「総評5点、シナリオ0点の作品」劇場版「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」 とおりすがりのものさんの映画レビュー(感想・評価)
総評5点、シナリオ0点の作品
アニメウマ娘の評判を落としたTVアニメ3期の失敗は記憶に新しいです。
3期主人公のキタサンは淡々と勝ち続けたただの強い馬でしかなく、男っぽく描いたので、ペアリングに可愛いサトノダイヤモンドをライバルとして入れてみたのだと思うのですが、そもそもこの2頭はライバルでもないし…という事がまず頭をよぎりました。
その状態の上で、この2頭を中心にアニメ1期や2期と同じような友情物語を描こうとしたもんだから、全然リアリティがなくて、ファンの心が離れてしまったという経緯があります。
そんな流れをぶった切り、ウマ娘の流れを変えるべく作られたのがこの映画だと理解しています。
ですので、「今までのウマ娘とは全く違う作品を作る」という決意のような物が感じられました。
具体的には、登場するジャンポケ、タキオン、カフェは、どれもがべらんめえ口調だったり狂気じみていたり病んでいたりとまあ暗い暗い。
で、この3頭中心だけだと見ている人が病んでしまうので、ちょっとかわいいダンツをいれてみましたという構成になっています。
こういう書き方をするとただの悪口に見えるかもしれませんが、決してそういう意図ではなく、ジャンポケ、タキオン、カフェのクラシック3冠を分かち合ったこの3頭をシンプルにライバルとして描くのではなく、4戦無敗で引退したタキオンを神格化し、しかもタキオンを物凄く気持ち悪く不気味に描く事で、ジャンポケとカフェがタキオンなき後も心のカルマに悩まされながら、それに打ち勝っていくというお話になっています。そして、ダンツの可愛さでちょっとフォローという感じですね。
つまりは、これまでのテレビアニメとは明らかに違う作りになっていて、先輩ウマ娘であるフジキセキとの友情のような描画もあるにはありますし、水着だの浴衣だのもあるにはありますが、萌えや友情愛情で泣かせるぞ!という意図は感じず、まさに、劇画版ウマ娘とでも言える作風になっています。
この変化は正直評価できますし、これだけで総評は5点をつけて良いなと思いました。
この先への未来を感じる事ができたので。
ですが、この映画で評価出来る点はこれだけです。変えた事が良かった。これ以上もこれ以下でもありません。ほかはごめんなさい、評価出来ません。
例えば、シナリオについては、0点です。最悪でした。
どうやら、ジャンポケ、タキオン、カフェ、ダンツの四頭メインで売り出そうとしていますが、ダンツをメインに押し上げるのは無理がありすぎます。
ダンツは可愛い役としてチョンと出るのは良いとしても、3頭のインパクトとはやっぱり差を感じるのです。
他にも、確かにタキオンは強かったし、当時の評判でいえば3冠とるかもしれないとは言われてはいましたが、ジャンポケがダービーを勝ったのは、当時からずっと言われていた広い東京の長い直線コース、かつ、左回りだから末脚が爆発したというのがむしろ定説であって、正直タキオンが怪我をせずダービーにでていたとしても、ジャンポケが勝っていた未来も十分あったと思うのです。
さらに、ジャンポケは3歳で(その当時は少し力が落ち始めてたとは言え世代最強古場だった)テイエムオペラオーを東京競馬場のジャパンカップで倒し優勝もしています。タキオンにこれが出来たかどうかはわかりません。
なので、ジャンポケがあそこまでタキオンを神格化して悩む理由にモヤモヤしました。これは史実とは違うなと。
更に酷いのはマンハッタンカフェ。レースシーン無し。
シナリオ上、ジャパンカップでジャンポケが優勝して大団円でおわりたかったので、カフェにまけた菊花賞を描いた後だとつなぎづらかったり、流れがわるかったのかもしれませんが、カフェをメインキャラに据えているんだから、レースシーンは描くべきでしょう。これもかなり酷いです。
さらに、最後、タキオン復活には呆れました。復活するんかーい(笑)
流石にレースシーンはありませんでしたが…。いやいや…。もうファンタジーですね。
結局、カフェを出したのは可愛い小倉唯さんだからでしょ?とか、タキオンをラスト復活させたのは人気の上坂すみれさんだからでしょ?とか、その先にあるリアルライブの商用目当てってのは分かるのですが、それがあまりにも露骨すぎて萎えました。
作品は作品、イベントはイベントできっちりしてほしかった。
次に作画ですが、作画そのものは悪くなので3点ですが、それでも3点どまりです。
そもそもウマ娘という作品、新作になればなるほどラストの直線勝負がファンタジーになっていきますね。
とにかく声優に叫ばせとけ!とか、直線の末脚のところはビッグバンレベルの大爆発映像描いときゃいいだろ!とか、スピード感をだすために線画ぽく描いておけばどうにかなるやろ!とか。
もうこれは競馬ではないですね。正直、1期の描き方でよくないですか?と書き記しておきます。
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最後に、これはアニメとは全く別枠なので分けてかきますが、ラストのウイニングライブは良かったです。シンプルに商用としてという意味で曲はわかりやすく、耳馴染みも良い曲でした。apple musicに入れてもいいかなと感じました。