「白兵戦が熱い」バッドランド・ハンターズ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
白兵戦が熱い
地震をおこして能書きそこそこでさくっとディストピア設定をつくる。衣装はボロでいいし舞台は廃墟でいい。ヒロインとマ・ドンソクをもってきたらとっとと憎まれ役をだしてマッドサイエンティストを絡ませて全面戦争やって懲悪してめでたしで一丁あがりという感じ。小品ながら抑えた予算でしっかりみせるクオリティさすが韓国映画。ネットフリックスにきたとたんすぐに1位を奪取した。
監督は武術(スタント)指導出身だそうで肉弾戦が熱かった。ドンソクの一騎当千感とぜったいやられない安心感がたのもしくてアドレナリンがでまくる。女性軍曹を演じたアン・ジヘ(“ガールズソード・アクションムービー”スレイト(2020)に出ていた。)もほぼすべてのアクションを自ら演じたそうだ。カメラもちゃきちゃき動くし、ところどころ笑えもする。坂口ナルシスト拓映画とはくらべようがないほど楽しい格闘映画だった。
cons側の批評家は設定の使い回しを指摘している。
『黙示録的ゾンビ映画を一本でも観たことのある人なら誰でも興味を引かれるようなものはない』としていて、たしかにそれはその通りだが、cons側に振った批評家でもアクションのビートは誉めていた。やはりそこはドンソクが貢献している。眉間に皺をよせて目を細めるとすこし藪睨みになって、なんかめんどくさそうな感じの顔付になるとき、すごく語る。
淡泊な強面じゃなくて危機的状況でも笑えるところがあって、がちむちのステロイド体型のせいで背負ったマチューテに手が届かないシーンには笑った。顔だけでも居るだけでも絵になるヒーローだった。
韓国映画・ドラマに使われる清貧の布石がある。さいしょに清らか、もしくは貧しさの描写を置いてシンパシーをつかんでおいた後に、かれらを酷い目に遭わせ、やがてヒーローをだして悪い奴をこてんぱんに制裁する、シンデレラ曲線みたいなもの。
スナと祖母、もしくはスナと同世代少女が、夢みたいな理想郷を語っていれば、大仰なほどあからさまな死亡フラグを立てているどころか振っていることがわかるにもかかわらずフラグに興醒めしないし、だれが悪い奴でだれが良い者なのか一目瞭然なのに興味を持続できる、気負った大作じゃないが韓国エンタメの品質がよくあらわれた娯楽作だった。
imdb6.0、rottentomatoes88%と65%