「やけに紳士的な獣だが、生きる世界と付き合う友人を間違えただけなのかもしれない」THE WILD 修羅の拳 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
やけに紳士的な獣だが、生きる世界と付き合う友人を間違えただけなのかもしれない
2024.2.29 字幕 アップリンク京都
2023年の韓国映画(110分、PG12)
服役を終えた元ボクサーが韓国マフィアの陰謀に巻き込まれる様子を描いた犯罪映画
監督はキム・ボンハン
脚本はキム・ジュマン
原題は『더 와일드: 야수들의 전쟁』で「野生:獣の戦争」、英題は『The Wild』で「獣」という意味
物語の舞台は、韓国のとある町
ある事件によって服役していた元ボクサーのウチョル(パク・ソンウン)は、友人で韓国マフィアのドシク(オ・デフォン)の世話になることになった
ドシクには新しい右腕カン・ユンジェ(チョン・スンギョ)がいて、今ではクラブ経営や麻薬のブローカーなどを凌ぎにしていた
ドシクはブローカーのガクス(オ・ダルス)と麻薬の取引をし、それには地元の汚職刑事ジョンゴン(チュ・ソクテ)も絡んでくる
その関係を知らないウチョルは、用心棒を任されたクラブにて、横柄な態度を取るジョンゴンに「教育」を施してしまう
ドシクの仲裁で事なきを得るものの、その事件がきっかけで、クラブのホステス・ボムことチェ・ミョンジュ(ソ・ジヘ)と親密な仲になっていく
だが、ミョンジュは、かつてソチョルの服役の原因ともなった対戦相手のキム・ジファン(ビン・チャヌク)の恋人であり、兄を殺された弟サンファン(イ・ジェフン)は、その関係を許そうとはしなかったのである
映画は、訳あり人たちの邂逅になっていて、過去を許容しても一緒にいたいと思う二人が描かれていく
また、ジョンゴンを疎ましく思っているドシクがウチョルを使って彼を消そうとしていて、それらの思惑にウチョルが巻き込まれていく様子が描かれる
ウチョルにつく若者ヒョンテ(ソ・ジフ)もホステスのイェリ(ファン・セ)に入れ込むなど、様々なトラブルがウチョルを襲うという構図になっていた
登場人物はかなり少ないのだが、ネットで情報を探しても意外と見つからない
パンフレットも作られておらず、ハングルでググってなんとか調べられるという感じになっている
物語としてはそこまでの真新しさはなく、アクションシーンも控えめなので、パク・ソンウンのファン向けの映画のように思える
雰囲気は悪くないが、そこまで奥行きのない感じになっていて、それはジョンゴンとジファンの関係性がそこまで色濃く描かれないからのように思える
ウチョルとジファンの試合が公式なものか、闇ボクシングなのかもわからないので、そのあたりがもう少し明確な方が、ジファン家族との距離感というものが理解しやすかったのではないだろうか
いずれにせよ、哀愁漂う感じの作品になっていて、Vシネっぽさというものが感じられる
その割にはほとんどアダルトな展開になっていかず、ウチョルの達観度合いが妙にシニカルに思える
対戦相手の彼女ということを知ってからは難しいかもしれないが、そこに至るまでは「獣」になってしまうのと思うので、そのあたりが紳士すぎてリアリティに欠けるのかなと感じた