「雪山の寒さを感じられず・・・」告白 コンフェッション 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
雪山の寒さを感じられず・・・
”東慶”大学山岳部OBの浅井(生田斗真)とジヨン(ヤン・イクチュン)が、学生時代に山で遭難した同級生のさゆり(奈緒)の慰霊登山中に遭難し、猛吹雪の中で立ち往生しているところから物語が始まりました。ただこの設定からして呑み込めない部分が多く、結論から言うと全くしっくり来ない作品でした。
そもそもどの山域にどれくらいの日程で入山したのかという具体的な話が一切出て来なかったので、推測するしかない部分も多々あるのですが、作中の山の風景を観る限り、2人が慰霊登山をした山は岩肌が露出したいかにも日本アルプス然とした高山で、高い木がないことから森林限界を超えていると思われました。日本アルプスであれば2000メートルを優に超える山域だったと思われます。また、「登山計画を出した」というセリフもあったため、最低でも1泊以上の山行だったのではないかと考えられます。1~2時間で戻って来られるような山で登山計画を提出することはないと思われますからね。
ところが、猛吹雪になるような厳冬期、ないしは3月、4月頃の高山に、それなりの日程で入山した割には2人の荷物が圧倒的に少なく、また服装があまりにも軽装過ぎて、非常に不自然でした。物語としても、冒頭脚に怪我をして死を悟ったジヨンが、浅井に対してかつて自分がさゆりを殺したことを「告白」するなど、冒頭のシーンは物語の核となる非常に重要なシーンだったのですが、情報が少ないことも相まって、余りに不自然な設定のためこの時点で本作への期待が腰砕けになり、疑問と文句ばかりになってしまいました。
さらに言えば、森林限界で猛吹雪になった以上、氷点下10度以下になっていてもおかしくないにも関わらず、あまり寒そうでなかったのも演出不足。特に冒頭のジヨンによる告白シーンでは、猛吹雪の中2人とも顔を出して普通に喋ってましたけど、あれはいくら何でもリアリティ無さ過ぎでした。まあ映画だから仕方ないと言ってしまえばそれまでですが、「八甲田山」なんかの観客にも”極寒”を感じさせる映像と比較すると、何とも軽くて残念でした。
その後避難小屋を見つけて何とか避難する2人でしたが、建付けが悪くて窓から吹雪が漏れているのに、ただでさえ軽装の上着を脱いだ状態でいるなんて、ちょっと信じられませんでした。いくらストーブを焚いたところで、あんな状態であんな軽装になるなんて、これまた寒さを感じられず、さらに腰砕けになりました。
肝心の避難小屋に辿り着いてから2人の心裡戦については、意外にもホラー展開になって行き、ようやく面白くなってきたかと思いきや、何と驚きの夢オチ。そしてリアルの格闘シーンは殆どなく、結局は告白しなかった浅川の方が暗黒面に堕ちていたというオチには、さらに腰砕けでした。
そんな訳で、雪山の寒さを感じられなかった点で設定を受け入れられなかったので、本作の評価は★2とします。