劇場公開日 2024年5月31日

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「吹雪の山小屋を舞台にしたワンシチュエーションサスペンス」告白 コンフェッション 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 吹雪の山小屋を舞台にしたワンシチュエーションサスペンス

2025年5月26日
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鑑賞方法:VOD

単純

【イントロダクション】
生田斗真主演。仲間の告げた過去の殺人の“告白”を皮切りに、山小屋の中で展開される一夜の攻防を描いたサスペンス。
『カイジ』シリーズの福本伸行原作、『沈黙の艦隊』のかわぐちかいじ作画による同名漫画作品の実写化。
監督に山下敦弘。脚本に幸修司と『死刑にいたる病』(2022)の高田亮。

【ストーリー】
山岳部メンバーとして、大学時代からの付き合いである浅井(生田斗真)と留学生のジヨン(ヤン・イクチュン)。彼らは毎年、大学時代に亡くなった山岳部メンバーのさゆり(奈緒)を弔う目的で、彼女が亡くなった山を登山していた。

しかし、その日は運悪くジヨンが滑落により左足を負傷し、更には吹雪によって身動きが取れなくなってしまう。「自分を置いて行け」と言うジヨンだったが、浅井は承諾しかねる。助かる見込みがないと悟ったジヨンは、「さゆりの死は自分の手によるものである」と告白する。

吹雪の中、運良く山小屋を発根した浅井は、ジヨンを連れて避難する。救助を呼ぼうとするが、浅井はスマホを失くしており、ジヨンも持っていないと言う。
仕方なく暖を取る事にするが、浅井はジヨンが「罪を告白した事を後悔しており、自分を殺そうとしているのではないか?」と疑念を持ち始める。おまけに、ジヨンは失くしたと話していたスマホで救助を呼んでおり、疑念は一層増していく。

外は吹雪で逃げ場なし。疑念渦巻く中、浅井とジヨンの長い一夜が幕を開けた。

【感想】
漫画原作の作品だからであろうか、登場人物がモノローグを台詞で語る、ジヨンが姿を消しては突如現れる等の漫画的演出、連載漫画的な“引き”による興味の持続的な展開が目立つ。

ワンシチュエーションで展開されるサスペンスとして悪くはないのだが、この話では持って1時間が限界ではないだろうか?オチ自体も読めるし、ラストは『世にも奇妙な物語』風な後味を感じさせるだけに、余計にそう感じるのかもしれない。また、夢オチの派生系とはいえ、一夜の攻防全てが浅井の罪の意識による夢というのは肩透かしも食らう。

ラスト、目を覚ました浅井にジヨンが自首する意志を告げる際、浅井の不意の一言からジヨンが「お前の秘密は何だ?」と迫る。しかし、そこはやはり「お前がさゆりにトドメを刺した事を知っているぞ」として、実はジヨンは物陰から浅井の殺人を目撃していたという展開の方が、浅井がジヨンを滅多刺しにするラストの狂気性、「秘密を告白したお前が悪い」という台詞も引き立つと思うのだが。

生田斗真の危機迫った演技、ヤン・イクチュンの狂気を感じさせる迫力は良い。特に、ヤンが斧を手に扉を割ろうとするシーンは、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(1980)を彷彿とさせる。

元々、私がホルモンファンだからではあるが、マキシマム ザ ホルモンによる主題歌『殺意vs殺意(共犯:生田斗真)』は、楽曲のクオリティだけでなく、歌詞の内容も本作とリンクしており素晴らしい。

【総評】
ワンシチュエーションで展開されるサスペンスとしては特段目新しさもなく、オチ含めてもっと工夫が欲しかったのは間違いない。74分という上映時間も、本来ならコンパクトに感じるはずなのだが、本作においてはそれですら長いと感じさせられた。せめて、60分以内の中編映画ならば、もう少し感じ方は変わったかもしれない。

緋里阿 純
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