨンジュン&キム・ソンス
原題は『서울의 봄』で「ソウルの春」、英題は「12.12: The Day」は「12月12日(決行された日)」という意味
物語の舞台は、1979年10月26日の韓国・ソウル
陸軍本部に集められた官僚、将校たちは、大統領暗殺に関する報告を聞くことになった
動揺が広がる中、暗殺事件の合同捜査本部長にチョン・ドゥグァン(ファン・ジョンミン)が選ばれ、元中央情報局のキム・ドンギュ(チャ・ゴヌ)を拷問にかけることになった
大した情報が得られない中、ドゥグァンは秘密裏にある計画を実行しようと目論み、それは彼が所属する秘密結社「ハナ会」のメンバーへと伝達された
ソウルでは厳戒態勢が敷かれ、防衛参謀長のチョン・サンホ(イ・ソンミン)は、首都警備司令部の司令官にイ・テシン(チョン・ウソン)を抜擢した
この動きに対し、ドゥグァンはノ・テゴン(パク・へジュン)を推すものの、サンホはその申し出を跳ね除けた
そして、12月12日の夜、ドゥグァンは偽の宴席を設けて、テシンたちを誘き出し、その隙をついてサンホを誘拐しようと目論む
その作戦は成功するものの、ドゥグァンが宴席に来ないことで不信感を抱いたテシンは、独自のネットワークにて情報を募った
映画は、粛軍クーデターの最初から最後までをきちんと描き切り、ほぼ史実をなぞらえているように思える
とは言え、冒頭では「史実を元にしたフィクションです」と銘打っているように、登場人物の全てが「ほぼ仮名」のようになっている
クーデターを企てるチョン・ドゥファンは「チョン・ドゥグァン」で、その右腕のノ・テウは「ノ・テゴン」だったりする
首都護るチャン・テワンは「イ・テシン」で、こちらは少し配慮がある感じだが、参謀総長のチョン・スンファは「チョン・サンホ」となっている
隠すつもりがあるのかないのかわからないが、最後の集合写真は実在の集合写真の通りに並んでいるし、ほぼそっくりさん大会になっているので、実物を知っている人からすれば「攻めていること」はわかるのではないだろうか
物語は、首都ソウルを守るために双方が動かせる駒を動かすというもので、最後の決め手となったのが国防大臣(キム・ウィソン)の演技というのが慎ましい
国を守るための軍隊が機能せず、のちに光州事件を起こす軍事政権を誕生させることになっていて、これらは韓国の黒歴史として語り継がれている
軍事政権が誕生する国はたくさんあるが、本作における軍事政権は、完璧なまでの根回しとシンパによる包囲網が奏功し、そこまで多くの衝突がないままに終わっている
いつどこで戦闘が勃発するかという緊張感で張り詰めているので、140分があっという間に過ぎていったように感じた
いずれにせよ、かなり登場人物が多いのだが、中心になっているのはクーデターの首謀者ドゥグァン、腹心のテゴンで、防衛側はテシンとジュンヨプが認識できればOKだろうか
パンフレットには組織図&人物相関図があるので、スムーズに理解したい人は事前に読んでも良いと思うが、おそらく覚えきれないと思う
それでも、映画を見ていてそこまで混乱はしないので、これだけ登場人物が多い内容でも、映画鑑賞中に混乱させないのはすごいことだと感じた